66歳・金物店店主、息子も継がない「10,000点の在庫」を前に途方に暮れ…右膝は悲鳴、訪れた“衝撃の結末”【税理士が解説】

66歳・金物店店主、息子も継がない「10,000点の在庫」を前に途方に暮れ…右膝は悲鳴、訪れた“衝撃の結末”【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

街でヤカンやタライ、ジョウロなどの金物が軒先にぶら下がっている「〇〇金物店」というようなお店、どうやって生計を立てているのか、不思議に思いませんか? M&Aに詳しい税理士の都鍾洵(みやこ しょうじゅん)氏が実際に請け負った、ある「金物店」での実話を紹介します。

「利益も出ていない事業」を「3社」が欲しがったのはなぜか?

その建築業者の三上社長から紹介され、2月末に訪問したのが私、税理士の都でした。主に小規模M&Aの支援をしています。

 

一通り説明を聞いた田丸社長は言いました。「話はわかったけど、こんな利益も出ていない事業を引き継いでくれるところがあるとは信じられない。何かの冗談では?」

 

今だから告白すると、私もこの金物店を欲しがる相手がどれくらいいるかは未知数でした。

 

しかし、現場を見て、事業には価値があると確信していました。

 

一番の価値は顧客です。地域の建築会社が30社も、毎月一定数を注文していました。安定した顧客は誰もが欲しがっています。

 

二つ目は、田丸社長の金物に関する知識です。身体は以前の様に動かなくても、1万点のアイテムの特性や建築業者とのパイプは一朝一夕で培われるものではありません。その他にも、1万点もの金物の仕入れルートを評価する会社があるかもしれない、と感じました。

 

早速買手候補を募ると、早々に3社が手を挙げてくれました。業種は、同業の金物店、建築会社、メッキ業、でした。その内の同業は営業エリアも取り扱い品種も近接しており、トントン拍子に進みました。

 

結果的には、何と初回訪問から25日でのスピード成約をしました。

 

田丸社長は不思議そうに「こんな短期間に、要らない在庫も引き取ってくれて、更に譲渡額200万円が入金されるなんて、いい意味で衝撃でした」と右膝をさすりながら、握手してくれました。

 

得意先の三上社長からは「都先生のおかげでウチも助かりました」と言っていだき、「自分の仕事でこんなに喜んでもらえるのか」というあの日の気持ちは今でも忘れません。

 

田丸金物店の事例は、稀なケースと感じられましたか?

 

実は、こんなマイクロな事業を引き継ぎたい買い手は沢山います。しかし今、この瞬間も、後継者がいないからという理由で、事業に価値があるのに廃業しています。

 

廃業を検討される際には、事業の引継ぎは可能か、という視点でも検討されてはいかがでしょうか。

 

 

都 鍾洵(みやこ しょうじゅん)

かがやきM&A株式会社代表取締役

税理士

 

※本事例はノンフィクションですが、秘密保持のため、地域や名称などは変更して執筆しております。

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