コロナ禍によるリモートワークの拡大などにより、都会から地方へという人口移動がありましたが、移動制限がなくなったいま、どのようになっているのでしょうか。ニッセイ基礎研究所の天野馨南子氏が解説します
東京一極集中、ほぼ完全復活(1)…2022年1~9月「住民基本台帳」転入超過人口都道府県ランキング (写真はイメージです/PIXTA)

エリア人口力は女性の労働市場が握る

2022年1月から9月における東京都の年齢階層別の女性転出入超過人口(社会増減)は以下の通りである(図表2)

 

【図表2】2022年1月~9月 東京都における女性人口の社会増減(人)

 

表からも一目で分かるように、東京都への圧倒的な人口集中は20歳から24歳までの女性がメインとなって生み出されている。また、2位の15歳から19歳にあたる専門学校・大学への進学については、地方部ではいまだに勘違いがあるように感じるが、ライフデザインの変化により女性も生涯就業することへの意識が高まるなかでの高等教育機関への進学であり、令和時代の若い女性にとって、もはや大学や専門学校への進学は「ママの教養向上のための花嫁学校」などではないことを忘れてはならない。

 

17位から19位は東京都から社会減している女性の年齢ゾーンのメインであるが、30歳代の女性と乳幼女児である。地方創生における女性誘致でメインに上がることが多い「子育て期のママとその子どもの地方誘致」*2の対象となっている層であるものの、このような対策では、とても地元から失った独身女性人口を補えないことも併せて確認しておきたい。

 

筆者が(公財)東北活性化研究センターと実施した調査では、進学先の大学がどこにあっても、自分たちが望む仕事に就くことができるのか、というのが彼女たちのライフデザインにとっての主たる決定要因であった。

 

女性活躍推進は「女性への配慮」などではない。エリアの存続をかけた、人口戦略の要であることを、人口動態を研究する立場から何度でも訴えたい。

 

*2:これまでの地方創生政策において、女性人口の誘致、特にその仕事に主眼を置いた誘致策はほとんど見られなかった。地方の社会減のメインとなっている女性人口を誘致するための施策としては「子育て世帯誘致」がほとんどの地方において謳われている。しかしこれでは最も人口流出の激しい20代前半の独身女性の就職による大きな人口減を食い止めることはできない。