老後の生活資金確保や住宅購入等のためには、まとまった資金を準備する必要がありますが、十分に資産形成をするために、どのような金融商品を購入したらよいのでしょうか。ニッセイ基礎研究所の熊紫云氏によるレポートです。
資産形成に向いている投資商品とは何か…何に投資をしたら良いか迷うのであれば、iDeCoやつみたてNISAなどを活用すべき (写真はイメージです/PIXTA)

【株式】

株式の場合、インカムである債券の利息に相当する配当がある銘柄が多い。ただし、債券と違って配当が実際に支払われるのか、いくら支払われるのかは確定しておらず、あくまでも予想や期待である。【図表5】で株式取引の具体例を見てみよう。

 

【図表5】
【図表5】

 

Aさんが株式会社の株式を100万円分購入し、時価110万円でBさんに売却した。Aさんの保有している間、会社が成長途上にあったため、配当はなかった。

 

次にBさんの保有している間も配当がないまま、Bさんは時価80万円でCさんに売却した。

 

次にCさんの保有している間、会社が順調に成長して売上好調で利益が出て10万円の配当があり、Cさんは時価110万円でDさんに売却した。

 

10年後、会社が成長した結果、株価が120万円に上昇し、Dさんは、保有期間中に配当の20万円を受け取った。

 

すると10年後の各投資家の損益状況は、Aさんが売却益+10万円、Bさんが売却損▲30万円、Cさんが配当受取+10万円、売却益+30万円で+40万円、Dさんが配当受取+20万円、含み益+10万円で+30万円である。投資家全員の利益合計はインカムである累計配当受取+30万円と会社の価値増加+20万円で、合計+50万円である。

 

業績が好調な会社の株式はインカム(配当)と長期的に価値が増加していく仕組みの両方が期待できる商品である。投資する会社の商品が好調に売れ、売上が増加し、利益が出ていれば、その利益の一部が配当として株主に支払われたり、内部留保として事業拡大に向けた投資などが行われたりする(図表6)。株価というものは投資家間の需給関係などによって理論的もしくは本質的な会社価値(ファンダメンタル・バリュー)から離れて変動する。しかし、今後も利益が入ってくることが見込まれる場合、会社価値が中長期的に増加していくとともに、株価も上がっていくことが十分期待できる。このように、株式には長期的に価値が増加していく仕組みがある。

 

【図表6】
【図表6】

 

株式は良い会社を数多く選択し分散投資すれば、今後の投資家全員の持ち分合計が増えていき、将来の投資家全員の利益合計がプラスとなるプラスサムゲームであることが合理的に期待できる。従って、株式の長期保有は「投資」であり、資産形成に向いている。適切な方法での株式投資は、けっしてギャンブルでも投機でもない。

 

【不動産】

不動産は、債券の利息や株式の配当に相当するインカムである家賃収入がある。【図表7】でワンルームマンションやアパートをイメージして説明する。

 

【図表7】
【図表7】

 

大家さんが購入した不動産を入居者に貸し出し、毎月、入居者が家賃を大家さんに支払う。良い物件であれば、修繕費や管理費用等のコストはかかるものの、長期的に利益が出て、安定したインカムが期待できる。

 

また、自分の持ち家の場合も、定期的に家賃を払わなくても良いという経済的利益を享受できるので、賃貸マンションと同様にインカムがあると考えることが可能である。

 

不動産は良い場所にある複数の優良物件に分散投資し、適切に管理・運用すれば、長期的に利益が安定的にプラスになることが十分期待できるため、プラスサムゲームであると言える。不動産の長期保有は「投資」であり、資産形成に向いている。