2022年の年末、世間を賑わせた金利引き上げのニュース。住宅ローン利用者は返済プランの変更など、対応に迫られました。しかし金利引き上げと同じように心配されることがあると専門家は警報を鳴らしています。みていきましょう。
平均月収36万円・40代会社員…70歳で完済予定の「住宅ローン3,000万円」に戦々恐々 (※写真はイメージです/PIXTA)

金利引き上げも問題だが…ローンの借入期間が延びていることも大問題

金利の引き上げに戦々恐々としている人が多いなか、専門家の間では、もっと危惧することがあるという声も。それは住宅ローンの借入期間が延びていることです。

 

住宅金融支援機構の調査によると、2019年度の新規貸し出しの約定貸出期間は平均27.0年。5年前の2016年に比べて1年半ほど延びています。借入期間が延びればその分、利息分も増えることになります。また昨今、原材料や人件費の高騰もあり、物件価格も高騰。借入額そのものも増えているといいます。

 

さらに問題なのが、購入年齢があがっていること。国土交通省『住宅市場動向調査』によると、2009年、首都圏の分譲住宅購入者(世帯主)の平均年齢は37.6歳。それが2021年では42.6歳。10年強の間に、住宅購入のタイミングが5年も遅くなっています。当然、完済時期も後ろ倒しになっているわけです。

 

40代前半、男性会社員(正社員)の平均給与(所定内給与額)は月36.4万、年収は606.0万円。返済負担額(年収に占めるローン返済額の割合)の上限は35%といわれていますが、適正は20~25%といわれています。仮に返済負担率20%だとすると、月々の返済は10.1万円程度になります。

 

毎月10万円を払い続けると、完済したころには70歳を超えています。退職金を当てにしている人も多いでしょうが、退職金でローン返済は4分の1までというのが、老後を見据えた場合のセオリー。老後、年を重ねるたびにかさむ医療費や介護費、住宅の修繕費、冠婚葬祭費と、日常の出費以外に備えるとなると、退職金はできるだけ手を付けないほうが得策だといえるでしょう。

 

最悪といえるのが、定年時に、なお多くの住宅ローンの残債が残っている場合。月10万円の返済で返済期間は30年、金利1%と仮定すると、借りられるのは3,109万円。42歳で返済スタートだとすると、60歳定年の時点で残債は1,300万円ほど。さらに原則、年金受給の始まる65歳時点で700万円強の残債があります。多い・少ないの評価は人それぞれですが、収入が限られているなか、多くの残債があると、老後資金が枯渇してしまうことも。完済するのか、それともしないのかは別として、定年を迎えた時点で、いつでも払ってしまえるだけの余裕資金を確保しておくことが理想です。