(※画像はイメージです/PIXTA)

2022年11月19日、政府が、個人事業主やフリーランス、非正規労働者のため、出産後の一定期間、現金給付を行う制度の新設について検討を始めたことが明らかになりました。少子化対策の一つと位置付けられますが、なお問題は山積しています。政府が検討している施策の内容・意義と、政府のアプローチの問題点について解説します。

現行の制度はどうなっているか

サラリーマン等については、雇用保険に基づき、産前・産後の休業を取得したときに給与の3分の2の額を受け取れる「出産手当金」と、給与の育児休業を取得したときに同じく給与の3分の2の額を受け取れる「育児休業給付金」があります。

 

非正規雇用の労働者の育児休業給付金については、子が1歳6か月になるまでに労働契約の期間が満了することが明らかでなければ、受け取ることができます。

 

しかし、それ以外の非正規雇用の労働者、個人事業主・フリーランスについては、「出産手当金」「育児休業給付金」のような制度がなく、現状では「出産育児一時金」のみが対象となります。

 

なお、出産育児一時金は現行では42万円ですが、2023年から47万円へと増額されます。また、それに加え、同じく2023年から合計10万円の「出産準備金(またはクーポン)」も支給されることになっています。

政府が検討している給付の内容

今回、政府が検討している案の内容は、子が1歳~2歳になるまでの間、一律に月2万~3万円の給付を行うというものであるとされています。

 

雇用保険制度に基づく「出産手当金」「育児休業給付金」のような制度がない個人事業主・フリーランス等について、サラリーマン等が受けられる給付の制度との差を多少なりとも埋めるものといえ、少子化対策の一環として位置づけられます。

 

なお、折しも、2022年11月16日に、厚生労働省が、国民健康保険の加入者である個人事業主・フリーランス等の女性を対象として、産前・産後4ヵ月間の保険料を2024年から免除する方針を固めたばかりです。これも、サラリーマン等が加入する健康保険で産前・産後と育児休業取得中の保険料が免除されていることと平仄を合わせようとするものといえます。

 

財源については検討課題ですが、なんとしてでも捻出することが求められているといえます。

 

実際、サラリーマン等が加入する雇用保険には、労働者と雇用主が保険料を半分ずつ負担しているほか、国費も投入されています。そのことを考慮すれば、個人事業主・フリーランスのために国費を一定程度投入することは、サラリーマン等との公平の観点から、当然のことといえます。

 

日本の社会保障制度全般の根源的な問題として、終身雇用の下で正社員として働くケースを中心に想定され組み立てられてきているということが挙げられます。したがって、従来、個人事業主・フリーランスについては自助・自己責任が強く求められる傾向がありました。しかし、今日では働き方が多様化し、従来の典型的なモデルケースを想定した設計では無理が生じるようになってきているといえます。

 

そして、今回の政府のアプローチは、遅きに失している面はあるものの、上述した現状に鑑み、従来の方向性に一定の修正を加えるものと評価できます。

 

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