(※写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナに感染して休業しても、勤務先の制度や給付金を受給することで、働けなかった分の収入を補うことができます。利用できるのは主に会社員ですが、一部には、パートやアルバイト、自営業者等の方々が使える制度もあります。万一働けない時期が生じても困ることのないように、コロナ休業時の「補償」についてあらかじめ押さえておきましょう。社会保険労務士・森島大吾氏が解説します。

民間生命保険会社で「入院給付金」の見直しが進む

2022年7月以降、新型コロナウイルス感染者が連日過去最多を更新しました。最近では、感染者数も落ち着き小康状態となってはいるものの、冬に向けて感染拡大が危惧されています。一方、日本においてもウィズコロナに向けた対応が進み、感染拡大期にあっても日常生活の継続ができる体制が整いつつあります。

 

民間生命保険会社では、2022年7月以降の第7波で保険金の支払件数が大幅に増加したことなどから、入院給付の見直しを行っています。これまで軽症で自宅療養中のコロナ陽性者を「みなし入院」として入院給付金を支給していましたが、9月26日以降に感染が分かった場合において、対象者を65歳以上などに制限する措置を開始しています。

 

今後は、完全な収束を期待せず、日常生活とコロナの共生を考えていく上で、新型コロナ感染で仕事を休んだ場合の補償について知っておく必要があるでしょう。

「会社員」が新型コロナ感染で会社を休んだ場合

■第一の選択肢は「会社の休暇制度」

新型コロナ感染で仕事を休んだ場合にまず考えたいのが、年次有給休暇や会社が独自に設けている休暇制度です。年次有給休暇は、入社日から6ヵ月以上勤務した場合に10日間程度付与され、それから1年後ごとに最大20日付与されます。原則労働者が自由に取得することができます。

 

一方、会社が独自に設けている休暇制度として、特別休暇、病気休暇などがあります。ワクチン接種後の特別休暇やコロナ特別休暇を定めた会社もあり、会社独自の制度として有給としている場合があります。このような休暇については就業規則に規定されているケースが大半ですので、就業規則を見たり、労務担当者へ聞いてみたりすることで確認できます。

 

■コロナ陰性や未検査でも、発熱等があれば受給できる「傷病手当金」

次に、健康保険に加入している会社員については、新型コロナ感染で仕事を休んだ場合には「傷病手当金」を受給することができます。たとえば、年次有給休暇の残日数がない、あるいは少ないケースでは休業分について給与が支給されないことがあります。このように休業によって給与が支給されないケースでは、傷病手当金を活用して給与の補填をしてもらいましょう。なお、傷病手当金は、新型コロナウイルスの陽性者だけでなく、検査結果が陰性または検査未実施で、発熱等の症状がある方も受給できます。

 

受給できる金額は、おおよそ月額給与を30日で割った日額(標準報酬日額ともいいます)の2/3です。注意点もあります。症状が出始めて休んだ最初の3日間を除き4日目から支給されるということです。症状が出始めた初診日と翌日以降7日間、計8日間会社を休んだ場合、最初の3日を除く5日間について傷病手当金を受給することができます。なお、この5日間に公休日があったとしても傷病手当金は支給されます。

 

傷病手当金の申請は、原則、会社が行うことになります。なお、傷病手当金を受給するためには申請書に医師の証明が必要ですが、医療機関の負担軽減の観点から、臨時的に省略して申請が可能となっています。申請にあたっては、いつから発熱等の症状があったかを記入する必要もあるため、症状の経過をメモすることを覚えておくとよいでしょう。

 

■「業務での感染が明らかな場合」の補償

会社員が業務によって感染したことが明らかな場合には、労働者災害補償保険法、いわゆる労災保険から必要な補償を受けることができます。病院や介護施設で働く職員が、新型コロナウイルス感染者の看護・介護をした等が具体的な対象ケースです。それ以外にも、飲食店での接客業務で顧客の集団感染があった場合などで複数の感染者が確認された労働環境下での業務、顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下の業務で認められる可能性があります。

 

傷病手当金と同様、休業によって給与が支払われない場合に、休業4日目から給与の約8割程度が休業補償給付として支給されます。労災保険の場合には、従業員に対する安全責任としての義務を会社に求めており、始めの3日間についても会社が平均賃金の60%以上支払うことでより手厚く補償されます。

 

健康保険の傷病手当金と労災保険の休業補償給付は同時に受給することができないため、休業補償給付が利用できない場合に、傷病手当金を検討します。

「パート・アルバイト、自営業者等」の場合

■特例的に「自治体」の傷病手当金が受けられることも

パートやアルバイトで短時間勤務をしている場合には、会社の健康保険ではなく市区町村が実施する国民健康保険に加入することが一般的です。通常、国民健康保険では傷病手当金の制度がないのですが、多くの自治体は、パートやアルバイトなどの短時間労働者に限って特例的に、新型コロナ感染による休業に対して傷病手当金を支給しています。

 

また、自営業者やフリーランスにおいても自治体によっては、新型コロナウイルスによって休業し事業ができない場合に限って支給している場合もありますので、自分が住んでいる自治体に確認しておくとよいでしょう。

 

 

森島 大吾

いちい経営事務所 代表

社会保険労務士

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