国策の「カーボンニュートラル事業」で「18億円の予算余り」…なのに予算額は「毎年拡大」するお粗末な理由【新聞記者が解説】

国策の「カーボンニュートラル事業」で「18億円の予算余り」…なのに予算額は「毎年拡大」するお粗末な理由【新聞記者が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

2022年の日本の税収は過去最高額の68兆円超となりました。国が増税へと突き進むなか、税金はどのように使われているのでしょうか。毎日新聞社東京本社経済部記者の高橋祐貴氏が著書『追跡 税金のゆくえ~ブラックボックスを暴く』(光文社)から、約3年にわたって粘り強く取材を続けてきた結果見えてきた、税金の無駄遣いの実態を解説します。本記事では脱炭素(カーボンニュートラル)施策の現状についてお伝えします。

夢の自動車でも予算余り

重点政策ほど思ったように政策誘導が進まず、予算が余ったり当然のように翌年度の予算に繰り越しになったりしている。

 

一例だが、「地球温暖化につながる温室効果ガス(CO2など)の排出量を実質ゼロにする」というカーボンニュートラル(脱炭素)の取り組みを掘り下げてみたい。予算の執行状況を見ると、政府の迷走ぶりや政策のズレが浮き彫りになる。

 

夢の自動車ともいわれ、走行時に温室効果ガスを排出せずにエネルギー効率も高い、水素で走る燃料電池車(FCV)。

 

ガソリンに代わる次世代環境車の切り札として期待されているが、肝心の水素燃料補給所の普及は進んでいない。整備を後押しする補助事業も予算が使われないほど低調。それでも、投じられる予算額は毎年のように拡大している。

 

東京都内にあるENEOS(エネオス)の水素ステーションに足を運んでみた。FCVの燃料となる水素の補給所だ。首都圏の一等地かつ幹線道路沿いにもかかわらず、平日の午後5時から2時間、訪れた車はトヨタのFCV「MIRAI(ミライ)」が1台のみだった。

 

水素ステーションは全国に161カ所ある(2022年9月時点)。ENEOSはその約3割に相当する47カ所を設置していて、業界首位だ。都心部を中心に普及を進めている。

 

ただ、今は採算が取れる状況にないようだ。初期投資には一般的な給油所の5倍近い約5億円を費やすほか、定期修理や検査、国家資格を持つスタッフの配置などで管理費もかさむ。

 

こうした状況に対して、ENEOSの水素事業推進部長は、「水素の活用が進むことを前提とした、未来を見据えた先行投資だ」と話す。

 

世界では、電気自動車(EV)が次世代車の主役の地位を固めつつあるが、政府の成長戦略では水素を「カーボンニュートラルのキーテクノロジー」と位置づけ、2030年までに水素ステーションを現在の6倍以上となる1,000基に、FCVを「80万台程度」に増やすとしている。

 

ただ、国内を走るFCV(商用車を除く)は2020年度末時点で僅か5,170台。「20年までに約4万台」という政府目標も未達成に終わっていて、業界からは「目標が野心的すぎる」との声も出る。

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追跡 税金のゆくえ~ブラックボックスを暴く

追跡 税金のゆくえ~ブラックボックスを暴く

高橋 祐貴

光文社

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