本記事では、3,000万円で住宅ローンを組む場合に求められる年収等の基準と目安、住宅ローン以外にかかる諸費用、金利ごとの返済総額、返済が大変になる原因、余裕をもって返済するためのポイント等を解説します。
3,000万円の住宅ローンを組める年収等の条件と余裕のある返済のためのポイント (※写真はイメージです/PIXTA)
1. 住宅ローン3,000万円で組める年収はどのくらいか?
1.1. 住宅ローンを組める最低年収は400万円前後
1.2. 無理なく返済したいなら世帯年収600万円以上が目安
2.《金利・返済期間別》住宅ローン3,000万円の返済シミュレーション
2.1. 金利0.4%での月々の返済額・年収別の返済負担率・総返済額
2.2. 金利1.0%での月々の返済額・年収別の返済負担率・総返済
2.3. 金利1.5%での月々の返済額・年収別の返済負担率・総返済額
3. 住宅ローン3,000万円の返済が予想外にきつい場合に考えられる5つの原因
3.1. 住宅を取得したことで発生する支出の増加
3.2. 減給や転職・退職等による世帯年収の減少
3.3. ライフステージの変化による支出の増加
3.4. 増税や物価上昇による支出の増加
3.5. 金利上昇による月々の返済額の増加
4. 余裕をもって住宅ローン3,000万円を返済するためのポイント
4.1. できるだけ金利が低い金融機関で借り入れる
4.2. 余裕のあるときに繰り上げ返済をする
4.3. 定年までに完済できる返済プランを立てる
4.4. 条件次第で借り換えも検討する
まとめ

1. 住宅ローン3,000万円で組める年収はどのくらいか?

住宅ローン3,000万円で組める年収はどのくらい?
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

3,000万円の住宅ローンを組むには年収がどれくらいあればよいのでしょうか。住宅ローンを組むために必要な年収について解説します。

 

1.1. 住宅ローンを組める最低年収は400万円前後

金融機関によって審査方法等が異なるため一概にはいえませんが、一般的に3,000万円のローンを組むために必要な年収は400万円前後だといわれています

 

住宅ローンの審査では、国土交通省の調査報告書によると94.6%の金融機関が「返済負担率」を審査項目にあげています。返済負担率とは、年収に対する返済額の割合を示したものであり、計算式は「年間返済額÷年収×100」です。

 

報告書によると、返済負担率が20%〜45%以内を基準としている金融機関がありますが、無理のない返済計画を立てるためには25%以内に抑えることが推奨されています。

 

たとえば、借入3,000万円、金利1.540%、35年ローンで契約した場合の年間返済額は約110万円です。前述の計算方法で返済負担率を確認すると、年収400万の場合は27.5%になります。したがって、返済負担率を25%以内に抑えるためには、年収440万円以上が必要となります。

 

3,000万円の住宅ローンの審査に通るには、年収400万円あれば大丈夫かもしれません。しかし、余裕のある返済計画を立てるためには、年収が450万円以上あれば安心ということになります。

 

1.2. 無理なく返済したいなら世帯年収600万円以上が目安

審査に通ったとしても、高額な住宅ローンを本当に返済し続けられるのかという問題があります。前述のとおり、返済負担率25%以内が推奨されていますが、住宅を購入したあとは、さまざまな費用がかかり続けます。

 

マンションを購入した場合は、管理費や積立修繕費、駐車場代が毎月数万円必要になります。戸建てを購入した場合も、数年後にかかる修繕費や外壁塗装費用等の準備が必要です。

 

また、住宅の種類にかかわらず、固定資産税が毎年かかります。

 

住宅取得後に負担するこれらの費用を考慮した場合、さらに余裕をもった返済計画を立てる必要性がでてきます。

 

年収450万円でもそれなりに余裕のある返済は可能ですが、毎月数万円の出費や修繕のための積立金を考えれば、世帯年収600万円以上あることがより望ましいといえます

2.《金利・返済期間別》住宅ローン3,000万円の返済シミュレーション

《金利・返済期間別》住宅ローン3,000万円の返済シミュレーション
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

3,000万円を返済する場合の金利ごとの返済額と年収別の返済負担率、返済総額を紹介します。

 

2.1. 金利0.4%での月々の返済額・年収別の返済負担率・総返済額

2022年の変動金利推移によると、市場最低水準の0.4%前後が平均的な変動金利です。はじめに、変動金利で組んだと仮定して、金利0.4%での月々の返済額、年収別の返済負担率、総返済額を紹介します。

 

2.1.1. 返済期間15年

金利0.4%、返済期間15年で設定した場合の年収ごとの返済負担率は下記のとおりです。

 

返済期間が短いと月々の返済額が多くなり、返済負担率が上がります。

 

 

月々の返済額

返済負担率

総返済額

年収300万円

17.2万円

68.8%

3,092万円

年収400万円

17.2万円

51.6%

3,092万円

年収500万円

17.2万円

41.3%

3,092万円

年収600万円

17.2万円

34.4%

3,092万円

年収700万円

17.2万円

29.5%

3,092万円

 

2.1.2. 返済期間25年

金利0.4%、返済期間25年で設定した場合の年収ごとの返済負担率は下記のとおりです。

 

年収600万円以上で、返済負担率が25%以下になります。

 

 

月々の返済額

返済負担率

総返済額

年収300万円

10.6万円

42.4%

3,153万円

年収400万円

10.6万円

31.8%

3,153万円

年収500万円

10.6万円

25.4%

3,153万円

年収600万円

10.6万円

21.2%

3,153万円

年収700万円

10.6万円

18.2%

3,153万円

 

2.1.3. 返済期間35年

金利0.4%、返済期間35年で設定した場合の年収ごとの返済負担率は下記のとおりです。

 

返済期間が長いと月々の返済額が少なくなり、返済負担率も下がります。

 

 

月々の返済額

返済負担率

総返済額

年収300万円

7.7万円

30.8%

3,216万円

年収400万円

7.7万円

23.1%

3,216万円

年収500万円

7.7万円

18.5%

3,216万円

年収600万円

7.7万円

15.4%

3,216万円

年収700万円

7.7万円

13.2%

3,216万円

 

2.2. 金利1.0%での月々の返済額・年収別の返済負担率・総返済

当初5年固定金利にした場合、2022年の金利推移によると約1.0%が平均値となります。そこで、金利1.0%で住宅ローンを契約した場合の月々の返済額、返済負担率、総返済額を年収別に紹介します。

 

2.2.1. 返済期間15年

金利1.0%、返済期間15年で設定した場合の年収ごとの返済負担率は下記のとおりです。

 

返済期間が短いと月々の返済額が多くなり、返済負担率が上がります。

 

 

月々の返済額

返済負担率

総返済額

年収300万円

18万円

72.0%

3,232万円

年収400万円

18万円

54.0%

3,232万円

年収500万円

18万円

43.2%

3,232万円

年収600万円

18万円

36.0%

3,232万円

年収700万円

18万円

30.9%

3,232万円

 

2.2.2. 返済期間25年

金利1.0%、返済期間25年で設定した場合の年収ごとの返済負担率は下記のとおりです。

 

年収600万円以上で、返済負担率が25%以下になります。

 

 

月々の返済額

返済負担率

総返済額

年収300万円

11.4万円

45.6%

3,392万円

年収400万円

11.4万円

34.2%

3,392万円

年収500万円

11.4万円

27.4%

3,392万円

年収600万円

11.4万円

22.8%

3,392万円

年収700万円

11.4万円

19.5%

3,392万円

 

2.2.3. 返済期間35年

金利1.0%、返済期間35年で設定した場合の年収ごとの返済負担率は下記のとおりです。

 

返済期間が長いと月々の返済額が少なくなり、返済負担率も下がります。

 

 

月々の返済額

返済負担率

総返済額

年収300万円

8.5万円

34.0%

3,557万円

年収400万円

8.5万円

25.5%

3,557万円

年収500万円

8.5万円

20.4%

3,557万円

年収600万円

8.5万円

17.0%

3,557万円

年収700万円

8.5万円

14.6%

3,557万円

 

2.3. 金利1.5%での月々の返済額・年収別の返済負担率・総返済額

固定金利を選択した場合、2022年の金利推移によると約1.5%が平均値となります。そこで、金利1.5%で住宅ローンを契約した場合の月々の返済額、返済負担率、総返済額を年収別に紹介します。

 

2.3.1. 返済期間15年

金利1.5%、返済期間15年で設定した場合の年収ごとの返済負担率は下記のとおりです。

 

返済期間が短いと月々の返済額が多くなり、返済負担率が上がります。

 

 

月々の返済額

返済負担率

総返済額

年収300万円

18.7 万円

74.8%

3,353万円

年収400万円

18.7 万円

56.1%

3,353万円

年収500万円

18.7 万円

44.9%

3,353万円

年収600万円

18.7 万円

37.4%

3,353万円

年収700万円

18.7 万円

32.1%

3,353万円

 

2.3.2. 返済期間25年

金利1.5%、返済期間25年で設定した場合の年収ごとの返済負担率は下記のとおりです。

 

年収600万円以上で、返済負担率が25%以下になります。

 

 

月々の返済額

返済負担率

総返済額

年収300万円

12万円

48.0%

3,600万円

年収400万円

12万円

36.0%

3,600万円

年収500万円

12万円

28.8%

3,600万円

年収600万円

12万円

24.0%

3,600万円

年収700万円

12万円

20.6%

3,600万円

 

2.3.3. 返済期間35年

金利1.5%、返済期間35年で設定した場合の年収ごとの返済負担率は下記のとおりです。

 

返済期間が長いと月々の返済額が少なくなり、返済負担率も下がります。

 

 

月々の返済額

返済負担率

総返済額

年収300万円

9.2 万円

36.8%

3,858万円

年収400万円

9.2 万円

27.6%

3,858万円

年収500万円

9.2 万円

22.1%

3,858万円

年収600万円

9.2 万円

18.4%

3,858万円

年収700万円

9.2 万円

15.8%

3,858万円

3. 住宅ローン3,000万円の返済が予想外にきつい場合に考えられる5つの原因

住宅ローン3,000万円の返済が予想外にきつい!考えられる5つの原因
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

住宅ローンを3,000万円で組むことは、決して簡単なことではありません。毎月の返済額は結構な金額になりますので、しっかりとした収入が必要です。実際には、契約したあとに住宅ローンの返済がきつくなる方も多くいます。ここからは、住宅ローンの返済が大変になってしまう原因を5つ紹介します。

 

3.1. 住宅を取得したことで発生する支出の増加

住宅を取得すると、下記のようなさまざまな費用が発生します

 

  • 住宅を維持、管理するためにかかる費用
  • 水道費、光熱費
  • 固定資産税、都市計画税
  • 介護保険料(40歳から給与天引きされる)
  • 火災保険料

 

マンションを購入した場合には、管理費と積立修繕費、駐車場代が毎月数万円ほどかかります。戸建ての場合も、維持・管理するためのさまざまな費用が発生します。

 

ローンの月々返済額だけで収支を判断すると、想像以上の支出に耐えられなくなる可能性があります。上記の諸費用も計算に入れ、余裕のある返済計画を立てる必要があります。

 

3.2. 減給や転職・退職等による世帯年収の減少

住宅ローンの契約時は審査が通っても、そのあとに転職や退職等の理由によって世帯年収が下がるケースも想定しなければなりません。

 

「自分は大丈夫」と過信すると危険です。家族の介護や突然の退職、妊娠出産による配偶者の退職や減給、リストラ等、将来なにが起こるかわかりません。返済計画を甘くみていると、万が一のことがあった場合に世帯年収の減少で返済が滞ることがあります。

 

そのようなことが起きないよう、返済負担率に余裕をもって住宅ローンを契約しましょう。

 

3.3. ライフステージの変化による支出の増加

ライフステージの変化による支出の変動にも注意が必要です。

 

子どもがいる家庭の場合、中学生以降に食費や教育費の比重が大きくなります。子どもの成長によって年間の子育て費用が変わっていくことを理解していないと、返済計画が失敗することがあります。

 

また、子どもが増えた場合はさらに出費が増えるため、返済計画と併せて家族計画も考えたほうがよいでしょう。子どもにかかる費用だけでなく、自分たちの加齢によって増える介護保険料や医療費も考慮する必要があります。

 

ローン申し込み時の家計だけで判断することは失敗の原因となるため、将来の家計を推測して余裕のある借入金額を設定することをおすすめします

 

3.4. 増税や物価上昇による支出の増加

なにかと起こりがちな増税や物価上昇も、返済計画が崩れる要因となり得ます。

 

消費税等の増税や物価上昇は、家庭の出費に大きな影響を与えます。収入は変わらないのに、出費ばかりが増えると、ローン返済にまわすお金が工面できなくなる可能性があります。

 

増税や物価上昇は個人では防ぎようのない問題です。対策をしておくという意味でも、返済計画に余裕をもたせておく必要があります。

 

3.5. 金利上昇による月々の返済額の増加

住宅ローンを申し込む場合、金利のタイプを「変動金利」「全期間固定金利」「固定期間選択型」から選ぶことになります。近年は「マイナス金利政策」がとられており、金利が最低水準なので、多くの方が「変動金利」を選択しています。

 

「全期間固定金利」を選んだ場合は、適用金利は高めになりますが、金利の変動による影響は受けません。しかし、「変動金利」や「固定期間選択型」を選んだ場合は、金利の変動による影響を受けます。

 

「変動金利」では、一般的に半年ごとに金利の見直しが行われます。ただし、月々返済額の見直しは5年ごとです。

 

金利が上昇した場合、5年ごとの見直しによって月々の返済額が増加することになります。

 

変動金利は、現状では低い金利が魅力的です。しかし、将来、金利が上昇した場合、返済額が増加する可能性があるということを心に留めておく必要があります。返済額の変動があっても返済が滞らないために、余裕をもって住宅ローンを組まなければならないということです。

4. 余裕をもって住宅ローン3,000万円を返済するためのポイント

余裕をもって住宅ローン3,000万円を返済するためのポイント
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

住宅ローン3,000万円を返済するにあたり、余裕のある無理のない返済をするためのポイントを4つ解説します

 

4.1. できるだけ金利が低い金融機関で借り入れる

前述した金利ごとの返済総額からわかるとおり、返済額は金利によって大きく変わります。たった0.5%の差が、総額で何十万円もの違いを生んでしまうのです。

 

そのため、金利を重視した金融機関選びが重要になってきます。

 

4.2. 余裕のあるときに繰り上げ返済をする

「繰り上げ返済」とは、月々の返済とは別で、元金の一部や全部をまとめて返済することをいいます。

 

繰り上げ返済には、返済期日を短縮する方法と返済期日は変えずに返済額を軽減する方法の2種類があります。返済期日を短縮する方法のほうが、将来の金利支払総額は少なくて済みます。

 

4.3. 定年までに完済できる返済プランを立てる

定年後は収入がなくなり、年金での生活がはじまります。年金生活が始まる前の定年までに完済できるように返済計画を立てるのが無難です。

 

稼ぎのある間に完済すれば、年金生活も余裕をもって過ごすことができます。

 

4.4. 条件次第で借り換えも検討する

契約時には疑問に思わなかった金利も、見直してみると他行よりも高いという場合があります。その場合は、借り換えを検討することをおすすめします。諸費用がかかるため、金利差が1%以上ならメリットがある可能性があります。あくまで概算ですので、金融機関に相談してみるべきです。

まとめ

本記事では、住宅ローンを3,000万円で組むことを検討する方のために、年収や金利別の返済総額、返済負担率、余裕のある返済計画を立てるためのポイント等を紹介しました。

 

3,000万円の住宅ローンを組むうえで留意すべきさまざまなポイントがあります。事前に確認し、余裕のある返済計画を立てる必要があります。