最近、よく耳にする賃上げのニュース。なかでも新卒者の初任給など、20~30代といった若年層の賃上げが盛んにいわれています。そのようななか、恨めしそうな顔でみている人たちが……みていきましょう。
月収17万円・50代の「氷河期世代」の怨念…非正規・貧困・老後不安の“三重苦”に「もう、生きていても、つらいだけ」 (※写真はイメージです/PIXTA)

正社員になれなかった50代非正規…65歳から手にする年金額

――正社員になることは、諦めている

 

とは冒頭の50代男性。若いころ、雇用環境が悪いというのを言い訳に、非正規に甘んじていたという反省もあるといいます。しかし、やり切れない思いと、将来への不安は大きいよう。

 

厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、大卒男性・非正規社員の給与(所定内給与額)の中央値は24.5万円。50代前半では22.3万円、手取りにすると17万円ほどです。仮に社会人になってから60歳まで、現在と同じ給与水準だったし、厚生年金にも加入できていたとしたら、65歳から手にする年金額はいくらになるのでしょうか。

 

年金の支給額は、国民年金は「年金額×(保険料の納付月数÷480ヵ月)」で、厚生年金は、加入期間が2003年3月までは①「平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数」、加入期間2003年4月以降は②「平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」で計算できます。便宜上、②だけで計算すると、厚生年金は月5.2万円ほど。国民年金は満額支給で現在の受給額で考えると、月11.6万円ほどの年金を手にすることになります。

 

ただこれは、非正規ながらも厚生年金に加入できたというケース2020年10月からの非正規(短時間労働者)に対する厚生年金保険の適用の拡大となりましたが、それまでは非正規であれば厚生年金に加入できないということも珍しくありませんでした。つまり、月11万円よりも、もっと少ない年金しか受給できないケースは多いと考えられます。そのような年金額では十分とはいえず、定年年齢を迎えても、働き続けることは氷河期世代の非正規の人たちには既定路線だといえるでしょう。

 

また「老後、とても生きていけない」といったときには「生活保護」というセーフティーネットがあります。しかし、これまでさんざん見放されてきた氷河期世代の人たちのなかには「いまさら国に頼りたくない」という思いも強いよう。

 

――もう、生きていても、つらいだけ

 

先も見通せない、非正規の氷河期世代からは、そんなつぶやきさえも。

 

国は2020年度から3ヵ年の計画で氷河期世代などの就労支援に乗り出しました。しかしコロナ禍と重なり成果はあがらず、支援事業の2年延長を決めています。しかし、不遇の氷河期世代への支援がこれで十分なのか、このカタチでいいのか、いま一度検討する必要があるといえそうです。