2022年より、日本の成年年齢は18歳となりました。そのことから「お金」や「投資」についてのリテラシーも、高校生の段階で身につけておくことが大切です。ここでは高校生に向け、社会保険と民間保険を活用した人生のリスク回避の方法について、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。
「私は高校生ですが、将来の自分が受け取る年金額が心配です」公認会計士、納得の回答

万一のお金・老後のためのお金は、どうやって用意すればいいの?

生活の中で起こりうるリスクや老後への備えについて解説します。怪我や事故などで予想外の出費が必要になることもあります。日頃から備えておくことでリスクが起きても対応することができます。K先生から、成人になってクレジットカードを持つことになっても、使いすぎてはいけない、お金を借りすぎてはいけないと教えられました。7回目の講義です。

 

予想外のリスクには「保険」への加入で備えよう

K先生:私たちの人生には、病気やケガ、火災や事故など、たくさんのリスクがあるよね。バイクに乗っているときに転倒してケガをする、あるいは、自転車で他人にぶつかってケガをさせてしまうことも考えられるだろう。そんな場合、ケガの治療費やバイクの修理代など、お金が必要になるよね。こういった予想外の出費に対して、どうやってお金を備えておくべきか、わかるかな?

 

高校生:うーん…そんなときは親に助けてもらいたいところですが、成人になると、自分で解決しなければいけませんよね。どうすればいいのでしょうか?

 

K先生:それは、保険に加入しておくことだ。保険は、様々なリスクに備えて、みんなで少しずつお金を出し合って、必要なお金が支払われるようにする仕組みなんだ。

 

日本の「社会保険制度」は手厚いが…カバーしきれない場合は「民間保険」で

高校生:なるほど、必要なお金を受け取ることができるならば、安心ですね。

 

K先生:保険には、社会保険と民間保険がある。日本人みんなが利用するのが社会保険だよ。年金保険、医療保険、介護保険、雇用保険、労災保険など、日本には手厚い社会保険制度があるけど、それでもリスクをカバーできないときは、民間保険の利用を考えればいい。民間保険には、人に対する生命保険と、モノに対する損害保険がある。ここで、民間保険について勉強しておこうか。

 

高校生:保険はたくさん種類があるんですね!

 

K先生:君たちのお父様が突然病気で死んでしまったら、君たち自身やご家族の生活はどうなる?

 

高校生:うちは母は専業主婦なので、会社員の父がいなくなると生活に困ってしまいます!

 

遺族年金の不足も「民間保険」で補う

K先生:そうだね。会社員の遺族には、国からは遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されるけれど、それでも年間150万円くらいなので、生活するには足りないよね。そんなときには、民間の生命保険に入っておいて、保険金を受け取ることができるようにしておくんだ。

 

高校生:私が働き出すまでは、まとまったお金が必要なんですね。

 

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【家庭科/資産形成】お金を借りる時の隠された罠【第6話】

 

「リスクに適した保険の選択」が重要

K先生:そうだね。ただし、ここで注意してほしいのは、お父様が死亡する「リスク」というものが、何を意味しているかということだ。「リスク」というのは、君たちが学生なのでお金がないこと、お母様が若いので年金をもらえないこと、そのために生活できなくなることが「リスク」だよね。

 

高校生:そうですね、あまり考えたくないですが…。

 

K先生:それでは、君たちが大人になって、お父様が90歳で死亡するケースはどうだろう? 生活に困ってしまうかな?

 

高校生:そのときは、私も自力でお金を稼いでいるでしょうし、母も年金暮らしをしているはずです。生活に困ることはないですね。

 

K先生:そうだね。だから、君たちが学生の間には、お父様に民間の生命保険に入っておいていただくほうがいいんだ。これが死亡保険の考え方なんだよ。

 

高校生:なるほど、家に帰ってから、うちの父に聞いてみます。

 

老後にもらえる年金は「予想以上に少ない」

K先生:ところで、老後に長生きした場合、公的年金だけで、生活費はどれくらいカバーできるか知っているかな?

 

高校生:そうですね…生活費として毎月30万円くらい必要ですから、それくらいはもらえるのではないでしょうか。医療費や介護費用もかかりますから。

 

K先生:いやいや。公的年金だけだと、そんなにもらえないんだよ。公的年金には、すべての国民が加入する国民年金と、会社員だけが加入する厚生年金があるけれど、国民年金だけでは月に6万円くらい、厚生年金をもらったとしても、月に10万円から15万円くらいしかないんだ。自営業だった人は、老後の生活費が6万円では全然足りないし、会社員だったとしても、20万円ではちょっと生活が苦しいだろうね。

 

高校生:えーっ!? 公的年金ってそんなに少ないんですか!

 

K先生:そうなんだよ。それでも日本の財政赤字は増える一方なんだ。君たちの将来は、年金の支給額がもっと少なくなる可能性が高いね。

 

資産形成することで、老後に不足するお金を補おう

高校生:私たちはどうすればいいのでしょうか…?

 

K先生:だから老後のために、自分で最低でも2,000万円くらいは貯めておくんだよ。資産形成が必要なんだ。会社員の場合、投資信託を毎月2万円ずつ、25歳から60歳まで35年間にわたって買い続けることができれば、老後2,000万円を準備することは十分に可能。そんなに難しい話ではないよね。自営業の場合だとすれば、毎月6万円くらい買い続けることが必要だね。

 

高校生:なるほど! 毎月2万円なら私にもできそうですね。

 

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資産形成を後押しする「おトクな制度」が用意されている!

K先生:日本には、資産形成を応援してくれるオトクな制度があるんだ。それは「iDeCo」や「つみたてNISA」という制度。この制度を活用すれば、投資したお金に係わる個人の税金を減らしてくれるんだ。早いうちから老後資金の準備を始めることが重要だね。

 

高校生:はい! ライフプランをしっかり考えて、計画的にお金を貯めるようにします!

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

 

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