1. 「2,000万円の住宅ローン」を組める年収の目安
まず、2,000万円の住宅ローンを組める年収の水準がどのくらいか、お伝えします。
1.1. 年収250万円以上あれば住宅ローンを組める可能性がある
金融機関や適用金利等の条件によって異なりますが、住宅ローンの返済額が年収に占める割合(返済負担率)を30%とすると、返済期間が35年の場合でも審査に通過するためには「年収250万円以上」は必要となります。
返済負担率を25%以内に収めたい場合は、年収が300万円以上である必要があります。さらにゆとりを持たせたい場合は、350万円以上の年収が欲しいところです。
また、金融機関によっては申込条件を「年収300万円以上」と設定している場合もあるため、事前に確認しておくことが重要です。
たとえば、住宅金融支援機構の「フラット35」では、年収の要件はないものの、以下のように「返済負担率」の要件が設けられています。
- 年収400万円未満の場合、返済負担率30%以下
- 年収400万円以上の場合、返済負担率35%以下
また、新生銀行では、住宅ローンの申し込み要件の1つに「連続した就業2年以上、かつ前年度税込年収が300万円以上の正社員または契約社員であること。」があります。
1.2. 返済をきついと感じない世帯年収の目安は400万円以上
2,000万円の住宅ローンを組む際に、後々になって返済のきつさを感じないようにするためには、目安として「世帯年収400万円以上」である必要があります。
金融機関は「返済負担率」を重視して審査を行いますが、実際の家計では「手取り収入に対する住宅ローン返済額」を重視すべきです。
手取り収入に対する住宅ローン返済額の割合が小さいほど、ゆとりのある返済が可能です。手取り収入に対する住宅ローン返済額を「25%以下」に収めると、長期的にも安心して住宅ローン返済が可能となります。その理由は、マイホームを持つと、毎月の住宅ローン返済以外にも住宅のメンテナンス費用や固定資産税などの税金の支払いが発生するためです。
また、怪我や病気になって一時的に収入が減少するなど、世帯収入が減少した場合でも、もともとの返済比率が小さければある程度対応できます。
これに対し、もし、契約当初から高めの返済比率で住宅ローンを組むと、住宅のメンテナンス費用や税金の支払いで家計が苦しくなるかもしれません。また、収入の減少という事態に直面すると、返済がままならなくなる恐れがあります。
2.《金利・返済期間別》住宅ローン2,000万円の返済シミュレーション
次に、2,000万年の住宅ローンを組んだ際の返済シミュレーションをご覧ください。
なお、変動金利で契約すると、契約後に金利が上昇して住宅ローンの支払い額が増える可能性があります。
2.1. 金利0.4%のときの月々の返済額と年収別の返済負担率・総返済額
金利が0.4%のときの月々の返済額と年収別の返済負担率・総返済額をシミュレーションします。なお、「元利均等返済、ボーナス返済なし、借入期間中の金利変動なし」というケースでシミュレーションしています。
2.1.1. 返済期間15年
返済期間15年の場合のシミュレーションは下記の通りです。
年収 |
毎月返済額 |
総返済額 |
返済負担率 |
300万円 |
11.4万円 |
2,061万円 |
45.6% |
400万円 |
11.4万円 |
2,061万円 |
34.2% |
500万円 |
11.4万円 |
2,061万円 |
27.3% |
600万円 |
11.4万円 |
2,061万円 |
22.8% |
700万円 |
11.4万円 |
2,061万円 |
19.5% |
年収300万円の場合は返済負担率が45.6%に及んでおり、これでは審査に通過できません。
年収400万円の場合は34.2%と、審査に通過できる可能性はあるものの、持続可能な返済計画かどうかについては不安が残ります。
年収500万円以上になると、返済負担率が30%を下回っているので持続可能な返済計画といえます。
2.1.2. 返済期間25年
返済期間を25年とした場合のシミュレーションです。
年収 |
毎月返済額 |
総返済額 |
返済負担率 |
300万円 |
7万円 |
2,102万円 |
28.0% |
400万円 |
7万円 |
2,102万円 |
21.0% |
500万円 |
7万円 |
2,102万円 |
16.8% |
600万円 |
7万円 |
2,102万円 |
14.0% |
700万円 |
7万円 |
2,102万円 |
12.0% |
返済期間を伸ばすと月々の返済額が減るため、それに伴って返済負担率も小さくなります。
年収300万円の方でも返済負担率が28.0%まで下がり、審査に通過できる可能性が生まれました。
借入額2,000万円、返済期間25年になると、年収500万円以上の人であれば返済負担率が20%未満になるため、かなりゆとりのある返済計画を組めます。
2.1.3. 返済期間30年
返済期間を30年とした場合のシミュレーション結果を紹介します。
年収 |
毎月返済額 |
総返済額 |
返済負担率 |
300万円 |
5.9万円 |
2,123万円 |
23.6% |
400万円 |
5.9万円 |
2,123万円 |
17.7% |
500万円 |
5.9万円 |
2,123万円 |
14.2% |
600万円 |
5.9万円 |
2,123万円 |
11.8% |
700万円 |
5.9万円 |
2,123万円 |
10.1% |
30年の返済期間を取ることができれば、月々の返済額がより小さくなり、余裕を持った住宅ローン返済が可能です。
上記のように、年収300万円の人でも返済負担率は25%を下回るので、返済期間を長くすればするほど審査に通過しやすくなることがわかります。
ちなみに、年収が250万円の人の場合も返済負担率は28.3%なので、こちらも審査に通過できる可能性は十分にあります。
2.1.4. 返済期間35年
返済期間を35年としたケースのシミュレーション結果です。
年収 |
毎月返済額 |
総返済額 |
返済負担率 |
300万円 |
5.1万円 |
2,144万円 |
20.4% |
400万円 |
5.1万円 |
2,144万円 |
15.3% |
500万円 |
5.1万円 |
2,144万円 |
12.2% |
600万円 |
5.1万円 |
2,144万円 |
10.2% |
700万円 |
5.1万円 |
2,144万円 |
8.7% |
「フラット35」をはじめ、多くの金融機関が提供している住宅ローンの商品は、返済期間が最大35年です。
最大年数の住宅ローンを組んだ場合、年収300万円の方でも返済負担率はほぼ20%に収まります。さらに、年収700万円の人は、返済負担率が10%を下回っています。
このように、金利などの条件が一緒である場合、返済期間を伸ばせば伸ばすほどゆとりのある返済が可能になることがわかります。
2.2. 金利1.0%のときの月々の返済額と年収別の返済負担率・総返済額
次に、金利1.0%の場合の返済シミュレーションを紹介します。元利均等返済、ボーナス返済なしという場合でシミュレーションを行っています。
ちなみに、2022年12月時点で、5年ものの固定金利の平均は約1.0%です。
2.2.1. 返済期間15年
返済期間が15年の場合のシミュレーション結果は以下の通りです。
年収 |
毎月返済額 |
総返済額 |
返済負担率 |
300万円 |
12万円 |
2,155万円 |
48.0% |
400万円 |
12万円 |
2,155万円 |
36.0% |
500万円 |
12万円 |
2,155万円 |
28.8% |
600万円 |
12万円 |
2,155万円 |
24.0% |
700万円 |
12万円 |
2,155万円 |
20.6% |
返済期間が短いと月々の返済額が大きくなるため、年収500万円以上でないと返済負担率は30%を下回りません。
年収300万円の場合は返済負担率が50%近いため、審査に通過できません。
2.2.2. 返済期間25年
返済期間が25年の場合のシミュレーションは以下の通りです。
年収 |
毎月返済額 |
総返済額 |
返済負担率 |
300万円 |
7.5万円 |
2,261万円 |
30.0% |
400万円 |
7.5万円 |
2,261万円 |
22.5% |
500万円 |
7.5万円 |
2,261万円 |
18.0% |
600万円 |
7.5万円 |
2,261万円 |
15.0% |
700万円 |
7.5万円 |
2,261万円 |
12.8% |
返済期間が15年の場合と比べて、返済負担率がグッと低くなりました。年収が300万円の人でも返済負担率は30%なので、審査に通過できる可能性は十分にあります。
年収が400万円以上ある人は返済負担率が25%を下回っているので、かなり余裕のある返済ができます。
2.2.3. 返済期間30年
返済期間30年の場合のシミュレーションは以下の通りです。
年収 |
毎月返済額 |
総返済額 |
返済負担率 |
300万円 |
6.4万円 |
2,316万円 |
25.6% |
400万円 |
6.4万円 |
2,316万円 |
19.2% |
500万円 |
6.4万円 |
2,316万円 |
15.4% |
600万円 |
6.4万円 |
2,316万円 |
12.8% |
700万円 |
6.4万円 |
2,316万円 |
11.0% |
より返済負担率が下がり、ゆとりのある返済ができることがわかります。
年収300万円の人でも、返済負担率が約25%なので、ある程度の支出増や収入減というアクシデントにも対応できる水準です。
年収400万円以上の人に関しては返済負担率が20%未満なので、十分なゆとりがあるといえます。
2.2.4. 返済期間35年
返済期間を最大年数の35年に設定した場合のシミュレーションは、以下の通りです。
年収 |
毎月返済額 |
総返済額 |
返済負担率 |
300万円 |
5.6万円 |
2,371万円 |
22.4% |
400万円 |
5.6万円 |
2,371万円 |
16.8% |
500万円 |
5.6万円 |
2,371万円 |
13.4% |
600万円 |
5.6万円 |
2,371万円 |
11.2% |
700万円 |
5.6万円 |
2,371万円 |
9.6% |
最大年数の35年になると、年収300万円の人でも返済負担率が25%を下回ります。
とはいえ、金利が0.4%のときと比べると毎月返済額と総返済額が増えてしまっています。余裕がある場合は、繰り上げ返済の活用も検討するとよいでしょう。
2.3. 金利1.5%のときの月々の返済額と年収別の返済負担率・総返済額
次に、2022年の全期間固定金利の平均値に近い1.5%のケースでシミュレーションします。
先ほどと同じく、元利均等返済・ボーナス返済なしを想定しています。
2.3.1. 返済期間15年
返済期間15年の場合のシミュレーションは以下の通りです。
年収 |
毎月返済額 |
総返済額 |
返済負担率 |
300万円 |
12.4万円 |
2,235万円 |
49.6% |
400万円 |
12.4万円 |
2,235万円 |
37.2% |
500万円 |
12.4万円 |
2,235万円 |
29.8% |
600万円 |
12.4万円 |
2,235万円 |
24.8% |
700万円 |
12.4万円 |
2,235万円 |
21.3% |
返済期間が15年の場合は月々の返済も多額になり、返済負担率も高めです。
特に、年収300万円の人の場合は約50%にも及び、これでは審査を通過できません。しかし、後述するように、返済期間を延ばすことで返済負担率が下がり、ゆとりのある返済が可能になります。
2.3.2. 返済期間25年
返済期間が25年の場合のシミュレーションは以下の通りです。
年収 |
毎月返済額 |
総返済額 |
返済負担率 |
300万円 |
8万円 |
2,400万円 |
32.0% |
400万円 |
8万円 |
2,400万円 |
24.0% |
500万円 |
8万円 |
2,400万円 |
19.2% |
600万円 |
8万円 |
2,400万円 |
16.0% |
700万円 |
8万円 |
2,400万円 |
13.7% |
金利が1.5%の場合、返済期間を25年に伸ばしても、年収300万円の場合は返済負担率が32%と高くなります。
年収500万円以上になると返済負担が20%を下回ることから、長期的に安心して返済できるといえます。
2.3.3. 返済期間30年
返済期間が30年の場合のシミュレーションは以下の通りです。
年収 |
毎月返済額 |
総返済額 |
返済負担率 |
300万円 |
6.9万円 |
2,485万円 |
27.6% |
400万円 |
6.9万円 |
2,485万円 |
20.7% |
500万円 |
6.9万円 |
2,485万円 |
16.6% |
600万円 |
6.9万円 |
2,485万円 |
13.8% |
700万円 |
6.9万円 |
2,485万円 |
11.8% |
返済期間を30年にすると、年収300万円や400万円の人でもかなりゆとりを持った返済ができるようになります。
年収500万円以上の人は、頃合いを見て繰り上げ返済をしつつ、できるだけ早く完済を目指すこともできます。
2.3.4. 返済期間35年
返済期間を最大年数の35年とした場合のシミュレーションは、以下の通りです。
年収 |
毎月返済額 |
総返済額 |
返済負担率 |
300万円 |
6.1万円 |
2,572万円 |
24.4% |
400万円 |
6.1万円 |
2,572万円 |
18.3% |
500万円 |
6.1万円 |
2,572万円 |
14.6% |
600万円 |
6.1万円 |
2,572万円 |
12.2% |
700万円 |
6.1万円 |
2,572万円 |
10.5% |
35年という長期の返済期間を確保できれば、非常にゆとりのある返済が可能になります。
年収300万円の人でも返済負担率が25%を下回るため、返済途中で収入減に見舞われても、直ちに窮地に陥ることはないとみられます。
このように、同じ2,000万円を借り入れる場合でも、返済期間や金利によって負担感が大きく異なるので、事前にシミュレーションすることが大切です。
3. 住宅ローン2,000万円の返済がきついと感じる原因
当初は、「十分に返せる見込みがある」と踏んで2,000万円の住宅ローンを組んでも、返済途中できついと感じることもあります。
住宅ローンを借り入れたあとに、支出増・収入減という家計の変化が起きてしまった場合、一気に返済計画が頓挫してしまうこともありえます。
シミュレーションを行って「問題なく返済できる」と思っても、具体的に以下のような理由から家計の変化が起きると、返済がきつくなる可能性があります。
- 降格や勤務先の経営不振などによる収入減
- 物価上昇や子どもの成長に伴う支出増
- 自動車購入などのライフイベント
- 維持管理費用や固定資産税・都市計画税の予想外の高さ
- 親の介護費用の援助
- 変動金利の場合、住宅ローン金利の上昇
- 配偶者の退職による世帯収入の減少
- 自身の失業
このように、家計にダメージを与える可能性がある要因は非常に多いため、返済計画にはゆとりを持たせる必要があります。
「最悪のケース」を想定して、大幅な家計の変化にも対応できる健全な家計運営を心がけることが重要です。
4. 住宅ローン2,000万円の返済負担を抑えるポイント
2,000万円の住宅ローンを組んだあとに「返済が苦しい」と感じたら、できるだけ早い段階で下記のようなアクションを行い、対処することが重要です。
- 支出などの家計見直し
- 金融機関への相談
- 金利が低い金融機関での借り換え
まず、家計の見直しを行い、無駄な支出や満足度の低い支出を削ることで、生活が改善する可能性があります。
家計を見直しても返済のきつさが変わらない場合は、金融機関へ相談することをおすすめします。なぜなら、金融機関にはお金のプロやFPがいるため、相談を通じて問題解決の糸口が見つけられる可能性があるからです。
また、現在借り入れている金融機関よりも金利の低い金融機関があれば、借り換えを検討することをおすすめします。金利差が1.0%を超える場合は借り換えのメリットがあります。
金利が下がれば月々の返済額と総返済額が減るため、現在のローン返済をきついと感じている場合は、有効な手段になり得ます。
まとめ
2,000万円の住宅ローンを組んだ際の月々返済額や返済負担率等を、シミュレーションも交えながら解説しました。
具体的なシミュレーションをせずに2,000万円程度の住宅ローンを組むと、場合によっては返済をきついと感じる可能性があります。
本記事で紹介した具体的な返済例でイメージを持ち、返済負担を抑えるポイントを把握したうえで、計画的に返済できるようにする必要があります。