給与からの手引き額、30年でいくら増えた?
名目賃金はあがっているものの、実質賃金は下がっている……この状況に対して、専門家の意見はさまざまですが、実質賃金の落ち込みが続けば家計の購買力は落ち込み、景気回復が遠のくというのが大方の見方。一方、賃金を上げることに対して硬直的な日本企業。実質賃金はマイナスとはいえ、名目賃金が上昇傾向にあることに希望が持てる、という声も。
ただ私たち日本人の「実質的な手取り」は減り続けていて、よほどの給与アップがない限りはその傾向は変わらない、といわれています。
どういうことかといえば、給与の上昇額以上に給与からの天引き額は増えているということ。給与から天引きされるのは、所得税に住民税、健康保険料、年金保険料、雇用保険料、40歳以上なら介護保険料。そのうち健康保険料は、10年前の2012年は現在と同様10.00%。20年前の2002年は8.50%、さらに30年前の1992年は8.40%でした(協会けんぽの場合)。さらに介護保険は2000年0.60%でスタートしましたが、2021年度は1.80%と最高に。2022年度は1.64%に落ち着いたものの、制度導入時よりも大きく負担は増えています。
この30年、家計に大きな影響を与えるような法改正は何度もありました。
●2000年:介護保険制度スタート
●2003年:賞与からも社会保険料徴収
●2004年:配偶者特別控除の上乗せ部分廃止
●2004~2017年:厚生年金保険料の段階的引き上げ
●2006年:1999年からの定率減税廃止による、所得税・住民税アップ
●2011年:中学生以下の子どもの扶養控除廃止、高校生の子どもの扶養控除縮小
厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、日本人の月々の平均給与(所定内給与)は30万7,400円。手取りにすると25万8,000円ほど。賞与は月給与の平均2.85倍で年収は推定489万3,100円となります。
およそ500万円として考えた場合、手取り額は独身で390万円ほど。いまから10年ほど前の2012年は392万円、20年前の2002年なら414万円。1994年から特別減税があったので、30年前の1992年になると手取り額は少し減って409万円ほどとなります。
簡易的な計算ではありますが、年収は500万円と同じでも、手取り額は20万~30万円ほど手取りは減っていることになります。思わず目を疑う事実ですが、少子高齢化で社会負担が大きくなる一方の現状、仕方がないことといえるでしょう。
今後も手取り額の減少は必至。この現状を嘆くか、それとも負担率上昇以上に給与アップを目指すか。選択肢は2つだけです。