家に傷をつけたくないなら「突っ張り棒+耐震板」で
家具の転倒防止対策で、もっとも効果が高いのはL字金具などを使った固定です。でも、賃貸住宅では壁や柱に穴を開けることができません。家に傷をつけたくないという人もいるでしょう。
そんなときに便利なのが転倒防止ポール、いわゆる突っ張り棒です。使っている人も多いのではないでしょうか。ただ、使い方を間違えると、十分な強度が出なかったり、家具を傷つけたりすることがあるので、注意をしてください。
突っ張り棒を設置する位置は、家具の両端、壁に近い奥側に取りつけるのが基本です。家具の真ん中に一つだけ設置すると、棚板が割れてしまう可能性があるので注意してください。
ただ、突っ張り棒単体では正直、不安です。
東京消防庁が出している『家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック』でも、震度6強の揺れに対する突っ張り棒(ポール)の効果は小さいと指摘。ストッパー式や粘着マット式の転倒防止器具との合わせ使いで効果が高まるとしています。
突っ張り棒代わりに「段ボール」を活用する方法も
突っ張り棒は天井に十分な強度がないと設置できませんし、天井との隙間が広いと十分な強度が確保できません。また、逆に天井と家具との隙間が中途半端で合うサイズの突っ張り棒がない、という場合もあるでしょう。
そうした場合は、段ボールを突っ張り棒の代わりに使いましょう。天井までの隙間を段ボールで埋めるのです。
ただし、何も入っていない段ボールでは衝撃ですぐに潰れます。私は段ボールのいちばん下に分厚い女性誌を入れて補強したうえで、ワインなどを買ったときに入っている仕切りを活用し、簡単に潰れないようにしています(自分で段ボールを格子状に組み合わせてもOK)。そこにさらに、使わないタオルなどをぎっしり詰めて強度を高めています。
突っ張り棒は揺れ方によっては外れてしまうことがあります。一方、段ボールは設置面が広いので、安定しやすいというメリットもあります。大切なのは、中身をぎっしぎしに詰めることです。「段ボールそのままだと生活感が出てちょっとイヤ」と思うかもしれません。最近はフェローズのバンカーズボックスをはじめ、おしゃれな段ボールも出ています。また、インテリアに合わせてリメイクシートを貼るのも一つの方法です。
もし、天井と家具との間が狭く、突っ張り棒も段ボールも入らない……という場合は、本や雑誌で空間を埋めていきましょう。そのとき、本と本の間に滑り止めシートを挟むのを忘れないようにしてください。
私は家具の天板にあらかじめ、滑り止めシートを両面テープで貼りつけ、その上から、本→滑り止めシート→本と、ミルフィーユ状に重ねています。
棚の中身の飛散防止として「扉をロックする」方法
見せない収納で片づけていても、地震の揺れで家具の扉が開けば、中のものはすべて飛び出してきます。滑り止めシートを貼った収納ケースを使いつつ、扉が開かないようにしておきましょう。棚の扉に使えるのが、「耐震ラッチ」です。最近では、キッチンの棚などには標準装備されていることもあるようです。ホームセンターやネットショップで購入し、自身で後づけすることもできます。
耐震ラッチはセンサーが揺れを感知してロックをかけるタイプから、手動式のもの、扉を閉めるたびに自動でロックがかかるプッシュ式のものなど、いくつかの種類があり、値段もさまざまです。ただし、耐震ラッチにはそれなりのお金をかける価値はあると思っています(といっても、2000円前後ですが)。
S字フックで扉をロック
取手のある家具であれば、もっと簡単に扉の開きを防止することができます。使うのは、100円ショップなどで売っているS字フック。
クローゼットなどの開き戸の取手にS字フックをかませておくだけで、扉が開いて洋服が雪崩のように落ちてくるのを防ぐことができます。
使い方には少しコツがあって、写真○のように向かって右側の取手にひっかけるのです。扉を開きたいときは、左側を下ろすようにすると簡単に外せます。
写真×のかけ方だと外すのがめんどうで、S字フックを使わなくなってしまいます。正しくつければ、手間がかからないので、日常生活になじんでいきます。写真に従って、試してみてください。
耐震対策は「合わせ技」で!
防災グッズは二つ以上を合わせることで安全度がアップします。突っ張り棒に耐震ジェルを挟む、あるいは、突っ張り棒をしつつ、家具にストッパー式の耐震板をかませることで、家具の転倒対策はより強化されます。
すでに説明したように、私は本棚に突っ張り棒をしつつ、段ボールで天井とのスペースを埋めて、強度を高めています。その他、耐震ラッチをつけつつ、S字フックを補助使いしたりもしています。
辻 直美
国際災害レスキューナース
一般社団法人育母塾代表理事