認知症=高齢者というイメージが強いですが、若年性認知症の有病者は全国に3万5,000人と、決して他人事ではありません。もし、一家を支える大黒柱が認知症と診断されたら……みていきましょう。
平均給与月51万円だが…50代・働き盛りの会社員がまさかの「認知症」、途方に暮れて (※写真はイメージです/PIXTA)

認知症でも「障害者手帳」を申請できる

厚生労働省の調査では、要介護者を介護している人は同居人が54.4%。そして最も多いのが「同居する配偶者」で全体の23.8%。続く「同居する子ども」が20.7%、「別居する家族等」」が13.6%、「介護事業者」12.1%と続きます。認知症だけに限定すると、その割合は異なる可能性もありますが、もし家族が認知症になったら、その妻、または夫が介護をするケースが多いといえるでしょう。

 

もし妻が、もし夫が、認知症と診断されたら……きっと大きなショックを受け、途方に暮れてしまうかもしれません。特に働き盛りで家族を支える人が若年性認知症になった場合、その不安は計り知れないでしょう。

 

たとえば、第1子が大学生くらいの年齢となり、教育費に住宅ローンにと、一番支出が増える40代後半から50代前半にかけて。大卒サラリーマン(正社員)の平均給与は、40代後半で月45.5万円、年収は推定740.8万円、50代前半で月50.9万円、年収は推定841万円。支出が多い一方、会社人として収入もピークになるころです。東京都『若年性認知症の生活実態に関する調査』(平成31年3月)によると、若年性認知症と診断された人のうち、発症前と同じ職場で働いている人は1人もおらず、7割近くが「退職」の道を歩んでいます。

 

一家の大黒柱が認知症と診断されたら、収入減は確実。そんな現状に、とても「安心してください」と気軽にいえるものではありませんが、認知症に関しては、さまざまな支援サービスがあり、それらを利用することで経済的な不安を軽減できます。

 

意外と知られていないのが「障害者手帳」。認知症で「障害?」と思うかもしれませんが、認知症は記憶障害などの症状により精神障害に位置づけられ、また身体障害を併発する場合もあり、「精神障害者保健福祉手帳」や「身体障害者手帳」を取得することができるのです。

 

基本的に申請できるのは、医療機関で認知症の診断を受けてから定期通院を続け、6ヵ月経過したあと。また障害者手帳は症状の重い順に1級、2級……と分けられ、等級によって受けられるサービスも異なります。

 

障害者手帳により受けられるサービスのひとつが「公共料金の割引」。「鉄道やバス、タクシーなどの交通機関」「博物館や動物園など公共施設の入場料」「NHK受信料」「携帯電話基本料金」などです。また「税の一部控除」も。「所得税や住民税」「相続税や贈与税」「自動車税や自動車取得税」など。さらに「公営・市営住宅」に優先的に入居できたり、福祉手当が受給できたりという場合も。

 

障害者手帳の取得自体にはデメリットはありませんが、「障害者」というワードには、若い人ほど抵抗感をもつ人もいます。本人と家族の生活をサポートするものなので、一度申請を検討する価値はあるでしょう。