大手企業の賃上げは会社員の悪夢の始まりかもしれない
一方、同調査によると大卒・正社員(平均年齢40.3歳)の平均給与(所定内給与)は月36.7万円。
年齢別にみていくと、20代前半で23.0万円だった月収は、30代で30万円台、40代後半で40万円台となり、50代後半で50万円の大台にのります。
【年齢別・大卒正社員の月収(所定内給与)の推移】
20~24歳:23.0万円
25~29歳:26.2万円
30~34歳:30.5万円
35~39歳:35.1万円
40~44歳:39.3万円
45~49歳:43.6万円
50~54歳:49.5万円
55~59歳:50.0万円
60~64歳:42.2万円
出所:厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』
さらに初任給(新卒学卒者給与)と比較し、新卒入社以来の昇給の程度を確認していくと、20代後半では初任給の1.16倍に過ぎませんが、30代後半では1.56倍に。40代後半では1.94倍とほぼ倍となり、50代後半では2.22倍となります。
仮に初任給30万円となり、同じように年齢があがるごとに昇給していったとしたら、どれほどの給与になるのでしょうか。単純計算、30代で40万円台となり、40代では50万円台。そして50代では60万円台となり、定年間近の50代後半では66.55万円になります。
今回の賃上げで、なんとも明るい未来が待っている……とはいかないと、多くの専門家は指摘しています。
まず多くの企業が新卒の初任給をあげるといっていますが、全社員のベースアップまで言及している企業は少数派。また月収を引き上げる話はしていますが、賞与や手当まで厚くするとはほとんどが言っていません。月収はあがったが、年収は同じ……十分に考えられることです。
また今回の賃上げにより「脱年功序列」が加速するという見方も。転職以外の方法で給与アップを狙うなら、職務を上げていくしか方法はなくなります。
さらに日本的「ジョブ型」人事制度が浸透することで、格差が助長されるという主張も。欧米の職務給は企業横断である程度決まっていますが、日本の場合は自社だけで決まるという違いがあります。実は日本のほうが自由自在に給与を変えられる仕組みになっているのです。今後、大幅昇給があるかもしれない、その一方で大幅減給もあるかもしれないのです。
――初任給アップに続け!
そう勢いづいているかもしれませんが、その先には待っているのはいばらの道。「長く働いていたら給与は上がるもの」と、ぬるま湯になれた会社員には厳しすぎる悪夢かもしれません。