4―資産形成に向いている貯蓄と投資の違い
リスクを取って長期保有をすることでお金を増やすことが期待できる「投資」と異なり、お金を貯めることで家計の基本となる「貯蓄」は元本保証があってリスクがない。
預貯金や元本保証型保険等、貯蓄商品は信用力がある銀行や保険会社などにお金を預けて運用してもらうことになるため、不確実性がなく安全性が高い。
また、多少ではあるが、貯蓄商品は利子がついたりするので、参加者全員の持ち分合計が大きくなり、利益合計が少しプラスになる。プラスサムゲームの貯蓄は資産形成に向いていると考えられる。
入学時期がほぼ決まっている教育資金など近い将来に必要な資金や、必要な時期が決まっている資金の準備は、安全性と換金性がより求められるので、元本毀損リスクがない貯蓄商品で対応すべきである*1。
一方、老後資金といった残りの投資期間が長い資金の準備であれば、積極的にリスクを取って長期保有のメリットを享受できる投資商品を購入して効率的に資産形成すべきである。
尚、一部のiDeCoなどでも取り扱いがある「金」は大昔から貴重な財産として取り扱われており、腐食耐性と換金性も高いので、長期的には値上がりして価値がゼロにならないという歴史的経緯から、多くの人から信用力が高く安全な資産として認識されている。また、インフレヘッジ機能があるとも言われている。
すべての財産を金にすることはお勧めできないが、少し保有するのであれば資産形成に向いていると思われる。ただ、金はやや特殊なので、このレポートでは説明しない。
*1*一般社団法人全国銀行協会の資料(https://www.zenginkyo.or.jp/article/life/mariage/9836/)を参考した。
5―まとめ
今回のレポートでは、参加者全員の利益合計がゼロかマイナスかプラスかという観点から、投機とギャンブル(賭け事)と投資の見分け方を説明してみた。
投機、ギャンブルや宝くじは、ゼロサムゲームもしくはマイナスサムゲーム、または将来の価値が不明なので資産形成に向いていない。一方、投資は参加者全員の持ち分合計が増えていき、将来の利益合計がプラスになると合理的に期待できるプラスサムゲームなので、資産形成に向いている。
投資には、インカムもしくは価値増加を期待できる仕組みがある。債券には利息、株式には配当、不動産には賃料収入という定期的にインカムを受け取る仕組みがある。さらに、株式には将来的な会社価値の増加を期待できる仕組みもある。これらは投資商品であり、長期で分散投資するなど、適切な投資手法で活用すれば、長期の資産形成に向いている。
尚、貯蓄は多少利子がついたりするので、参加者全員の利益合計がすこしプラスになるので資産形成に向いている。各人の資産状況、残りの投資期間、ライフプランと資金の目的に応じて、貯蓄商品と投資商品を使い分けることが望ましい。
多種多様な金融商品から、何に投資をしたらよいか迷う人は、良質な投資商品が数多くある現行つみたてNISA、新NISA(つみたて投資枠)、確定拠出年金制度(企業型DC及び個人型のiDeCo)等の税制優遇諸制度の対象である投資商品から選択すべきであろう。それでも迷う人は株式インデックス商品やバランス型などを選択しておけば良いと思う。(参考:熊 紫云「確定拠出年金では何に投資したら良いのか?-外国株式型、国内株式型、バランス型、外国債券型と国内債券型でパフォーマンスを比較してみた」https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=70490?pno=3&site=nli)
そして、十分な資産形成をするためには、適切な投資商品をよく吟味し慎重に選択して、少額でも良いので積立投資を始めるなど、資産形成に向けて、なるべく早く準備を始めることが何より重要であると考えている。まずは実際に投資を始めてみてはどうだろうか。
次回のレポートでは、資産形成に向いていないギャンブルと投機に注目して、FX取引の短期売買や暗号資産(仮想通貨)やNFTなどが投機であることについて説明するとともに、資産形成のために投資商品を活用する際のポイントについて述べていきたい。