「年金を手にして、穏やかな老後を過ごす」という生活が実に贅沢なことになりつつある昨今、働く高齢者が増えています。生活のために仕方なく……そんな高齢者を取り巻く実情をみていきましょう。
70代女性「時給1,089円」今日もスーパーでレジを打つ…年金月14万円でもパートを辞めない、独居老人の深刻事情 (※写真はイメージです/PIXTA)

食費も生活費も高騰…パートまでできなくなったら

さらに昨今の物価高が、年金生活者を苦しめます。総務省『消費者物価指数』によると、総合指数は前年同月比4.3%上昇、生鮮食品を除くと4.2%上昇、生鮮食品とエネルギーを除くと3.2%の上昇です。つまり日常生活には欠かせない、生鮮食品と光熱費(エネルギー)の上昇が著しいということ。

 

たとえば朝食の定番である食パン。2023年1月の全国平均は1㎏あたり480円。前年1月が431円でしたから、11%も上昇。光熱費では電気代は11%、都市ガスは32%、灯油代は3%……軒並み、生活必需品が値上がりしています。それに合わせて年金や賃金も上昇すればいいのですが、物価のようにすぐに上がることはなく、ただ耐えるしかありません。

 

またスーパーのレジ打ちのようなパートができているうちは、まだ安心。体調を崩したり、介護が必要となったときは大変です。厚生年金を受給しているならまだいいですが、国民年金の5万円や6万円だけで生活費に医療費、介護費まで賄うという、何とも恐ろしい事態に陥ってしまいます。

 

総務省によると、2022年、65歳以上は3,627万人で総人口の29.1%、75歳以上は1,937万人で総人口の15.5%。そして65歳以上の1人暮らしの割合は19.0%で、5人に1人という水準です。近所づきあいの多い地域であれば、お互い声を掛け合ったり、助け合ったりなどして何とかなる場合もありますが、近所づきあいもほとんどなく周囲から孤立するような地域だと、人知れず死んでいく……そんな最悪の事態も覚悟しなければいけません。

 

そんな状況の高齢者に対して行われようとしている、低所得者に向けた現金3万円の給付。それに対して「ばら撒きだ!」「苦しいのは低所得者だけじゃない!」などの批判も多いようです。確かに低所得でも資産家の人もいますし、物価高は全国民に直撃しているので、批判の多くは正論だといえます。ただ本当に苦しい思いをしている人たちには、できるだけ早く支援が届くことを願うばかりです。