国税庁は富裕層の節税対策に注目している
最近の急激な「円安・インフレ」で、円安・インフレ時代に有効な資産防衛術について聞かれることが増えました。
私がまず申し上げたいのは、「いまが円安・インフレである」と決めつけてしまうことの危険性です。この流れが続くという前提に立っていることが、大丈夫なのかを考える必要があります。
歴史的に見ると、実はその流れの逆に向かったほうがよかったということが少なくありません。いまの2022年12月時点で、過去2年くらいと比較して円安・インフレになったというだけのことで、先行きは誰にもわかりません。一時、円ドル相場は1ドル200円を超えると予想する専門家もいましたが、現在は130円台後半です。
富裕層と機関投資家の違いは、機関投資家はロスカットや時価評価を毎回しなければいけない点です。そのため、短期性商品や流動性の高い商品しか買えません。それに対し、富裕層はロングで考えられることです。富裕層は流動性をあまり気にしなくてもよく、30年の長期間の投資もできます。投資に正解はありませんが、ポイントは、富裕層は円ドル相場などに一喜一憂することはほとんどないということです。
2022年4月19日、いわゆる「タワマン裁判」で、最高裁で国税側の勝訴が確定となりました。被相続人が他界する3年前に購入したタワーマンションを、路線価方式で財産評価し、相続人が0円で相続税申告したことに対し、国税庁が実勢価格と大幅に乖離があるとして、追徴課税を課したことを不服とし、相続人が裁判を起こしたものです。一審、二審ともに国税側が勝訴していました。
私の考えでは、この相続人はやり過ぎたと思います。やり過ぎと、そうではない分岐点は答えがありませんが、常識と照らし合わせてということになります。
私は、経済合理性のない投資行動、節税だけが目的の投資には否定的です。よくあるケースとして、病気で医師から余命宣告を受けた直後に、贈与前に節税目的で銀行から借入して小口化不動産を購入し、1~3カ月後に贈与するというのは経済合理性がない。そういう動きは国税庁の目に付きやすいと思います。
ですから、やはり長期でプランニングすることです。先ほども述べましたが、富裕層のいいのは時間をロングタームで考えられる点です。タワマン投資も10年くらい前に購入し、計画的に暦年贈与すれば、基本的に問題は起きないと思います。節税も同じように考えることが重要です。いざとなった時に、1回で節税しようと投資するのは経済合理性を欠きます。