すべての金融機関ではありませんが、「連帯債務型」の住宅ローンを取り扱っている金融機関があります。収入を合算するため借入額が多くなるメリットがありますが、連帯債務者も審査に通過しなければならない、事後に借り換え等を行えない可能性があるなどの注意点があります。本記事では、連帯債務型の住宅ローンについて、活用メリットと注意すべき点を整理してお伝えします。
住宅ローンの連帯債務型とは? 活用のメリットと押さえるべき6つの注意点 (※写真はイメージです/PIXTA)

住宅ローンで複数人がかかわる契約形態には、「連帯保証型」や「ペアローン」のほか、「連帯債務型」のものがあります。

 

「連帯債務型」は、契約者(主債務者)と「連帯債務者」が同等の返済の責任を負う一方で、借入額が大きくなり購入できる物件の選択肢が広がるメリットが期待できます。

 

連帯債務型の住宅ローンには、メリットだけでなく注意点もありますので、特徴を踏まえたうえで「自分たちに合っているか」確認することが大切です。

1.「連帯債務型」の住宅ローンとは?仕組み・他のローンとの違い
1.1. 収入合算ができる「連帯債務型」の住宅ローンの仕組み
1.2. 連帯保証型の住宅ローン、ペアローンとは何が違う?
2. 連帯債務型の住宅ローンを組む3つのメリット
2.1. 単独名義と比べて借入可能額が多くなる
2.2. 連帯債務者各人が住宅ローン控除を受けられる
2.3. ペアローンと比べて諸費用の負担を抑えられる
3. 連帯債務型の住宅ローンを組む6つの注意点
3.1. 連帯債務者も審査の対象になる
3.2. 「団信」に主債務者1人しか加入できないことも
3.3. 借り換えがしづらい可能性がある
3.4. 贈与税が課されることがある
3.5. 連帯債務者の転職・退職などで減収となっても返済の免除はない
3.6. 離婚したら双方に返済義務が残る
5. 住宅ローンの連帯債務を返済途中で外す方法
5.1. 単独債務に借り換える
5.2. 別の連帯債務者を設定する
5.3. 物件を売却して残債を清算する
6. 単独債務をあとから連帯債務に変更する方法
7. 連帯債務型の住宅ローンを取り扱う銀行の例
7.1. フラット35
7.2. 三井住友銀行
7.3. 楽天銀行
7.4. 千葉銀行
まとめ

1.「連帯債務型」の住宅ローンとは?仕組み・他のローンとの違い

「連帯債務型」の住宅ローンとは?仕組み・他のローンとの違い
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

連帯債務型の住宅ローンの仕組み、他のローンとの違いについて解説します。

 

1.1. 収入合算ができる「連帯債務型」の住宅ローンの仕組み

連帯債務型の住宅ローンとは、「主債務者」と「連帯債務者」が同等の返済義務を負うものです。利用されているのは、親子や夫婦で互いに収入があるケースです。

 

たとえば、自分の年収だけでは希望の借り入れができない場合に、配偶者の収入を合算して夫婦ともに連帯債務者となることで、希望額を融資してもらうというケースです。

 

1.2. 連帯保証型の住宅ローン、ペアローンとは何が違う?

連帯債務・ペアローン・連帯保証の違い
[図表1]連帯債務・ペアローン・連帯保証の違い

 

連帯債務型の住宅ローンとよく似た仕組みに、「連帯保証型の住宅ローン」と「ペアローン」があります。

 

連帯債務型の場合

連帯債務者は「常に」返済義務を負う

連帯保証型の場合

保証人は「主たる債務者が返済できなくなったとき」のみ返済義務を負う

 

つまり、連帯債務者と連帯保証人では「返済責任の重さ」に差があります。また連帯保証人は団体信用生命保険に加入できず、住宅ローン控除を受けられないという点でも違いがあります

 

ペアローンは「1つの物件に対して、2人でローンを組む」ことを指します。夫婦でペアローンを組んだ場合、夫婦それぞれが自身の住宅ローン契約に則って返済を行うことになります。

 

ペアローンは各契約者が独立しているため、それぞれが団体信用生命保険に加入でき、それぞれが住宅ローン控除を受けることが可能です。所有権も持分に応じて取得することができます。

2. 連帯債務型の住宅ローンを組む3つのメリット

連帯債務型の住宅ローンを組む3つのメリット
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

連帯債務型の住宅ローンには、以下の3つのメリットがあります。

 

2.1. 単独名義と比べて借入可能額が多くなる

連帯債務型の住宅ローンを組む場合は、契約者(主債務者)本人の収入に加えて連帯債務者の収入も含めて審査されます。そのため、単独名義の場合よりも借り入れ可能額が多くなり、購入できる家の選択肢も増えます

 

家族の希望に沿った物件を購入できる点は、大きなメリットといえます。

 

2.2. 連帯債務者各人が住宅ローン控除を受けられる

主債務者と連帯債務者のそれぞれが住宅ローン控除を受けることができます。

 

住宅ローン控除とは、最長13年間に渡って年末の借入残高の0.7%が所得税から税額控除される仕組みで、サラリーマンが利用できるメリットが大きい税制優遇制度です。控除対象となる金額は「住宅の所有権登記の持分割合」と「返済負担割合」で決まります。

 

たとえば、所有権の持分割合が各2分の1、住宅ローンの負担割合も各2分の1ずつの場合、住宅ローンの年末残高が4,000万円であれば、両者が14万円の税額控除を受けられます。

 

このように、住宅ローン控除が2人分利用できるため、大きな税制優遇の効果を得られる点は、連帯債務型の大きなメリットです。したがって、多くの共働き世帯で利用されています。

 

2.3. ペアローンと比べて諸費用の負担を抑えられる

「2人分の住宅ローン控除を受けられる」という点に関しては、ペアローンも共通しています。

 

しかし、ペアローンは「1つの物件に対して2つのローン契約を締結する」ことになるため、金融機関などに支払う事務手数料や印紙税などの費用も2人分かかってしまいます

 

しかし、連帯債務型の場合は「契約は1つ」なので、手数料や印紙税も1人分で済みます。

 

このように、ペアローンと比べて諸費用の負担を抑えられる点も魅力といえます。

3. 連帯債務型の住宅ローンを組む6つの注意点

連帯債務型の住宅ローンを組む2つのデメリット
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

連帯債務型の住宅ローンの6つの注意点を解説します。

 

3.1. 連帯債務者も審査の対象になる

連帯債務型の住宅ローンでは、連帯債務者の信用情報も審査されます。

 

連帯債務者は実質的に主たる債務者と同じ返済義務を負うため、審査対象となるのは当然のことです。

 

したがって、もし連帯債務者が過去にクレジットカードの支払遅延などの金融事故を起こしている場合、審査に影響が出る可能性が高くなります。

 

主契約者の信用情報に問題はなくても、連帯債務者の信用情報に問題がある場合は要注意です。

 

3.2. 「団信」に主債務者1人しか加入できないことも

金融機関によって取り扱いは異なるものの、連帯債務型の住宅ローンは「1つの契約」なので、基本的に団体信用生命保険に入れるのは主債務者だけです。フラット35だと、夫婦の場合に限って、2人とも団信に加入することが認められていますます。

 

団体信用生命保険に加入している側に万が一のことが起きると、借り入れの残債は0円になりますが、加入していない側に万が一のことが起きても返済は変わりません。

 

「2人分の収入ありき」で締結することが多いため、もし団体信用生命保険に加入していない側に万が一のことが起きると、返済計画が狂う可能性があります

 

3.3. 借り換えがしづらい可能性がある

連帯債務型の住宅ローンは、もともと2人分の収入をベースにして審査しています。

 

そのため、借り換え時に「片方が退職している」など、収入に変化が生じている場合は借り換えの審査に通らない可能性があります

 

金融機関によって取り扱いは異なるものの、「借り換えが思い通りに進まない可能性がある」点には留意する必要があります。

 

3.4. 贈与税が課されることがある

場合によっては「贈与税」が課されるケースがあるため、注意が必要です。

 

3.4.1. 片方が相手の分を肩代わりして返済した場合

「年間110万円を超える贈与」を行った場合、受贈者(贈与を受けた人)は贈与税を支払う必要があります。

 

たとえば、下記のようなケースでは「110万円を超える贈与があった」とみなされることがあるため、要注意です。

 

  • 連帯債務から単独債務に変更する場合
  • 連帯債務者が負担すべき債務を繰り上げ返済した場合
  • 契約者・連帯債務者以外がローン返済をした場合

 

「本来負担すべき債務を返済してもらった」ことは贈与に該当するため、住宅ローンと贈与税の関係は押さえておく必要があります。

 

3.4.2. 住宅ローンの負担割合と物件の持分割合が異なる場合

住宅ローンの負担割合と物件の持分割合が異なる場合、贈与税が発生する可能性があるので注意が必要です。

 

たとえば、夫婦が折半で家を購入した場合は、2分の1ずつ共有持分を持つことになります

 

しかし、「夫の持分を4分の3、妻の持ち分を4分の1」にした場合、家の購入金額の4分の1相当が「妻から夫への贈与」とみなされます

 

基本的に、「所有権は出資した金額の比例する」ため、住宅ローンの負担割合と物件の持分割合が異なる場合は贈与税に注意が必要です。

 

連帯債務型の住宅ローンは、返済負担に応じて所有権が伴うため、贈与税を見落とさないようにしてください。

 

3.4.3. 単独ローンに借り換える場合

連帯債務型の住宅ローンから単独での借り入れに借り換える場合も、贈与税が発生する可能性があります。

 

借り換えに伴って、一方の住宅ローン残債の返済が免除されることから、「贈与した」とみなされるためです。

 

たとえば、共働きの夫妻が連帯債務で受託ローンを組んだものの、妻の退職に伴って単独ローンに借り換える場合、「妻の残債を夫が一括返済した」形になります。

 

妻の残債が贈与税の基礎控除額である110万円を超えると、贈与税が発生するため注意してください。

 

3.5. 連帯債務者の転職・退職などで減収となっても返済の免除はない

連帯債務者の転職や退職などで減収となった場合でも、返済が免除されるわけではありません。

 

もし「契約時の収入ありき」で連帯債務者としての立場を引き受けた場合は、特に注意が必要といえます。

 

将来の状況の変化を見越して返済額を設定し、計画的に貯蓄を行うなどして余裕を持った返済計画を立てることが大切です。

 

3.6. 離婚したら双方に返済義務が残る

もし離婚することになっても、連帯債務者各自の返済義務は残ります。

 

借り入れの残債が存続する限り、お互いに返済義務は継続されるため、離婚しても返済は続きます

 

離婚する場合は、片方が家に残り、もう片方が家を出るケースが多いため、「家に残る側」が連帯債務者の持分を引き受けるのが一般的です。

 

そのため、連帯債務者には現金を渡して調整するなど、離婚時には多くの手間が発生することを押さえておかなければなりません。

5. 住宅ローンの連帯債務を返済途中で外す方法

住宅ローンの連帯債務を返済途中で外す方法はある?
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

連帯債務型の住宅ローンで借り入れを行ったあとに、連帯債務を途中で外すことができる方法について、解説します。

 

5.1. 単独債務に借り換える

連帯債務から単独債務に借り換えることで、連帯債務を外すことができます

 

しかし、新たに借り換える際には、改めて審査に通過する必要があるため、審査に通過しなければ単独債務への変更はできません。

 

金融機関からすると、単独債務にすることで「返済できないリスクが高まる」という点を危惧します。十分な収入がなければ単独債務に切り替えることは困難です。

 

金融機関と相談しながら、単独債務への切り替えが可能か検討してみてください。

 

5.2. 別の連帯債務者を設定する

別の連帯債務者を設定できれば、連帯債務者から外すことができます。

 

なお、連帯債務者は配偶者に限られるわけではなく、親族などの信頼に足りる人がいて、当事者と金融機関が了承すれば変更できます。

 

当然、新しい連帯債務者の返済能力や収入などの信用情報を審査されるため、金融機関に確認することが重要です。

 

金融機関によって取り扱いが異なる点にも注意が必要です。

 

たとえば、楽天銀行のホームページには、以下の記載があります。

 

「連帯債務者を外して、借り換えることはできません。また、債務者、連帯債務者を別の債務者、連帯債務者に変更することもできません。」

 

この場合は、連帯債務者を設定することはできません。

 

5.3. 物件を売却して残債を清算する

住宅ローンを組んでいる家を売却することで完済できれば、そもそも債務がなくなります。そのため、完済できれば連帯債務から外すことができます

 

しかし、もし売却代金が借り入れの残債を下回る(オーバーローン)と、残債は金融機関と相談したうえで返済の計画を立てることになります。

 

この場合、残債を完済するまでは連帯債務者としての責任は継続し、返済義務は継続することになります。

6. 単独債務をあとから連帯債務に変更する方法

単独債務をあとから連帯債務に変更できる?
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

金融機関によって差があるものの、住宅ローンの借り換えを行う際に、連帯債務に変更することが可能です。

 

たとえば、住宅金融支援機構のホームページには、「フラット35」でについて以下の記載があります。

 

「連帯債務者を追加することはできますが、【フラット35】の債務者(連帯債務者を含みます。)の人数は2名まで」

 

また、楽天銀行でも下記のような取り扱いをしています。

 

「連帯債務者を追加したうえで、お借り換えいただけます。収入合算をすることも可能です。」

 

金融機関によっては、単独債務の借り入れ契約後に連帯債務への変更ができないこともあるため、事前に確認することが重要です。

7. 連帯債務型の住宅ローンを取り扱う銀行の例

連帯債務型の住宅ローンを取り扱う銀行の一例
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

最後に、連帯債務型の住宅ローンを取り扱っている銀行の例を紹介します。各金融機関の違いを意識しながら、どのような商品を取り扱っているのか参考にしてください。

 

7.1. フラット35

フラット35は、住宅金融支援機構が提供している35年住宅ローンです。

 

下記の条件を満たしている場合は収入合算が可能です。実際に多くの方が連帯債務で借りています。

 

  • 申込みご本人の親、子、配偶者など
  • 申込時の年齢が70歳未満の方
  • 申込みご本人と同居される方
  • 連帯債務者となる方(1名のみ)

 

原則として、団体信用生命保険に加入できるのは住宅ローンの契約者(主債務者)のみですが、前述のように、「夫婦で連帯債務者になる場合」は、夫婦が2人とも団体信用生命保険に加入できます。

 

7.2. 三井住友銀行

三井住友銀行では、「クロスサポート」という連帯債務型の住宅ローンを取り扱っています。

 

二人とも団体信用生命保険に加入でき、夫婦間だけでなく「親子」「法律婚」「事実婚」「同性パートナー」の場合も利用できます。

 

さまざまな生活スタイルに対応しているので、多くの方が利用できる可能性がある点が魅力です。

 

7.3. 楽天銀行

楽天銀行の連帯債務型の住宅ローンは、年収が「申込人と連帯債務者合算で400万円以上」あれば利用できる可能性があります。

 

なお、連帯債務者になれるのは配偶者に限られていますが、主債務者と連帯債務者の両方が団体信用生命保険に加入可能です。

 

主債務者と連帯債務者が「死亡」「高度障害状態」「余命6ヵ月以内の宣告を受けた」「就業不能状態が1年を超えて継続した」場合は残債が0円になり、また所定のガンと診断された場合も残債が「50%」となります。

 

上記のがん保障特約が付いても団体信用生命保険の保険料は0円なので、ガンに備えたいという方におすすめです。

 

7.4. 千葉銀行

千葉銀行の「連帯債務住宅ローン」は、下記の要件をクリアした際に利用できます。

 

  • 借入時の年齢が満18歳以上満70歳未満(連生がん団信利用の場合は満51歳未満)で、最終ご返済時の年齢が満80歳未満
  • 安定継続した収入がある
  • ちばぎん保証株式会社の保証を受けられる
  • 「連生団信」または「連生がん団信」に加入できる
  • 戸籍上の夫婦の方、事実婚の関係にあるおふたり、または親族同士

 

上記のように、夫婦間だけでなくさまざまな同居形態において利用できることがわかります。

 

主債務者と連帯債務者がどちらも団体信用生命保険に加入できるため、一方に万が一の事態が起きても安心です。

まとめ

連帯債務型の住宅ローンの特徴や、メリット・注意点について解説しました。

 

連帯債務型の住宅ローンには、単独名義の場合よりも借入可能額が多くなり、主たる債務者と連帯債務者の双方が住宅ローン控除を受けられるなどのメリットがあります。

 

一方で、後で借り換えがしづらくなる可能性があるなど、主に事後の事情変更があった場合に注意しなければならない点もあります。

 

連帯債務型の住宅ローンに興味がある方は、本記事を参考にしながら、自身にとって適切なローンか判断してください。