住宅を購入するとき、大半の方が住宅ローンを利用します。初めて利用する方にとって、どんなタイミングで手続きするのか、どんな書類が必要なのか、なかなか内容が理解しづらいものです。契約の流れとタイミングには、建物本体の打ち合わせや引き渡しのスケジュールと密接な関係があります。それぞれのタイミングでどのような手続きがあり、どのような書類が必要となるのか、解説します。
住宅ローン契約の流れ|必要書類、費用、所要時間等、融資実行までに必要なこと (※写真はイメージです/PIXTA)
1. 住宅ローン申し込みから本審査通過までの流れ
1.1. 仮審査申し込み/団体信用生命保険申し込み
1.2. 本審査申し込み
2. 住宅ローン本審査通過後の流れ
2.1. 住宅ローン契約の締結/司法書士面談
2.2. 住宅ローンの融資実行/抵当権設定登記
2.3. 確定申告/住宅ローン控除申請
3. 借り換え・注文住宅購入・中古住宅購入時における住宅ローンの流れのポイント
3.1. 住宅ローンを借り換える場合
3.2. 注文住宅購入で「つなぎ融資」を利用する場合
3.3. 中古住宅購入でリフォーム費用も借りる場合
4. 融資取り消しもあり得る!住宅ローン本審査通過後の3つのNG行為
4.1. 収入が減少するような転職・離職
4.2. ローンやリボ払いなどの新たな借り入れ
4.3. 延滞など信用情報に傷を付ける行為
5. 住宅ローン契約の流れに関するQ&A
5.1. 仮審査や本審査で銀行に行く必要があるか?
5.2. 住宅ローン融資までにかかる時間はどのくらいか?
5.3. 融資されたお金はどこに振り込まれるか?
まとめ

1. 住宅ローン申し込みから本審査通過までの流れ

住宅ローン申し込みから本審査通過までの流れ
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

住宅ローンの申し込みをするには、2つの審査が必要です。それぞれの審査によって、申し込みまでに決めなければならないことがあります。まずは、2つの審査のタイミングや必要書類について解説します。

 

一般的な住宅ローン手続きの流れの例
[図表1]一般的な住宅ローン手続きの流れの例

 

1.1. 仮審査申し込み/団体信用生命保険申し込み

1つ目の審査が「仮審査申し込み」です。なぜ「仮」とつくかというと、住宅ローンの申し込みを、対象となる土地建物の契約前に行うことがあるからです。希望する土地や建物がおおよそ固まった時点で、自分たちがそれに見合う金額を借入可能であるかを確認することができます。審査にかかる日数はおおよそ2、3日〜1週間程度です

 

もし、仮審査で減額での承認となったり、保証返済期間に関する条件付きでの承認となったりしても、土地建物の内容を見直すことや、資金計画を修正することも容易です。また、土地建物の契約においては、住宅ローン仮審査の承認が下りていることが条件となっているケースが大半です。

 

仮審査は簡易的な審査であるため、承認を得られたとしても、このあとの本審査での承認を約束するものではありません。

 

一般的に、仮審査申し込み時に必要となる書類は以下の通りです(インターネット上での申し込みの場合、書類が不要なこともあります)。

 

身分証明書

運転免許証やパスポートの写しなど

勤続年数の確認

健康保険証など

収入証明書

源泉徴収票や住民税課税証明書など

物件概要書(土地)

販売資料など

所在地・面積・価格の確認ができるもの

物件概要書(建物)

配置図・作成したプランの平面図

価格のわかる資金計画書など

 

1.2. 本審査申し込み

2つ目の審査が「本審査」です。土地建物の契約をし、借入金額が決定した時点で申し込みをします。このとき、土地や建物の詳細に関する資料、本人確認資料など、仮審査時よりさらに多くの書類が必要となり、詳細な審査が行われます。審査にかかる日数はおおよそ10日〜2週間程度です。団体信用生命保険も同時に申し込みを行います

 

新築請負契約の場合、本審査の承認がおりたあと、建物の工事を始めることが可能となります。

 

一般的に、本審査申し込み時に必要とされる書類は以下の通りです。

 

本人確認書類

運転免許証やパスポート・健康保険証

収入証明

源泉徴収票原本又は所得証明書

物件資料(土地)

売買契約書・重要事項説明書・公図・地積測量図・登記簿謄本

物件資料(建物)

工事請負契約書・見積書・建築確認済証(表紙と1~5面)配置案内図・平面図・立面図

2. 住宅ローン本審査通過後の流れ

住宅ローン本審査通過後の流れ
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

次に、建物の引き渡しまでに必要な手続きについて説明します。住宅ローン契約の締結や抵当権の設定(担保設定)が必要です。専門用語も多くなり理解しづらい点がでてくるので、わかりやすく説明します。

 

2.1. 住宅ローン契約の締結/司法書士面談

本審査を通過したあと、建物引渡日の2週間〜1週間ほど前になったら、金融機関と「金銭消費貸借契約」(通称:金消契約)を結びます

 

消費貸借とは、民法587条で、下記のように定められています。

 

「消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる」

 

金銭消費貸借契約についていえば、「同じ金額を返す約束をして、相手からお金を受け取る」ということです。

 

融資実行日(借入日)・借入金額・借入期間・借入金利・毎月の返済日・返済用口座等を確認し、書類記入と捺印を行います。所要時間はおよそ1時間です。また、金消契約と同時に抵当権設定契約を結びます。その際、担当司法書士との面談と、委任状や印鑑証明の提出を行います。

 

一般的に、当日必要とされる持ち物は下記の通りです(当日の所要時間や確認事項を削減するため、提出可能なものは事前に提出する場合もあります)。

 

  1. 返済用口座の通帳・銀行印
  2. 実印・印鑑証明
  3. 住民票
  4. 収入印紙
  5. 火災保険申込書(控)と保険料振り込みの領収書
  6. 事務手数料・ローン保証料

 

2.2. 住宅ローンの融資実行/抵当権設定登記

ここまでの手続きを経て、いよいよ、住宅ローンの融資実行、土地建物の引き渡しとなります。融資実行とは、契約者の銀行口座に融資金が振り込まれることです。実行された融資金は、契約者の口座へ入金され、そこから不動産会社などへ振り込みを行います

 

住宅ローンの融資実行に合わせて、さまざまな手続きが必要です。

 

これらは、想定外の事態が起きて、万が一支払いが困難となっても、住宅ローン契約者と家族の生活を守るために決められています。

 

① 抵当権を設定する

抵当権とは、契約者に使用できる権利を残したまま、貸主が不動産へ設定する担保のことです。何らかの事情でローンの支払いが困難になった場合、金融機関は土地と建物を競売にかけ債権を回収します。

 

② 火災保険の開始日はローンの実行日と合わせる

万が一、火災によって建物が消失してしまったとき、金融機関としては担保がなくなってしまいます。そのため、ほとんどの金融機関が、返済期間中の火災保険への加入を融資の条件としています。

 

③ 団体信用生命保険を開始する

団体信用生命保険は、住宅ローンの債務者の死亡、あるいはケガ・病気によって返済が滞った場合、残債を返済する住宅ローン専用の生命保険です。現在は死亡保障だけではなく、ガン、心筋梗塞、脳卒中のいわゆる三大疾病や就業不能状態と診断されると住宅ローン残高がゼロとなるタイプも用意されています。

 

立ち合い決済を行う場合は、契約者本人、売主、仲介業者、司法書士が集まって、登記手続きの段取りや振込手続きを一度に行います。

 

2.3. 確定申告/住宅ローン控除申請

住宅ローンを利用する場合、確定申告で住宅ローン控除の申請を行うと、ローン残高に応じて、所得税や住民税が減税されます。

 

引き渡しが2022年以降の場合、年末の住宅ローン残高の0.7%分の金額が所得税と住民税から控除されます。1年目は確定申告し、2年目〜13年目は年末調整の際に申告を行います。

 

住宅を新築等した場合の借入限度額・控除期間等
[図表2]住宅を新築等した場合の借入限度額・控除期間等国税庁HP「タックスアンサー(住宅借入金等特別控除)」より

 

住宅ローン控除を受けるための条件は下記のとおりです。

 

  1. 借り入れ期間が10年以上であること
  2. 新築した日から6ヵ月以内に住み始めること
  3. 住宅ローン控除の適用をうける年は、年末まで住み続けていること
  4. 借入先の金融機関が、銀行、信用金庫、労働金庫、勤務先、公務員共済などであること

 

上記の条件に当てはまる住宅ローンを借り入れした翌年2月16日~3月15日の間に、確実に税務署への確定申告を行う必要があります

 

確定申告に必要な書類は下記の通りです。

 

  1. (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  2. 金融機関から送付される年末残高証明書
  3. 土地・建物の登記簿謄本
  4. 工事請負契約書・土地売買契約書

 

3. 借り換え・注文住宅購入・中古住宅購入時における住宅ローンの流れのポイント

借り換え・注文住宅購入・中古住宅購入時における住宅ローンの流れのポイント
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

ここまで、新築住宅に関する住宅ローンの流れについて説明してきましたが、個別の状況によって覚えておいたほうがお得なポイントや、理解しづらいポイントについて補足説明します。

 

3.1. 住宅ローンを借り換える場合

住宅ローンの借り入れ金利には、大きく3つのタイプがあります。

 

  1. 変動金利:短期プライムレートに連動して年に2回金利が変わるタイプ
  2. 全期間固定金利:金消契約で締結した金利が借入期間ずっと続くタイプ
  3. 固定期間選択型金利:選択した数年間のみ一定の金利で、固定期間終了後は変動金利へ移行するタイプ(3年固定、5年固定、10年固定など)

※ 短期プライムレート:金融機関が信用度の高い最優良企業に対する1年間以内の短期貸し付け金利

 

住宅ローン利用者のうち、変動金利と固定期間選択型を選ぶ方が全体の90%を超えています。変動金利を選択したけれど、これからの金利上昇に不安を感じたときや、契約した固定期間が終了し変動金利に移行するときは、他の金融機関への借り換えを検討するタイミングとなります。

 

ここでの注意点は、諸費用がかかることです。

 

  • 新しい借り入れに必要な費用:事務手数料、保証料、抵当権設定費用、印紙代
  • 元の借り入れの完済に必要な費用:繰り上げ手数料、抵当権抹消費用

※ 保証料はローンの残期間に応じて返金

 

一般的には1%以上金利が下がる場合は、借り換えの恩恵を受けられるケースが多いです。ただし、本当にメリットがあるか、細かな計算が必要です。

 

3.2. 注文住宅購入で「つなぎ融資」を利用する場合

注文住宅の場合、契約時、着工時、上棟時、引き渡し時と建物の施工進捗に合わせて工事費用の支払いを行います。住宅ローンが実行されるのは建物完成後となるので、自己資金でこれらの支払いが難しい場合、「つなぎ融資」を利用します。

 

つなぎ融資とは、融資金額の一部を、一時的に立て替えるための融資で、住宅ローンの実行資金から返済されます。土地を同時購入する場合も、着工前に土地代金全額の支払いが必要なので、つなぎ融資を利用します。住宅ローンに比べて借り入れ期間が短いとはいえ、金利は割高になります。自己資金をどこへ充てるかを考えるときには、できる限りつなぎ融資を使わずにすませるように考慮する必要があります。

 

3.3. 中古住宅購入でリフォーム費用も借りる場合

中古住宅を購入し、リフォームする場合の住宅ローンについて説明します。住宅ローンを使って建物を購入し、リフォームローンを使ってその建物の改装を行うイメージをお持ちの方も多いでしょう。しかし、中古住宅購入時に同時にリフォームする場合のみに使える「リフォーム一体型住宅ローン」があります

 

ローン手続きも一度ですみ、返済期間も住宅ローンと同様に長期で組めるメリットがあります。ただし、以下の3点に注意が必要です。

 

① 築年数が古い中古住宅を購入した場合、工事を始めてから手直し箇所が発覚して工事代金が追加になる可能性があります。構造材が見積もり時以上に劣化していたケースだと、100万円単位で追加工事費がかかる可能性もあります。

 

② 中古住宅契約前に、リフォーム内容や見積もり額を決定し、ローン申し込みをする必要があることです。人気エリア物件の場合、リフォームの打ち合わせをしているうちに、ほかに買い手がついてしまうことも考えられます。

 

③ 本審査の前に、住宅の契約だけでなく、リフォームの契約も完了している必要があります。

4. 融資取り消しもあり得る!住宅ローン本審査通過後の3つのNG行為

融資取り消しもあり得る!住宅ローン本審査通過後の3つのNG行為
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

住宅ローンの本審査の承認を得て、工事に着手したあとでも油断は禁物です。本審査通過後に融資取り消しとなるのは、どんなケースが考えられるのか。突然の融資取り消しに焦らないために、注意すべきポイントについて解説します。

 

4.1. 収入が減少するような転職・離職

金融機関では、住宅ローン期間中に滞りなく返済可能かを職種、勤務先、勤務年数、年収などから見極めて、融資を決定しています。本審査の承認時には問題ない属性と判断されていたとしても、その後、勤務先が変わっている場合や収入が下がる転職、無職となっていた場合は審査をやり直す必要があるため、本審査の承認は取り消されます。

 

4.2. ローンやリボ払いなどの新たな借り入れ

金融機関では、家族構成やクレジットローン、リボ払いの状況と年収を見て、年間いくらまでなら返済可能かという返済負担率を見極めています。本審査時には問題なかったとしても、新しく月々支払わなければならない借り入れが増えていると、融資金額の減額や承認取り消しとなることもあります。

 

4.3. 延滞など信用情報に傷を付ける行為

金融機関では、毎月間違いなく支払いがされるかを確認するため、これまでのクレジットカードやそのほかのローンの支払い状況や借り入れの信用情報を確認しています。本審査から実行までのあいだに、ほかのローンなどで支払いの延滞があった場合、承認取り消しとなることもあります

5. 住宅ローン契約の流れに関するQ&A

住宅ローン契約の流れに関するQ&A
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

最後に、住宅ローン契約の流れのなかで、気になることが多いと考えられる点について解説します。

 

5.1. 仮審査や本審査で銀行に行く必要があるか?

仮審査はWEB上で完結できる銀行も多くあります。また、本審査は郵送でのやりとりが可能な金融機関もありますが、銀行窓口で行うケースが多いです。金融機関でもオンラインサービスや非対面のシステムが増加していますので、今後は銀行に行かずに手続き可能なケースが増えていくでしょう。

 

5.2. 住宅ローン融資までにかかる時間はどのくらいか?

住宅ローン融資までにかかる時間は、段階ごとに以下の通りです。

 

  • 仮申し込み~仮審査承認:2、3日~1週間程度
  • 本申し込み~本審査承認:10日~2週間程度
  • 金消契約~融資実行:1週間前後

 

まとめると、仮申し込みから住宅ローン実行までは最短で1ヵ月~1ヵ月半程度です。

 

仮審査承認は建物の契約前に、本審査承認は建物の着工前に完了していなければなりません。建築会社等と日程のすり合わせを細かく行うことを推奨します。

 

5.3. 融資されたお金はどこに振り込まれるか?

申し込みした契約者本人の銀行口座へ入金され、そこから建築会社などへ振り込みを行います。一般的には、事前に建築会社へ振込依頼用紙を提出し、入金と同時に建築業者の支払いへ払い出すよう準備を進めます。

 

また、代理受領という融資金を建築会社などへ直接入金するシステムも増えています。

まとめ

住宅ローン流れまとめ
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

一般的な住宅ローン契約の流れと、注意点について解説しました。

 

3つの書類手続き、それぞれの必要書類や注意点、提出するタイミングや審査承認までの日数等、本記事で解説したことを頭に入れた上で、スケジュールの管理や住宅ローン商品の選択に役立ててください。