絶対にやめて!「調理器具の壁掛け収納」
絶対にやめてもらいたいのが、包丁をはじめとした調理器具の壁掛け収納です。マグネットタイプで壁のデッドスペースに設置でき、使うときに必要な包丁がすぐに手に取れるので便利なのだと思います。しかし、地震が起きたとき……包丁がいきなりあなたに向かって飛んでくるかもしれません。
東日本大震災の被災地に支援に入ったとき、さいばしが首のつけ根、頸動脈に刺さって亡くなったご遺体を目にしました。さいばしですら恐ろしい凶器になるのです。
包丁がさまざまな調理器具とともにあなたに向かって飛んできたらどうなるのか? 想像をしてみてください。
重いフライパンやお鍋もコンロ下の棚に収納しましょう。東京のワンルームマンションに住んでいる知人は、「東日本大震災の日に帰宅したら、玄関にル・クルーゼのお鍋が落ちていてゾッとした」と話していました。震度5でも重たいル・クルーゼのお鍋が1メートル近く飛ぶのです。
吊り戸棚は「軽いもの」のストック置き場に
吊り戸棚は手が届かないため、上へ上へと滅多に使わないものを押し込みがちです。
吊り戸棚は地震のとき、がぽっと外れて落下します。ここに収納するのは、落ちてきても痛くなさそうなもの、片づけに手間がかからないものにしましょう。
お弁当に使うバランや密閉容器、ダスターやスポンジ、キッチンペーパーなどのストック置き場に使うのがおすすめです。
食器は「収納の仕方」で守れる
お皿をキッチンの引き出しに収納できるのなら、引き出しの飛び出しを防いでおけば大丈夫です。引き出しの扉に子どもの指挟みやいたずら防止用のストッパー(ドアロック)をつければOK。大阪府北部地震で被災したとき、わが家はこの対策で一枚もお皿を割らずにすみました。
食器を食器棚やキッチンラックに収納する場合は、滑り止めシートを貼ったプラスチックケースに入れて収納をしましょう。食器を入れるケースには、底だけでなく内側にも滑り止めシートを貼って、ケースの中でお皿が動くのを防ぎます。内側に滑り止めシートを貼るのがめんどうくさければ、ただ、シートを入れておくだけでもかまいません。
取手がついているケースを選べば、お料理のとき取り出すのにも便利です。使う人ごとやシチュエーションごとにケースを分けると管理も楽になります。
食器棚の扉が観音開きのタイプでしたら、先ほど紹介したS字フックか開き戸ロックを使って、扉が開かないようにしておきましょう。カラーバリエーションもありますので、ご自宅のキッチンに合ったものを探してください。
飛び出しを防ぐ「食器の積み方」がある
お皿の重ね方にもひと工夫をしましょう。
通常、お皿は下から大きい順に並べると思います。でも、飛び出しを防ぐという点では、下から中皿→大皿→小皿の順に重ねるのがおすすめです。
以前、ボックスの中に食器を入れて、下から大きいものを重ねた場合と、重ね方を工夫した場合とで、どちらが揺れに強いか、専門の施設で比較実験をしたことがあります。
結果は、中皿→大皿→小皿のほうが勝ち! 震度7でも1枚も割れませんでした。
一見、不安定に感じますが、揺れが相殺されるので逆に安定するようです。
冷蔵庫の「歩行」は「外」と「中」とで対策
キッチンで怖いのは冷蔵庫です。まずは、転倒防止対策。底には耐震マットを敷き、突っ張り棒で天井までのスペースを埋めておきましょう。
冷蔵庫の中もやっておいてほしいことがあります。冷蔵庫などの大型家電や家具が歩き出す原因は、地震の揺れに加え、中に入っているものが動いて反動がつくからです。
それを防ぐために、冷蔵庫の棚に滑り止めシートを貼り、その上で、食材をケースに入れて収納をします。納豆や豆腐を入れて「朝ごはんセット」、お菓子を入れて「おやつセット」、ドレッシングの「調味料セット」などと分類すると、日々の使い勝手もよくなります。
冷蔵庫の中に使うケースは、冷気が行き渡るようメッシュ状になったものがおすすめです。滑り止めシートは透明のものを使うと中が見通しやすくなります。
辻 直美
国際災害レスキューナース
一般社団法人育母塾代表理事