「生前贈与」場合によっては大損も
[平岡さん]
遺産分割対策として、よく聞くのが「生前贈与」。「親が生きているうちに財産をもらっておく」という話は、私の周りでもチラホラ出てきた。
[ヒロ税理士]
ただし……生前贈与になると、相続税ではなくて「贈与税」がかかり、実は税金が高くなるケースもあります。まずは「贈与」「相続」あと「遺贈」を整理しますね。
[ヒロ税理士]
生前贈与だと「贈与税」、遺産相続だと「相続税」がかかります。「生前贈与」をして「相続税逃れ」をしようとする人が多いため「贈与税」は「相続税」よりも税率が高くなりやすい計算構造となっています。
何も考えずに贈与をしすぎると、「相続税」は節税できたものの、結局「贈与税」の負担が大きくなって大損……なんてこともあり得るので、まずは「贈与税」の仕組みを把握しておくことが大切です。
例えば、親から1,000万円の自由に使えるお金をもらったとした場合、贈与税額は、何と177万円。2割近く税金がかかる計算です。
贈与税の計算の仕組み(暦年贈与の場合)
贈与税 年間110万円の非課税枠をフルに生かす
ただ、贈与税にも、「相続税」で説明した基礎控除があります。年間110万円までの贈与であれば「贈与税」がかかりません。この非課税枠をフル活用しない道理はないね。
(例)Aさん:遺産総額(課税価格)1億円 妻・子ども3人
相続税は現行税制の場合262万円
10年間継続した場合、100万円×3人×10年=3,000万円
遺産総額(課税価格)は1億円-3,000万円=7,000万円に減少
相続税 80万円
贈与税 0円
➡比較すると、約180万円もの節税効果
[ヒロ税理士]
これだけ節税できればものすごい節税効果だが、実はそう甘くはない! ちょっとざっくり説明してしまったけど、厳密には相続税には「生前贈与加算」という規定がある。
亡くなる前3年以内に相続税対策等のために生前贈与を行った場合、法律上贈与は成立するものの、相続税の計算上は無効となる。つまり、相続発生時に相続財産に贈与した財産額が加算され、相続税の課税対象となるのだ。
[ヒロ税理士]
もしその3年間のうちに暦年で110万円を超える贈与をして贈与税を納めている場合、それは相続税の前払いとしてちゃんと相続時の相続税額から控除される。源泉徴収税額の年末調整のように精算されるから安心してほしい。
ここで悲報です。残念ながら令和5年度税制改正にてこの生前贈与加算の期間が3年から7年に延長されることがほぼ決まった。以前から「相続税と贈与税の一体化」つまり相続で財産をもらっても贈与で財産をもらっても税負担は同じ、とする税制改正に関する方針が掲げられていたのだが、これがついに実現目前となってしまった。