1. 住宅ローン4,000万円が組める年収の目安
住宅ローンを4,000万円借り入れる場合に必要となる年収の目安とはどのくらいなのでしょうか。4,000万円の元本と利息をきちんと返済できる年収の水準はどれくらいなのか、解説します。
1.1. 住宅ローン4,000万円を組める可能性があるのは年収500万円以上
住宅ローンを4,000万円借り入れることが可能なのは、年収500万円以上とされています。この金額は4,000万円の住宅ローンを組める最低水準としての年収の目安です。
実際に4,000万円の住宅ローンを組んで問題なく返済し続けることが可能かどうかは、借入人個人の状況に左右されますので、個別事情次第となります。
年収が500万円あって住宅ローンを4,000万円借りることができたとしても、返済するのが精一杯でゆとりのない生活を送ることになれば、借金を返済するだけの無味乾燥な生活が続くことになりかねません。
ゆとりを持って返済できる年収とはどのくらいなのでしょうか。
1.2. 余裕をもって返済できるのは世帯年収800万円前後から
一般的に、住宅ローンの適正な返済負担率は20%程度とされています。返済負担率とは、年収に対する年間の住宅ローン返済額の割合です。返済金額は借入期間が長期間になればなるほど少なくなるので、借りる金額が大きくても返済期間を長く設定すれば、返済負担率を抑制することが可能です。
住宅ローン(金利1.17%、借入期間35年)を4,000万円借り入れた場合の年間返済額は1,393,332円になります。返済負担率を20%とすると、年収は700万円ほどあれば問題ないということになります。
ゆとりを持って生活することを考えると、世帯年収で800万円ほど必要ということになります。
2.《金利・返済期間別》住宅ローン4,000万円の返済シミュレーション
住宅ローンの返済については、適用金利の水準や返済期間(借入期間)によって、毎月の返済額が変動します。そこで、金利や返済期間別の返済シミュレーションを紹介します。
2.1. 金利0.4%で借り入れたときの月々の返済額・年収別の返済負担率・総返済額
住宅ローン4,000万円を元利均等返済、金利0.4%で借り入れた場合の月々の返済額や返済負担率、総返済額について、具体的に試算(シミュレーション)します。
返済負担率の計算式は以下の通りです。
ちなみに、金利0.4%は2022年の変動金利の平均値に近い利率です。ただし、実際には変動金利の場合には金利が上昇する場合もあり得るので、シミュレーション通りになるとは限らないことに注意が必要です。
2.1.1. 返済期間15年
元利均等返済、返済期間を15年とします。
- 毎月の返済額:22万9,000円
- 返済総額:4,122万円
年収別の返済負担率は、下表の通りです。
■返済期間15年の年収別の返済負担率
年収 |
返済負担率 |
500万円 |
54.96% |
600万円 |
45.8% |
700万円 |
39.26% |
800万円 |
34.35% |
900万円 |
30.53% |
年収が900万円の場合でも返済負担率が30%を超えているので、ゆとりを持って返済するのは厳しいといえます。
2.1.2. 返済期間25年
元利均等返済、返済期間を25年とします。
- 毎月の返済額:14万1,000万円
- 返済総額:4,204万円
年収別の返済負担率は、下表の通りです。
■返済期間25年の年収別の返済負担率
年収 |
返済負担率 |
500万円 |
33.84% |
600万円 |
28.2% |
700万円 |
24.17% |
800万円 |
21.15% |
900万円 |
18.8% |
年収が900万円になると返済負担率が18.8%となり、ゆとりのある返済を続けていくことが可能だと考えられます。年収850万円の場合の返済負担率は、19.9%と20%を下回ります。年収850万以上あれば、ゆとりのある返済が可能になると考えられます。
2.1.3. 返済期間35年
元利均等返済、返済期間を35年とします。
- 毎月の返済額:10万3,000円
- 返済総額:4,288万円
年収別の返済負担率は下表の通りです。
■返済期間35年の年収別の返済負担率
年収 |
返済負担率 |
500万円 |
24.72% |
600万円 |
20.6% |
700万円 |
17.66% |
800万円 |
15.45% |
900万円 |
13.73% |
年収600万円で返済負担率が20.6%となります。返済期間35年で4,000万円の住宅ローンを借りる場合には、600万円程度の年収があれば、余裕を持って返済を続けていくことができると考えられます。
2.2. 金利1.0%で借り入れた場合の月々の返済額・年収別の返済負担率・総返済額
続いて、住宅ローン4,000万円を、元利均等返済、金利1.0%で借り入れた場合の月々の返済額、返済負担率、総返済額について具体的に試算(シミュレーション)をして以下に解説します。
金利0.4%の場合の説明でも触れましたが、変動金利で借り入れた場合には、金利の変動によって返済金額も変動してしまう点には注意しなければなりません。
2.2.1. 返済期間15年
元利均等返済、返済期間を15年とします。
- 毎月の返済額:24万円
- 返済総額:4,310万円
年収別の返済負担率は、下表の通りです。
■返済期間15年の年収別の返済負担率
年収 |
返済負担率 |
500万円 |
57.6% |
600万円 |
48% |
700万円 |
41.14% |
800万円 |
36% |
900万円 |
32% |
住宅ローンの適用金利が1.0%になると、年収900万円でも返済負担率は30%を超えているので、返済負担率は重いといわざるを得ません。借入元本のみならず、適用金利や返済期間といった条件も返済における重要なポイントといえます。
2.2.2. 返済期間25年
元利均等返済、返済期間を25年とします。
- 毎月の返済額:15万1,000円
- 返済総額:4,523万円
年収別の返済負担率は、下表の通りです。
■返済期間25年の年収別の返済負担率
年収 |
返済負担率 |
500万円 |
36.25% |
600万円 |
30.2% |
700万円 |
25.89% |
800万円 |
22.65% |
900万円 |
20.13% |
返済期間を25年にすると、年収900万円で返済負担率がほぼ20%になります。つまり、適用金利が1.0%に上昇したとしても、年収が900万円ほどあれば基本的にはゆとりがある返済を続けていくことが可能になると考えられます。
2.2.3. 返済期間35年
元利均等返済、返済期間を35年とします。
- 毎月の返済額:11万3,000円
- 返済総額:4,743万円
年収別の返済負担率は、下表の通りです。
■返済期間35年の年収別の返済負担率
年収 |
返済負担率 |
500万円 |
27.12% |
600万円 |
22.6% |
700万円 |
19.37% |
800万円 |
16.95% |
900万円 |
15.07% |
返済期間を35年にすると、年収700万円で返済負担率は20%を下回ります。住宅ローンの適用金利が1.0%になっても、返済期間が35年の場合には年収700万円あれば余裕のある返済を継続できると考えられます。
2.3. 金利1.5%で借り入れた場合の月々の返済額・年収別の返済負担率・総返済額
最後に、住宅ローン4,000万円を元利均等返済、金利1.5%で借り入れた場合の月々の返済額、返済負担率、総返済額について具体的に試算(シミュレーション)して以下に紹介します。
ちなみに、金利1.5%は2022年の固定金利の平均値に近い値です。
2.3.1. 返済期間15年
元利均等返済、返済期間を15年とします。
- 毎月の返済額:24万9,000円
- 返済総額:4,470万
年収別の返済負担率は、下表の通りです。
■返済期間15年の年収別の返済負担率
年収 |
返済負担率 |
500万円 |
59.76% |
600万円 |
49.8% |
700万円 |
42.69% |
800万円 |
37.35% |
900万円 |
33.2% |
住宅ローンの適用金利が1.5%になると、年収が900万円でも返済負担率が30%を超えます。余裕のある返済を続けていくためには、もっと多くの年収が必要です。年収が増えれば返済にも余裕が出てきますが、年収を増やす努力にも限度があります。
できるのはせいぜい、返済期間を長くすることで返済負担率を下げることくらいです。
2.3.2. 返済期間25年
元利均等返済、返済期間を25年とします。
- 毎月の返済額:16万円
- 返済総額:4,800万円
年収別の返済負担率は、下表の通りです。
■返済期間25年の年収別の返済負担率
年収 |
返済負担率 |
500万円 |
38.4% |
600万円 |
32% |
700万円 |
27.43% |
800万円 |
24% |
900万円 |
21.33% |
返済期間を25年にしても、年収900万円では返済負担率は20%を超えてしまいます。年収960万円で返済負担率がちょうど20%になるので、1,000万円近い年収がないとゆとりのある返済を続けていくことは困難です。
2.3.3. 返済期間35年
元利均等返済、返済期間を35年とします。
- 毎月の返済額:12万3,000円
- 返済総額:5,144万円
年収別の返済負担率は、下表の通りです。
■返済期間35年の年収別の返済負担率
年収 |
返済負担率 |
500万円 |
29.52% |
600万円 |
24.6% |
700万円 |
21.09% |
800万円 |
18.45% |
900万円 |
16.4% |
返済期間を35年とすると、年収750万円以上であれば、返済負担率が20%を下回り、余裕を持って返済することができるといえます。
3. 住宅ローン4,000万円を借りるのに年収が足りないときの対処法
住宅ローンを4,000万円借りるのに年収が不足している場合には、どのような対処方法があるのでしょうか。年収を増やせればよいのですが、簡単ではありません。そこで、それ以外にとりうる具体的な対処方法について以下に説明します。
3.1. 共働きの場合はペアローンや収入合算を検討する
夫婦で共働きしている場合や親子共に働いている場合には、親子ローンやペアローンの利用を検討する余地があります。
一人だけの年収では4,000万円の住宅ローンを借りる基準には達していない場合でも、世帯で合計すれば基準をクリアできる可能性があります。
ただし、一方が亡くなった場合や夫婦が離婚した場合等には、一人に返済の負担が集中してしまうことも考えられます。
特に、ペアローンを組んでいる夫婦が離婚する場合には、離婚の条件にペアローンの取り扱いも含めておくことが極めて重要です。
4. 住宅ローン4,000万円を無理なく返済するポイント
多額の年収を得ていれば、4,000万円の住宅ローンを返済することもそれほど困難ではありません。しかし、年収を増やすことは簡単ではありません。年収を増やすこと以外に、無理なく返済するポイントについて解説します。
4.1. できるだけ金利が低い金融機関を選択する
住宅ローンの適用金利が低い金融機関を選んで利用することが重要です。金利が低ければ利息の金額も低くなるので、返済負担率を抑えることもできます。
住宅ローンを利用する際には、複数の金融機関から情報を収集したうえで、返済負担が軽い条件の金融機関を選択することが大切です。
ただし、返済の際に振込手数料が発生したり、契約書のやり取り等にコストが生じたりする場合もあります。したがって、それらを含めたオールインコスト(総費用の金額)も勘案して比較することが必要です。
4.2. 状況に合わせて繰上返済や借り換えをする
当初の見込みよりも経済的に余裕ができた場合には、繰上返済をすれば、さらに負担を軽減できます。逆に、当初の見込みよりも返済が厳しくなった場合には、よりよい条件の住宅ローンに借り換えることで負担を軽くすることができます。
返済の状況に合わせて繰上返済や借り換えを上手に利用することで、無理のない返済をすることが可能になります。ただし、繰上返済の場合には手数料がかかる場合があるので、そうしたコストも見込んで利用を検討することが必要です。
4.3. 住宅ローン控除を活用する
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を活用すると、所得税の負担を減らすことができるメリットがあります。住宅ローンを利用して住宅を購入・建築した場合、13年間にわたり、所得税の額から、年末時点における借り入れ残高の0.7%分の控除を受けられます。
所得税から控除しきれなかった分については、住民税から控除されます。住宅ローン控除を利用すれば手取りが増えるので、返済にもよい影響を与えます。
まとめ
4,000万円の住宅ローンを借りるためには、最低でも500万円の年収が必要だといえます。ただし、余裕を持って返済するためには、800万円以上の年収が望ましいといえます。
また、返済負担は年収だけではなく、金利や返済期間などによっても大きく異なります。
返済負担を少しでも軽くするために、頭金の割合を高くしたり、繰上返済や借り換えを上手に利用したり、工夫することも重要です。