(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●重回帰分析により日経平均の変化率をドル円レートとISM製造業景況感指数の変化率で推計。

●日経平均はドル円の1%上昇で約1.3%上昇、ISM指数の1%上昇で約0.8%上昇との結果に。

●2変数で日経平均の変化率を説明できる割合は約62%だが変化のおおまかな方向性は説明可。

重回帰分析により日経平均の変化率をドル円レートとISM製造業景況感指数の変化率で推計

今回のレポートでは、日経平均株価の為替感応度を検証します。具体的には、ドル円レートが1%変化した場合、日経平均株価は何%変化するかについて、重回帰分析という統計手法を用いて推計します。推計期間は2002年12月から2022年12月までとし、日経平均株価、ドル円レートに加え、米サプライマネジメント協会(ISM)が発表している製造業景況感指数を使用します。

 

実際の推計にあたっては、日経平均株価とドル円レートは、いずれも月末値の前年比変化率を用い、ISM製造業景況感指数も前年比変化率を用います。重回帰分析によって、ドル円レートの変化率と、ISM製造業景況感指数の変化率で、日経平均株価の変化率をどの程度、説明できるのかを確認します。ここで、ドル円レートとISM製造業景況感指数を説明変数、日経平均株価を被説明変数といいます。

日経平均はドル円の1%上昇で約1.3%上昇、ISM指数の1%上昇で約0.8%上昇との結果に

推計結果は図表1の通りです。

 

(注)データは2002年12月から2022年12月。 (出所)Bloombergのデータを基にEviewsを用いて三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]重回帰分析による推計モデル (注)データは2002年12月から2022年12月。
(出所)Bloombergのデータを基にEviewsを用いて三井住友DSアセットマネジメント作成

 

日経平均株価の変化率の推計式は、定数5.264795、係数1.292189×ドル円レートの変化率、係数0.810085×ISM製造業景況感指数の変化率で表されています。ドル円レートの係数1.292189が、日経平均株価の為替感応度であり、ドル円レートが前年比1%、ドル高・円安方向に変化すると、日経平均株価は前年比約1.3%上昇する関係が示されています。

 

逆に、ドル円レートが前年比1%、ドル安・円高方向に変化すると、日経平均株価は前年比約1.3%下落すると推計されます。また、もう1つの説明変数である、ISM製造業景況感指数についても、同じことがいえます。すなわち、ISM製造業景況感指数が前年比1%上昇(改善)すると、日経平均株価は前年比約0.8%上昇し、逆に前年比1%下落(悪化)すると、日経平均株価は前年比約0.8%下落すると考えられます。

2変数で日経平均の変化率を説明できる割合は約62%だが変化のおおまかな方向性は説明可

なお、推計式の定数と2つの係数について、それぞれゼロという帰無仮説は、t値とp値が示す通り、1%有意水準で棄却されるため、いずれも統計的に有意といえます。また、推計にあたっては、系列相関(誤差項の相互相関)と不均一分散(誤差項の分散が不均一)を想定し、Newey-Westの標準誤差を用いています。さらに、ドル円レートとISM製造業景況感指数に多重共線性(説明変数の相互相関)のないことは、別途検証済みです。

 

最後に、推計式の自由度修正済み決定係数をみると、0.621312となっています。これは、ドル円レートとISM製造業景況感指数の変化率で、日経平均株価の変化率を約62%説明できることを示します。つまり、他の要因が約38%あることから、この推計式だけで、日経平均株価の変化率を完全に説明することは困難といえます。ただ、過去の動きをみる限り、おおまかな変化の方向性は説明可能と思われます(図表2)。

 

(注)データは2002年12月から2022年12月。 (出所)Bloombergのデータを基にEviewsを用いて三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]日経平均株価変化率の実績値と推計値 (注)データは2002年12月から2022年12月。
(出所)Bloombergのデータを基にEviewsを用いて三井住友DSアセットマネジメント作成

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ドル円が1%上昇したら、日経平均株価は何%変わる?日経平均株価の為替感応度【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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