「出産・初期の子育て」に偏重する政府のアプローチ
しかし、政府の少子化に対するアプローチには、サポートが出産と初期の子育てのみに偏重しているという問題があります。
すなわち、わが国では長らく経済が停滞し、子育て世代の所得が伸びないにもかかわらず、教育費は高騰の一途をたどっています。
文部科学省「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査」の結果によれば、私立大学の授業料は、2001年(平成13年)には平均799,973円/年だったのが、2021年(令和3年)には平均930,943円/年となっています。
学費が割安な国公立大学に通う学生は、経済的に恵まれた富裕層の子女が大きな割合を占めるという実態もあります。
さらに、消費が落ち込むだけでなく、「老後2,000万円問題」をはじめとする老後資金への不安、相次ぐ消費税増税や、昨今の物価高・円安で、生活不安は頂点に達しています。
特に、今まさに子育てが本番を迎えつつある「就職氷河期世代」が直撃を受けることが予想されます。
しかも、「児童手当」について所得制限を設けていることも問題です。
本来、児童手当は子育て支援を目的とした制度であり、この目的は、所得の大小に関係なくすべての世帯に向けられたものであるはずです。出産・初期の子育てをサポートするための「出産育児一時金」「出産準備金」に所得制限が設けられていないことに鑑みれば、児童手当について所得制限を設けていることは、平仄が合わないというべきです。
なお、低所得世帯のための制度としては、学用品等の購入費用を援助する「就学援助」等が設けられているので、そのことからしても、児童手当についての所得制限は撤廃されるべきであるといえます。
少子化対策として、個人事業主・フリーランスのための給付の制度を手厚くする政策自体は、働き方の多様化という実情の下、公平の見地から、早急に行われるべきであるといえます。ただし、政府が昨今打ち出している子育て支援策の内容をみると、出産・初期の子育てに偏重しているといわざるをえません。子育て世代の将来にわたる不安に寄り添い、課題を的確にとらえ、有効性のある政策を行わない限り、少子化対策の効果が限定的なものになってしまう、あるいは、不発に終わってしまうことが懸念されます。
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