【落とし穴①】修繕積立金・共益費・駐車場代の負担が大きい
タワマン入居者が家計破綻する原因として、よく挙げられるのが家賃以外の修繕積立金や共益費、駐車場代の負担が大きいことです。
入居する際は、これらの固定費と家賃の合計金額で月々の収支を計算しますが、住んでいるうちに修繕積立金が見直される場合があります。家計が苦しい状況で固定費が上昇すると、生活が成り立たなくなってしまうのです。
国土交通省の平成30年度マンション総合調査によると、修繕積立金が計画に比べて不足しているマンションが34.8%あるとされています。このことから、マンションを運営していくために修繕積立金の見直される可能性が十分にあることがわかります。
また、駐車場代が2〜3万円と一般の月極駐車場より高く設定されているタワマンも少なくありません。ライフステージが変わることで自動車を購入したときには、駐車場代が家計を圧迫することも考えられるでしょう。
ほかにも、タワマンに住むことで「電気代」が高くなることを想定していなかったという声もあります。タワマンの高層階に入居すると、開けられる窓はほとんどありません。その状態では室内を換気できないので、クーラーや空気清浄機を使って室内環境を整えることになります。また、ベランダに洗濯物を干すことができない部屋では、乾燥機や除湿機が欠かせない存在になるので、電気代が高くなりやすい傾向があります。
【落とし穴②】出産・子育て・転職などで収入が減少した
タワマンの入居者のなかには、世帯年収1,000万円台のパワーカップルがペアローンを組んでいる場合があります。ペアローンとは、一つの物件に対して夫婦それぞれが住宅ローンを組む方法です。
夫婦生活を続けていくと、出産や子育て、転職といったライフイベントがあります。これらのライフイベントを迎えていくなかで、収入が大幅に減ってしまうことも少なくありません。タワマンに入居したときの収入であれば、問題なく返済ができていたとしても、収入が減ると返済が滞ってしまう場合があります。
このような状況にならないためには、今後のライフプランを考慮したうえでタワマンに入居することが大切です。
【落とし穴③】見栄を張るのにお金がかかる
タワマンで生活が苦しくなる人が、最も見落としがちなのが「見栄を張るためのお金」です。簡単にいうと、外出するときの衣服や靴、自動車などにかかるお金のことです。
販売価格と家賃が高いタワマンの入居者は、一般的な世帯より収入が高く、生活レベルも高くなりやすい傾向があります。そのため、高級ブランドを身につけている人が多く、それを一種のステータスとしていることも少なくありません。
たとえば寒さを凌ぐダウンジャケットは、1着5千円〜1万円で十分暖かい商品が売られています。しかし、タワマンの入居者のなかには、1着30万円を超える高級ダウンジャケットを着ている人もいます。普段から交流がなく、エレベーター内でしか顔を合わせないような関係であっても、身に着けているダウンジャケットの価格でマウントを取り合う“ダウンマウント”が繰り広げられていることもあります。
こういったマウントの取り合いは大人だけではなく、子どもが身につける衣服や靴まで影響しているケースも少なくありません。大人であれば数年使えるものが、成長期の子どもだと数ヵ月で買い替えることになります。そういった見栄の積み重ねで、多くの出費をしなければならないこともあるでしょう。
タワマン生活を始めるなら、まずは「賃貸」がおすすめ
ここまでタワマンに入居したときのデメリットばかり紹介しましたが、タワマンに住むことで得られるメリットも多くあります。
タワマンは眺望が優れているだけでなく、タワマンに住んでいるというステータス感が味わえます。また、共用部の掃除や虫の駆除が徹底されていたり、隣室の音が聞こえにくかったりするグレードの高いタワマンを選べば、より満足度の高い生活が送れるでしょう。
ただ、高価格帯のタワマンに入居すると、家計が苦しくなったり、退去しなければならなくなったりする可能性があるので注意が必要です。住宅ローンを組んでタワマンを購入すると、後戻りするのが難しくなってしまうので、まずは賃貸物件を選ぶのがおすすめです。
どのような生活が送れるのか、支出がどれほど増加するのかを体感できるので、入居してから後悔するリスクを抑えられます。特にダウンマウントのような外から見えにくい支出は、家計を圧迫する大きな原因となるので注意しましょう。
私はこれまでに3区画のタワマンに居住してきましたが、どの物件にも満足しています。タワマンの“落とし穴”にハマれば生活が苦しくなってしまう可能性もありますが、どのような支出があるのかを押さえておけば充実した生活が送れます。メリットとデメリットを理解したうえで、タワマンライフを楽しみましょう。
芦田ジェームズ敏之氏
税理士法人ネイチャー 代表税理士