認知症と診断されたら…「住宅ローン」はどうする?
厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、男性会社員(正社員)の平均給与は、月34.8万円。年齢別にみていくと、年齢を重ねるごとに給与は増えていき、50代は会社員人生史上、最も稼ぐ時期。その給与は月42.2万円ほど、手取りで31万円ほどになります。一方で住宅ローンの返済に加え、子どもの教育費もピークに達するとき。収入も多いけど支出も多い……50代はそんなタイミングです。
そんなときに認知症と診断されたら、どうでしょう。年齢的にも会社では重要なポジションにいるはず。しかしその役割を果たすことは徐々にできなくなり、退職を余儀なくされる……収入は途絶え、再就職が決まったとしても、それまでと同等の給与は望めず、生活苦。
前出の東京都の調査では住宅ローンが残っているのは1割程度でしたが、同じく現在の家計の状況については、1割程度の⼈が「とても苦しい」、2割程度の⼈が「やや苦しい」と感じていました。
仮に平均的なタイミング、価格、ローンでマイホームを購入したとしましょう。新築分譲マンションだとすると、39.5歳で3,337万円/32.0年のローンを活用したことになります(国土交通省『令和3年度住宅市場動向調査』』より)。返済方式は元利均等、金利は0.5%だとすると、月々の支払いは9万4,056円。ローン返済開始後、15年ほどで認知症と診断されたとすると、まだ1,830万4,609円の残債がある計算です。
認知症なのに、1,800万円超の住宅ローン……晴天の霹靂とは、まさにこのようなこと。マイホームは手放すしかない、と悲観する前にいまいちど確認すべきことがあります。
金融機関で住宅ローンを組むとき、たいていは返済する人の「万が一」に備え、「団体信用生命保険(団信)」に同時に加入しているはず。「万が一」はローン返済者の死亡のほか「高度障害」の特約がついていることも珍しくなく、認知症の症状が重度障害と認められる場合も。保険や契約内容によって異なるので、まずは金融機関の窓口に相談するのがよいでしょう。
認知症と診断され、家族ともども大きな不安に潰されそうになりますが、症状によっては障害者年金を受給できたり、医療費負担が軽減されたり、就学支援を受けられたりと、さまざまなサポートがあります。都道府県単位で「若年性認知症支援コーディネーター」が配置されているので、一度相談するのもいいでしょう。