有害な化学物質(PFAS)は子供の服、土壌、飲料水にも
PFAS(有機フッ素化合物)と呼ばれる有害な化学物質は、子供の服から土壌、飲料水まであらゆるものに含まれている。こうした化学物質を規制することは、公衆衛生および環境衛生分野にいる研究者たちの長年の目標だ。
2023年3月14日、米国環境保護庁(EPA)は、飲料水中のPFASの濃度を規制する最初のガイドラインとなるものを提案した。このガイドラインは、60日間のパブリック・コメント(公的機関が規則、又は命令といった類のものを制定しようとする際に、広く公に意見・情報・改善案などを求める手続きのこと)を経て最終決定される予定だ。
ジョー・シャルボンネ氏は、アイオワ州立大学の環境エンジニアで、水に含まれるPFASなどの汚染物質を除去する技術を開発している。
彼は、今回のこのガイドライン案は何を要求しているのか、水道事業者はどのようにこの要求を満たすことができるのか、そして、永久に残存し続けるとも思われる化学物質を米国の飲料水から排除するために、どれくらいのコストがかかるのかを以下のように説明している。
新ガイドラインの中身
PFASは様々な健康問題に関連しており、常に環境および公衆衛生分野の研究者たちの焦点となっている。このクラスの化学物質は数千種類あり、今回の規制案では、そのうちの6種類について飲料水への許容値を設定することとなる。
6種類の化学物質のうち、PFOAとPFOSの2種類は、いまや大量生産はされていないが、これまで非常に広く使われていたことと、分解が極めて遅いことから、環境中によく残留している。新しいガイドラインでは、飲料水中のPFOAまたはPFOSの含有量を1兆分の4以下であれば残留を認めるとしている。
GenX、PFBS、PFNA、PFHxSという他4つのPFASも、より高い制限値で規制されることになる。これらの化学物質は、PFOAとPFOSの一般的な代替物質であり、化学の分野では“いとこ”のような存在にあたる。これらも人間の健康や環境に害を及ぼす。
すでにいくつかの州では、飲料水中のPFASの濃度について独自の規制値を設定しているが、この新しいガイドラインが制定されれば、法的に強制力のある初の連邦規制値となり、米国全体に影響を及ぼすことになる。
どれだけの水系が影響を受けることになるのか
PFASは極めて低いレベルでも有害であり、今回、提案された規制値はその事実を反映している。許容濃度は、オリンピックサイズのプールに含まれる数粒の塩に匹敵するものだ。米国内の何百ものユーティリティ企業(公共事業に関わる企業のこと)が、提案された規制値を超えるレベルのPFASを水源に保有しており、今回の新しい基準を満たすために変更を行う必要がある。
過去に多くの地域でPFASの検査が行われてきたが、その多くは新しい検査を受けていないため、保健当局は今後どれだけの水系が影響を受けるか、まだ正確には把握していない。既存のデータを用いた最近の研究では、自治体の飲料水の約40%が提案された濃度制限を超える可能性があると推定されている。