66歳・金物店店主、息子も継がない「10,000点の在庫」を前に途方に暮れ…右膝は悲鳴、訪れた“衝撃の結末”【税理士が解説】

66歳・金物店店主、息子も継がない「10,000点の在庫」を前に途方に暮れ…右膝は悲鳴、訪れた“衝撃の結末”【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

街でヤカンやタライ、ジョウロなどの金物が軒先にぶら下がっている「〇〇金物店」というようなお店、どうやって生計を立てているのか、不思議に思いませんか? M&Aに詳しい税理士の都鍾洵(みやこ しょうじゅん)氏が実際に請け負った、ある「金物店」での実話を紹介します。

街で見る「金物店」、お客もいないのになぜ潰れない?

兵庫県神戸市にある商店街の中にある田丸金物(かなもの)店(仮称)には、今日もお客さんがありませんでした。

 

読者の皆さんはそもそも金物店をご存知でしょうか? 金物(かなもの)とはドアノブやアルミサッシなど、金属で出来たあらゆるものをいいます。

 

金物店にはお店の規模によりますが、金物が5,000種類ほどあるのが通常です。

 

皆さんは街でヤカンやタライ、ジョウロなどの金物が軒先にぶら下がっている「〇〇金物店」というようなお店を見られたことがあるのではないでしょうか。人気テレビ番組に、「坂上忍の潰れない店」があります(私も好きでよく拝見しています)が「誰も入ってないのに、どうやってお店をやりくりしているのだろう」と不思議に思ったことはないですか?

 

実は、この金物店の多くは、地元の建築業者さんを上顧客としています。建築業者さんは、飲食店や美容業などの新装や改装工事を手掛けています。受注が入ると、ドアノブやアルミサッシなど改装に使用する部材一式を、自ら金物店で揃えて、それを現場に持ち込んで工事をするのが一般的です。

赤字・膝痛・負債・大量在庫で四重苦に…

兵庫県神戸市にある「田丸金物店」もそのように地元の建築業者に支えられてきた建築金物店でした。

 

田丸社長(67歳男性・仮名)は一時期は3人の従業員を雇用していましたが、今は1人で仕入れ、配達、伝票処理までしています。それでも近年はホームセンターが近くにできたことでお客さんが流れたこともあり、赤字続きです。

 

しかも田丸社長は長年重い金物を運んでいたことが原因で、膝痛に悩まされています。一人息子は大手商社に就職して順調に昇進しているようで、後継ぎはいません。

 

「右膝も痛いし、若い時のようには動けない。このままでは廃業するしか無いか…。」

 

年々下がる売上、埃の溜まるばかりの約10,000点の在庫の山を前に、呆然と立ちすくむ日々を過ごしていました。神戸の名医に診てもらっても膝痛は良くなる兆しはなく、足を引きずりながら仕事をしていましたが、もう限界でした。

 

そこで田丸社長は「一ヵ月後の3月末で廃業します」というファックスを得意先30社に送信し、銀行への借入返済は個人資産で賄おうとしていました。

 

「さて、、この在庫の山をどうしてくれようか…」

 

チラシの入っていた不用品一括買取業者へ見積に来てもらっても「ほとんどが今の型番ではなく、廃棄処分費が掛かります」といわれ、改めて1万点の在庫を見上げました。

 

「はあ…この膝じゃあ片づけることもできないしなあ…」

 

その時、電話が鳴りました。廃業のFAXを見た建築業者の三上社長からでした。「田丸社長、お店やめちゃうの⁉ 困りますよー!」

 

「いやー膝も痛いし、もう潮時ですよ…今も古い在庫をどう処分しようかと思っていたところなんですよ」

 

「それなら事業を譲渡したらどう? ウチだって辞められたら新しい取引先を探すの大変だし。ウチも前にお世話になった人がいるから話だけ聞いてみてよ。」

 

「ええ⁉ そんなまさか!」

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※本事例はノンフィクションですが、秘密保持のため、地域や名称などは変更して執筆しております。

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