「日本人の給与は30年間上がっていない」と聞いてきたけど、どうも最近は上がっているらしい……そんな噂を耳にします。それにも関わらず、値上げに次ぐ値上げで、私たちの暮らしは厳しくなるばかり。日本人が「本当に手にしている給与」について考えていきます。
同じ年収500万円だが…日本のサラリーマン、30年前の衝撃の「手取り額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

給与額は増えているのに、生活はラクにならない不思議

サラリーマンの給与が上がっている……ある意味、衝撃的なニュースを昨今、耳にする機会が増えました。先日、厚生労働省が発表した9月の『毎月勤労調査』(従業員5人以上)によると、1人当たりの給与(現金給与額)は速報値で27万5,787円。前年同月比2.1%増でした。

 

業界別にみていくと、最も伸びが大きいのが「飲食サービス業」で前年同月比9.0%増。「学術研究」6.2%増、「運輸業、郵便業」5.7%増、「金融、保険業」4.3%増と続きます。一方で16業種で唯一前年同月比マイナスになったのは「建設業」で1.8%減。所定外労働給与含む「きまって支給する給与」は1.4%増だったのに対し、「特別に支払われた給与」が52.4%減となり、全体の給与に影響を与えました。

 

また雇用形態ごとにみていくと、一般労働者が35万7,039円と前年同月比2.4%増、パートタイム労働者が9万9,939円と前年同月比3.4%増。全体的にコロナ禍からの回復を決定づける結果となりました。

 

過去最高益を記録、という景気のいい話も聞こえてきますし、「とうとう、失われた30年は終わりか!?」と思った人もいるかもしれません。

 

ただ残念なことに、物価変動を考慮した「実質賃金」では前年同月比1.3%のマイナス。物価上昇の伸びに対して給与の伸びが追いついていない状況。値上げ、値上げの連続でどうも生活が苦しい……その理由は、実質的に給与があがっていないから、他なりません。

 

【名目賃金指数と実質賃金指数】

2018年101.6(1.4 )/102.1(0.2 )

2019年101.2(▲0.4)/101.2(▲1.0)

2020年100.0(▲1.2)/100.0(▲1.2)

2021年100.3(0.3 )/100.6(0.6 )

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2022年1月86.3(1.1 )/86.0(0.5 )

2022年2月84.5(1.2 )/83.8(0.0 )

2022年3月90.7(2.0 )/89.5(0.6 )

2022年4月88.7(1.3 )/87.1(▲1.7)

2022年5月87.0(1.0 )/85.2(▲1.8)

2022年6月141.9(2.0 )/139.0(▲0.6)

2022年7月118.1(1.3 )/115.0(▲1.8)

2022年8月87.8(1.7 )/85.1(▲1.7)

2022年9月(速報)86.6(2.1 )/83.6(▲1.3)

 

出所:厚生厚労省『毎月勤労調査』より作成

※数値は従業員5人以上事業所を対象としてもの。左より名目賃金指数、実質賃金指数、(かっこ)内は前年同月比