現役世代の負担、急拡大…もう高齢者を支えていられない
異次元の少子化対策。言葉がひとり歩きし、今年の流行語大賞の最有力候補になりそうな気配すらある、今日この頃。先日の記者会見でも、育児休業給付について「産後の一定期間に男女で育休を取得した場合の給付率を手取り10割に引き上げる」と岸田総理は表明。さらに就労時間の抑制につながるとされる「年収の壁」の解消についても言及しました。
「どこが異次元だ!」と揶揄されてきた少子化対策ですが、「本当に異次元になるかも」という期待感に変わってきた雰囲気さえあります。ただいまのところ具体的な財源の説明はなく、「風呂敷を広げるだけ広げて、どのように畳むんだろう……」という不安の声も。
とはいえ、本気で「異次元の少子化対策」に取り組まなければ日本崩壊、というくらいの危機的状況であることは多くの人が知る事実。昨年の出生数が想定の10年早く80万人を割ってしまい、日本の社会保障制度は、ますます先行きが不透明になってきたのです。
世界的にみても、日本の現役世代の負担は大きいもの。生産年齢人口(15歳~64歳)に対する65歳以上人口の比率である「高齢者扶養率」をみていくと、日本はモナコに続いて世界第2位。世界的な保養所であるモナコの特殊事情を加味すると、実質1位(しかも圧倒的)と考えていいでしょう。
【世界「高齢者扶養率」上位10ヵ国】
1位「モナコ」70.22%
2位「日本」50.97%
3位「イタリア」37.19%
4位「フィンランド」37.11%
5位「ギリシャ」35.48%
6位「ブルガリア」35.26%
7位「ポルトガル」35.20%
8位「マン島」34.95%
9位「プエルトリコ」34.94%
10位「フランス」34.78%
出所:世界銀行 資料: GLOBAL NOTE
※数値は2021年
高齢者扶養率は10年前の2011年で38.11%、20年前の2001年で27.34%、30年前の1991年では18.48%でした。急激に現役世代の負担が拡大したことがわかるでしょう。
現役世代の給与がどんどん上がり、「高齢者の1人ぐらい支えられる!」という状況であれば、なんら問題ではありません。ただ、そんな状況とはほど遠いことは誰もが知るところ。
厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、サラリーマン(平均年齢44.5歳)の月収34.20万円、年収554.91万円。コロナ禍からの回復で前年よりは増えたものの、これは1990年代前半と同水準。さらに昨今の物価高で、実質マイナスであることは誰もが実感していることでしょう。