(画像はイメージです/PIXTA)

定年退職後、いくらあれば不安なく生活できるのか…。実際のところ、ライフスタイルのあり方は人それぞれであり、「唯一の答え」を探すのは簡単ではありません。統計から導き出された参考値(試算)はありますが、では、その金額を目標として貯金に励めばいいのでしょうか? もし達成が困難な人は、どうすればいいのでしょう? 本記事では、豊かな老後に必要な「2000万円問題」と「お金の活用術」について見ていきます。

「老後に不足するお金は2000万円」というのは本当?

老後に必要となるお金は、その人のライフスタイルによって大きな違いがあります。たとえば、賃貸マンションに住み、複数の車を所有し、ほとんどの食事を外食ですませるような生活をされている人もいますし、出費を「公的年金+アルファ」以内で抑えながら生活をされている人もいます。

 

また、定年退職後にローンが残っているか、教育費が必要か、家族が何人いるか…といった違いによっても、「老後に必要となるお金」は、大きく変わってきます。

 

そのため、「だれもが不安なく暮らせる具体的な金額」の明示は難しいのです。

 

しかし、「老後30年間で約2000万円が不足する」と受け取れる参考値(試算)が示されています。2019年に話題となった「2000万円問題」と聞くとご存じの人もいるかもしれません。この数字は金融庁の金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」 に記載されたもので、高齢者夫婦(無職世帯)の平均的な支出額26万3718円に対し、公的年金を含めた収入額が20万9198円なので、毎月差し引き5万4520円の不足が生じ、仮にその生活を30年間続けた場合、不足額の合計が1962万7200円になるという内容でした。

「ストックした資産から取り崩す」という発想をやめる

上記の計算であれば、公的年金とは別に「2000万円の金融資産があれば老後は安泰」ということになります。しかし、本当に2000万円あれば不安なく過ごせるのでしょうか?

 

そもそも定年後30年を前提にした計算ですから、長生きして100歳まで生きたとしたら、2000万円では足りなくなります。また、社会保障制度が充実した会社員ではなく、国民年金にしか加入していない自営業だとしたら、毎月受給できる年金の額は、厚生年金に加入している会社員に比べてはるかに少なくなりますので、当然、2000万円の準備では足りないということになります。人によっては、5000万円、あるいは1億円くらい必要かもしれません。

 

このように申し上げると、「100万円を貯蓄するのもやっとなのに、2000万円なんて絶対に無理!」と、暗澹たる気持ちになった人もいると思います。

 

ここまでで「2000万円を貯めなければ…」と思っている人は、おそらく、何とかして2000万円をつくり、老後の30年間、そこから5万4520円を毎月取り崩して生活する、というイメージを思い描いているのではないでしょうか。

 

もちろん、それもひとつの方法ですが、それでは本当に100歳まで長生きした場合、資金不足に陥ってしまい、老後の生活が成り立たなくなる恐れがあります。

 

そこで考えたいのがお金のフロー、つまり「キャッシュフローを生み出す方法」なのです。

毎月の不足額を、運用によって生み出す

上記でご紹介した参考値(試算)の2000万円の貯蓄は、「ストック」された資産です。

 

しかし、この貯蓄をもう少し効率的に運用すれば、「フロー」の収入を得ることができます。

 

先ほどの2000万円問題で考えると、前述したように、毎月の不足額は5万4520円ですから、毎月5万4520円を生み出す方法を考えれば良いのです。

 

ここに年5%の利回りで運用できる投資対象があるとしましょう。毎月5万4520円ですから、年間では65万4240円です。

 

では、年5%で運用して毎年65万4240円の収益を生み出すためには、投資元本はいくら必要でしょうか?

 

これは65万4240円を5%で割り戻せば簡単に求められます。

 

65万4240円÷5%=1308万4800円

 

つまり1308万4800円の投資元本を、年5%の利回りが得られる投資商品で運用すれば、毎年65万4240円のキャッシュフローが得られ、2000万円問題は解決するのです。

 

「今は低金利だから、年5%なんて無理だ」という意見は、もちろんあるでしょう。でも、株式の配当利回り、不動産投資信託(J-REIT)の分配金利回りなら、年5%を十分に実現できます。

 

配当利回りは投資した時の株価で決まります。1株につき毎年200円の配当を出す企業の株式を4000円の株価で買えば、その時点で5%の配当利回りは確定します。

 

もちろん、企業収益は一定ではありませんから、配当金の額が減らされることもありますが、配当金の額は株価ほど大きく変動しません。長期的に成長する企業であれば、少しずつ配当金が増額されることだってあり得ます。

一定額のCFを生み出す資産を、複数保有しておく

毎月のキャッシュフローを得る方法は、ほかにもあります。「定年退職後も働く」という選択です。現役時代の給与水準は望めなくても、安定した収入があるのと無いのとでは大きく異なります。

 

健康で元気よく動ける体でないと、よい仕事はできません。歳を重ねると難しくなることもあります。だからこそ、お金自身に働いてもらうのです。

 

恐らく、上記の方法については「株価が下がるから嫌だ」という方もいらっしゃると思います。でも、毎年の配当金額が1株につき200円だとして、その株価が3000円に下がったとしたら、配当金額が変わらなくても、配当利回りは6.66%に上昇します。一度に1000万円以上の資金で投資するのではなく、株価が下がったら買い増すことを長期的に繰り返していくのです。そうすれば20年後、30年後の配当利回りが5%どころか、7%、9%になっている可能性もあります。

 

このように、一定額のキャッシュフローを生み出す資産をいくつか保有し、自分のライプランに合った方法で資産形成を始めると、恐らく定年退職後も、不安を解消しながら過ごすことができるのではないでしょうか?(情報は2023年3月8日時点のものです。)

 

 

鈴木雅光
金融ジャーナリスト、JOYnt 代表

 

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※本連載は、NTTファイナンス株式会社の楽クラライフノートから転載したものです。

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