老後、いったどれだけのお金があればいいのか……いろいろな調査がありますが、どうやら「年金だけでは生活が苦しい」というのは確かなようです。その対策として、「生活費の安い田舎暮らし」を推奨する声もありますが、そんなに生活費は変わるものでしょうか。みていきましょう。
平均月14万円だが、年金だけでは暮らせない…「都会」それとも「田舎」、老後生活のベストアンサー (※写真はイメージです/PIXTA)

「都会」と「田舎」…家計調査で生活費を比較すると

同調査では「高齢者世帯」に限って、都市と田舎の収支を語ることはできないので、「無職世帯」でその収支を比較していきます。

 

まず調査都市規模別にまとめているなかで最も大きい「大都市=都道府県庁所在市以外の政令指定都市」についてみていきましょう。世帯主の平均年齢は75.2歳、平均世帯人数は2.36人です。「実収入」は24万2,757円、それに対して「実支出」は26万9,913円。月々2万7,000円ほど赤字となるので、その分、貯蓄を取り崩すなどして対応しなければなりません。

 

では同調査で最も規模の小さい「小都市B・町村=人口5万未満の市及び町村」についてみていきます。世帯主の平均年齢は74.3歳、平均世帯人数は2.42人です。「実収入」は23万7,854円。それに対して「実支出」は24万9,570円。月々1万1,000円ほどの赤字で、その分は貯蓄を取り崩すなどの対応が迫られます。

 

【「都会」Vs.「田舎」無職世帯の収支】

実収入:242,757円/237,854円

実支出:269,913円/249,570円

消費支出:235,420円/219,067円

(内訳)

食料:74,687円/62,990円

住居:19,018円/16,045円

光熱・水道:20,312円/21,981円

家具・家事用品:10,099円/11,957円

被服及び履物:5,446円/4,830円

保健医療:15,878円/14,989円

交通・通信:23,821円/27,830円

教育:783円/155円

教養娯楽:20,375円/17,340円

その他の消費支出:45,001円/40,950円

 

出所:総務省統計局『家計調査 家計収支編』(2021年)より

※数値左より、大都市/小都市B・町村

 

日本どこにいても老後は赤字を覚悟しなければならない……という事情はあるものの、田舎のほうが1万5,000円以上も生活費が安く、特に「住居費」と「食料」は田舎のほうが有利といえそうです。また都市のほうが娯楽が多いからでしょう、「教育娯楽費」の出費が多くなっています。

 

確かに都市よりも田舎のほうが生活費は安く住むので、収入が限られる高齢者は田舎暮らしのほうが生活はラクかもしれません。また以前は利便性において田舎暮らしに拒否感が大きかったかもしれませんが、コロナ禍でネットが生活の中心となったいまでは、地域格差は随分と小さくなり、田舎への拒否感も小さくなったでしょう。

 

もちろん、慣れ親しんだ地で暮らすというのが、高齢者にはベストでしょう。しかし場所にそれほど執着がないのであれば、年金生活が始まる前に生活費の安い田舎へ、というのもベストな選択といえるかもしれません。