先日、東京都労働委員会によって、フードデリバリーといった「ギグワーカー」を労働者と認める法的判断が初めてされました。今後、ギグワーカーの働き方や待遇に影響を与えるかもと期待されていますが、まずはどのような環境下で働いているのか、みていきましょう。
平均年齢44歳・手取り23万円も「報酬が安すぎる」…いますぐ辞めたい「フードデリバリー」の悲鳴 (※写真はイメージです/PIXTA)

労働者ではない「フードデリバリー」…働き方や待遇、改善なるか?

東京都労働委員会は、宅配代行サービス「ウーバーイーツ」の運営会社などに対し、配達員らの労働組合と団体交渉に応じるよう命令をしました。コロナ禍に急増した単発・短時間の仕事を請け負う「ギグワーカー」を労働組合法上の労働者と認める初めての判断であり、今後のギグワーカーの働き方や待遇に影響を与える可能性があるとして注目を集めています。

 

そもそも労働者の定義は、労働基準法と労働組合法で少々内容が異なります。

 

労働基準法での労働者の定義は以下のとおりです。

 

労働基準法9条

職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という)に使用される者で、賃金を支払われる者

 

一方、労働組合法の労働者の定義は以下のとおりです。

 

労働組合法3条

職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者

 

このように労働組合法上の労働者とは、労働基準法上の労働者の範囲をやや広げた概念となっています。

 

ウーバーイーツをはじめ、フードデリバリーの多くは「プラットフォーム型労働」という労働形態で、インターネット上のプラットフォーマーを介して仕事を請け負うカタチ。就業時間は決まっておらず、配達員は働きたいときにスマホのアプリを起動し仕事の依頼を受ける……自分の都合に合わせて働くことができるため、組織に縛られない「自由な働き方」として、また「会社員の副業」の受け皿としても注目を集めていました。

 

労働基準法では依頼主との間にどれだけ使用従属関係があるか、どれだけ自律性の高い働き方をしているかが、労働基準法適用の判断とされます。その点、プラットフォーム型労働は勤務時間は決まっておらず、好きな時に働けるので「労働者ではない」と判断されるでしょう。一方で、働き方には一定の使用従属性が認められるなど、微妙な関係でもあります。現状のプラットフォーム型労働は個人事業主として扱われ、労働法の保護対象とならず、また社会保険も適用されません。

 

個人事業主として働くプラットフォーム型労働に対して「労災保険の対象外。事故の損害をすべて負わなければならない」「雇用保険に入れない」「一方的に契約内容を変更されることがある」「解雇規制がない」「最低賃金法が適用されない」などといったデメリットがいわれてきたのです。