防衛費増額分の財源とは
では、増額分の財源はどうするのか。日本の予算は、高齢化で年々増える社会保障費と借金の利払いに充てる国債費が歳出の5割超を占める。「固定費」の割合が高く、歳出を減らして捻出するには限界がある。
歳出が削れなければ、増税か赤字国債の増発で賄うしかない。だが、日本の財政状況は先進国で最悪の水準だ。歳入の3割超を国債発行に頼っており、増える分の防衛費を全て国債で賄えば財政はさらに悪化する。
慶應義塾大学の土居丈朗教授(財政学)は次のように話す。
「国債の返済は長期にわたる。大量の国債発行は市場を不安定化させる懸念があり、財源が国債頼みでは逆に有事の際に脆弱性が高まってしまう。」
結局、建設国債と法人税引き上げなどの増税を軸に財源を確保することになった。しかし、その議論の過程では、防衛費の増額に対して既存の事業に見直すべきポイントがないか精査を求める声はあまり聞かれなかった。
ロシアによるウクライナ侵攻で、ウクライナは西側諸国に「weapon(武器), weapon, weapon」と連呼し、日本も一定の先進国として支援を求められている。
限られた予算の中、弾薬などの「継戦能力」に関わる装備と将来を見越した装備のバランスをどう考えるか――。中国の動きを視野に入れた場合、日本一国でなんとかなるものでもなく、米国頼みというわけにもいかない。
日本の国力を考えると、国際的枠組みを超えた武器の相互融通が必要な時代に突入しつつある。ただ、そんな風潮を横目に現状の装備品の予算を紐解くと甘い管理体制が見えてきた。
約5割が上振れする装備品コスト
防衛省が重要な装備品として指定する航空機や護衛艦など26品目について、開発から管理、廃棄までの全体のコストを分析したところ、約5割に当たる14品目のコストが当初計画に比べて平均約20%上昇していた。
契約後の仕様変更や国産開発計画の見通しの甘さが主な原因だった。「防衛力の抜本的強化」を図る前提としてコストが当初計画から膨張する構造にメスを入れる必要がありそうだった。
防衛省が開発から廃棄までにかかる全体の費用「ライフサイクルコスト(LCC)」を算出している重要装備品26品目(総額約23兆円)について、直近の公表資料などをもとに分析した。2008年から現在までの期間のコストが対象になる。