2022年より、日本の成年年齢は18歳となりました。「お金」や「投資」についてのリテラシーも、高校生の段階で身につけておくことが大切です。ここでは、高校生に向け「お金を借りる」ことの意味や注意点について、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。
恐ろしい…「カードローンの利息」を計算して驚愕! こんなに返済するなんて【公認会計士が解説】

お金を借りる人が気づきにくい、金融機関の巧みな戦略

カードローンとクレジットカードでお金を借りる時の注意点について解説します。分割払いは便利ですが、知らないうちに多くの利息を払っているかもしれません。また借金と投資・消費の3つを絡めて考えてることも大切です。K先生によれば、資産形成の秘訣は、「長期・積み立て・分散」投資だということでした。今日は6回目の講義です。

 

カードローンの利息は「実感しづらいしくみ」で払わされている

K先生:さあ、ここで問題だ。成人になった君たちが、友達と一緒に海外旅行に行くことになったとしよう。貯金もなく、ご両親にも頼れないとしたら、君たちはどうするかな?

 

高校生:えーっと…、カードローンでお金を借りるしかないかもしれません…。

 

K先生:そのカードローンの金利が17%、君たちが20万円を借りたとしよう。毎月5,000円ずつ返済する場合、すべて返済するまで何年かかって、総額いくら返すことになるか、わかるかな?

 

高校生:毎月5,000円だとすれば、20万円返すのに40ヵ月ですよね。利息もありますから、4年くらいでしょうか?

 

K先生:正解は、5年間で、総額は29万円になるんだ。

 

高校生:ええっ! 借りたお金より9万円も多く返すことになるんですか!?

 

K先生:そうだよ。月々の返済額が5,000円というと、お手軽に感じるかもしれないし、銀行で自動引落しされると、お金を支払っている感覚すらないかもしれない。でも、利息の支払いは、想像以上に大きな負担になっているんだよ。

 

お金を借りた時の返済、正しい理解と認識を!

高校生:買い物は、お金を先に貯めておいてからすべきですね…。

 

K先生:そうだね。でも、お金をためてから買い物できればいいけど、急ぎの買い物が必要になったとき、お金を借りることもできる。しかし、借りたお金は、返さなければならない。だから、そのお金を自分で返せるかどうか、よく考えてから行動しなければならないんだよ。

 

高校生:きっと、買い物をガマンすることもありますよね。

 

K先生:遊びのお金なんかはそうだね。でも、住宅のような買い物は、高くても生活に不可欠だから、多くの人が借金して買うことになるね。住宅ローンの返済でも、意外と大きな利息を支払うことになるので、注意が必要なんだ。

 

高校生:私、賃貸住宅でもいいです…。

 

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クレジットカードは「カード会社への借金」である

K先生:それに、成人になると、クレジットカードを持つことができるね。クレジットカードを使うということは、買い物の代金を後払いするということだ。後払いといっても、これは、カード会社から借金しているということなんだ。一括払いだと利息は取られないけど、分割払いやリボ払いだと、10%から15%くらいの高い金利になるんだよ。クレジットカードを使って現金を引き出すキャッシングも、同じように借金だ。クレジットカードを持つのはいいけれど、大きな借金をしてはいけないよ。

 

高校生:でも私、早くクレジットカードを持ちたいです!

 

覚えておきたい「利息制限法」…違法な利息での借金は絶対NG!

K先生:あと、必ず覚えておきたいのが「利息制限法」という法律だよ。10万円以上100万円未満のお金を借りるときの金利の上限が、年18%となっていることだ。これを超える高い金利を取るような悪質な金融業者から、絶対にお金を借りてはいけない。暴力的・強迫的な取り立てがおこなわれて、家族にまで被害が及ぶケースもあるんだよ。

 

高校生:それって「ヤミ金」のことですか!? 怖いですね…。

 

奨学金を借りるのは問題なし! 自分に投資して、おおいに稼ごう

K先生:でも、借りても問題ない借金が1つだけあるんだよ。それは奨学金だ。大学の授業料や生活費のための奨学金について、心配する必要はないよ。奨学金の金利はとても低いし、返済期間が長いからね。実際に、大学生の約2.7人に1人が奨学金を利用しているといわれている。前にも話したように、「教育は自分に対する投資」だから、自分が将来お金を稼ぐようになれば、返済することは十分可能になるよね。

 

高校生:なるほど! クレジットカードと奨学金では、大きな違いがありますね。クレジットカードはお金を消費に使いますから、将来の収入は増えないけれど、奨学金でお金を自分に投資すれば、将来の収入が増えますよね。

 

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国立と私立の大学の学費、「2倍違う」のは本当か?

K先生:そうだ、よく理解できたね。教育は投資なんだ。ただし、自分に対する投資のリターンは、どれだけ頑張って勉強するかによって、大きく変わるんだ。頑張って勉強すれば、国立大学に入学できて、学費は安くなるだろうね。大学の入学金と卒業するまでの授業料は、国立大学で約240万円、理系の私立大学では約510万円なんだ。

 

高校生:えーっ!? そんなに違うんですか!?

 

K先生:そう。国立大学に入れば、教育への投資は安くて済むっていうことだ。そして、大学に入ってからも頑張って勉強を続ければ、将来働いたときにたくさんのお金を稼ぐことができるようになるだろう? つまり、将来の収入額が増えるっていうことだよ。大学での勉強が最高の投資になる!

 

高校生:勉強はお金に関係しているんですね!?

 

K先生:そうだよ。頑張って勉強すれば、その分だけ教育という投資へのリターンが高くなるんだ。投資したお金の10倍にも100倍にもなるだろうね。こんなにリターンの高い金融商品、売られていないよ!

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

 

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