相次ぐ物価高のニュースに、年金が収入のすべてという高齢者の生活が厳しいものになっています。なかには、まだ家族を養わなければならない……という人も。そこでありがたいのが「加給年金」ですが、ルール変更で思わぬ事態に陥るケースも。みていきましょう。
月19万円もらえるはずが…65歳・元会社員「加給年金」ルール変更を知らず「年金減額の危機」 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金受給額がプラスとなる「加給年金」だったが…

さらに「加給年金」を手にする人も。これは厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人が、65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、その人に生計を維持されている配偶者または子がいるときに加算されるものです。

 

【加給年金の対象者、年齢制限と加給年金額】

◆配偶者:65歳未満(大正15年4月1日以前に生まれた配偶者には年齢制限はなし)

加給年金額:223,800円

※老齢厚生年金を受けている方の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額に33,100円から165,100円が特別加算される

 

◆子ども:18歳到達年度の末日までの間の子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子

加給年金額:「1人目・2人目」各223,800円、「3人目以降の子」各74,600円

 

出所:厚生労働省

 

たとえば、元会社員の65歳男性、65歳未満の妻と18歳未満の子どもが1人いるとします。65歳・厚生年金受給者の平均年金受取額は月14万5,337円。そこに配偶者と子どもの加給年金(特別加算含む)がプラスされ、月換算19万6,000円ほどを手にすることになります。まだまだ家族を養う必要がある、という高齢者にはかなりありがたい制度だといえるでしょう。

 

ただ今年4月、年金制度の改正により、配偶者の老齢厚生年金*1や退職共済年金*2を実際に受け取っていなくても、在職により支給停止となっているなど、受け取る権利がある場合は、配偶者加給年金額は支給停止されることになりました。この物価高のなか「あれ、年金が少ない……」という危機に直面することになった高齢者がいたというわけです。

 

*1:被保険者期間が20年以上または共済組合等の加入期間を除いた期間が40歳(女性の場合は35歳)以降15年から19年以上の場合に限る

*2:組合員期間20年以上

 

ただし、「2022年3月時点で本人の老齢厚生年金または障害厚生年金に加給年金が支給されている」場合や、「2022年3月時点で、加給年金額の対象者である配偶者が、厚生年金保険の被保険者期間が240ヵ月以上ある老齢厚生年金等の受給権を有しており、全額が支給停止されている」場合は、経過措置が設けられているので、実質、これから加給年金を手にするはずだった人に影響があるものと考えられます。

 

世界でもこれほどの高齢化を経験した国はなく、これからも「想定以上に財政が厳しい→年金制度見直し」という事態は起こりうるでしょう。それに伴い「もらえると思っていた年金がもらえない」ということは十分に考えられますし、今回の物価高のように「年金額の目減り」ということもあるでしょう。結局は、年金に左右されない老後の準備が必須、といえそうです。