マルチ商法による金融トラブル…お金も人間関係も失うことに
公認会計士のK先生によれば、将来のお金に困ることがないよう、リスクに備える生命保険や損害保険、そして年金保険は、とても重要だということでした。ここでは、金融トラブルの事例と、トラブルを避ける方法について解説します。成人になったばかりの若者を狙った詐欺等により、若い方々がトラブルに巻き込まれるケースが増えています。頻発するトラブルをよく知ったうえで、巻き込まれた際の対処法も学びましょう。8回目の講義です。
K先生:さて、今日は、金融トラブルについて話しをしようか。トラブルに遭わないようにするには、どんな方法があるのか、事前に知っておくことが重要だよ。悪名高い手口の事例をいくつか紹介しよう。
高校生:私は簡単に騙されないので、大丈夫ですよ!
K先生:「マルチ商法」って知ってるかな? マルチレベルマーケティング、ネットワークビジネス、連鎖販売取引とも呼ばれるもので、最初に君たち自身が商品やサービスを購入し、その次に、自分が買ったものを友人・知人へ次々と購入させるものだ。この勧誘が連鎖的に続くことを前提として、ピラミッド型に会員を増やしながら商品を販売するシステムのことを「マルチ商法」というんだ。
高校生:へぇー、宗教みたいですね。これのどこが問題なのですか?
K先生:マルチ商法は、会員が増えるたびに勧誘した会員やその上層部の会員に、利益が分配されていく仕組みなんだ。ただし、商品・サービスの販売には、自分が商品・サービスを仕入れてから売る必要があるため、支払った代金を回収できなくなったり、無理な勧誘で人間関係を壊してしまったりすることがあるんだよね。
高校生:自分が人へ販売できなかったら、その時点で赤字だとあきらめて、何もしなければいいだけではないですか?
K先生:それが、単純な赤字としてすませることができない金額なんだよ。購入する商品があまりに高すぎて、購入代金を支払えなくなるケースが多いんだ。なぜなら「人を紹介すれば手数料が入る」といってマルチ取引の勧誘を受けてしまうと、自分が稼ぐであろう手数料をあてにして、身の丈以上に高い買い物をおこなってしまいやすくなるからなんだ。このために消費者金融でお金を借りて買ってしまい、借金を返せなくなるケースもあるんだ。
マルチ商法で扱われる商品の例
高校生:どんな商品がマルチ商法で売られているんですか?
K先生:よく売られるものは、化粧品や健康食品だね。ほかに、コンピュータソフトや資格教材などだ。最近では、大学生を中心に、ファンド型投資商品や投資用DVDが売られていたね。
高校生:大学生がそんな商売をやろうとするのですか?
K先生:そうなんだよ。実際のところ、20歳代の若い人がトラブルを抱えるケースが多いんだ。数年前、大学生を中心にして、外国為替取引で必ず勝てる分析ツールだといって、高額なUSBメモリを販売する詐欺的なトラブルが広がったことがあったんだ。
「簡単に儲かるよ!」…外国為替取引のツールで、大学生が被害に!
高校生:外国為替取引って何ですか?
K先生:外国為替取引というのは、外国の通貨、たとえば米ドルを商品として売買する取引だと思ったらいいよ。
高校生:なるほど、私たちが持っている日本円を米ドルに替えて、その米ドルを再び日本円に替えることで、儲けが出るということですね!
K先生:この外国為替取引のケースでは、友人や先輩から、これを使えば簡単に儲かると勧誘され、借金をしてまで購入する人までもいたんだ。しかもマルチ商法だから、誰かを紹介すると報酬がもらえるとして、トラブルが一気に拡大したらしいんだよ。
高校生:でも必ず勝てるなら、みんなが儲かるわけですし、いいじゃないですか。
K先生:いや、現実の話、必ず勝てる方法なんてこの世に存在しないんだよ。これは詐欺なんだ。株式投資のときにも、将来のリターンは不確実だって話したとおりだよ。
高校生:そうなんですか…。自分だけに美味しい話が来ることを期待しますよね。
K先生:公認会計士である私が断言しよう。長期投資でじっくりと5%程度のリターンを稼ぐ話だけが唯一信頼してもいい話。それ以外の投資で、簡単に儲かる話や美味しい話なんて、絶対に存在しないよ。
高校生:確かに…。宝くじで1億円当たるといわれても、誰も本気で期待していないですよね。
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個人間での金融トラブル事例から学ぼう
K先生:また、最近は、個人間の融資のトラブルも増えてきているんだ。これは、インターネットのSNSや掲示板を通じて、個人間でお金の貸し借りをおこなうものだ。個人を装った闇金業者によって、違法な高金利での貸付がおこなわれたり、個人情報が悪用されて犯罪に巻き込まれたりすることもあるから、注意が必要だよ。
高校生:私はいつもお父さんからお小遣いをもらっています!
恐ろしい多重債務の危険性とは?
K先生:成人になると、クレジットカードやカードローン、消費者金融を使えるようになるから、お金を使いすぎて多重債務に陥るケースもあるんだ。
高校生:多重債務って何ですか?
K先生:複数の金融機関から返せないほど多額の借金を抱えてしまうことだ。自分だけは大丈夫と思っていても、クレジットカードを使った買い物で、一時的にお金を使いすぎてしまうことがあるかもしれない。そんなときに軽い気持ちで、高い金利の借金をすると、借金はすぐに膨らんでしまって、その借金を返すために、悪質な金融業者からまた借金をしてしまうことがある。もしも多重債務になってしまったら、1人で抱え込まず、専門の相談窓口にすぐに相談しなければいけないよ。
高校生:借金地獄は怖いですねー!?
金融トラブルを避ける3つの鉄則
K先生:それでは、金融トラブルを避けるにはどうすればよいだろうか。金融トラブルを避けるための鉄則は3つだ。
①おいしい話に注意! リスク・リターンの原則について
K先生:1つ目は、おいしい話には気を付けること。高いリターンを求めればリスクが高まり、リスクを低く抑えようとするとリターンは低下する。これは当然の原理なんだ。「安全で確実に大儲けできる商品」なんて話は絶対に存在しない、間違いなく詐欺だということを覚えておいてほしい。
高校生:なんだか夢が無いですね…。
②断りにくい状況でも勇気を持って「NO!」ということ
K先生:2つ目は、向こうから近寄ってきても、はっきり断ることだ。トラブルのなかには、「いまだけ、あなただけに特別に」と勧誘され、高額な商品やサービスの契約をしてしまうケースがあるんだ。断ろうとしても、断りにくい状況になるだろうね。でも、勇気を出して「要りません」とはっきりいわなければいけないよ。
高校生:うーん…仲のいい友達から誘われたら、断れないかもしれませんね…。
③トラブルにあっても、諦めずに相談する!
K先生:3つ目は、万が一トラブルにあっても決してあきらめないことだ。契約した後でも、取り消しや解約ができる場合があるから、調べてみることが必要だね。また、犯罪の手口の情報を集めておくことも重要だろうね。
高校生:高齢者に対する「オレオレ詐欺」は有名ですよね!
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【家庭科/資産形成】金融トラブルを避ける3つの鉄則【第8話】
金融トラブルに会ったら188番へ電話相談
K先生:それでは、トラブルにあってしまった場合、どうすればよいか知っているかな? 未成年者の場合、親権者の同意を得ないでおこなった契約は取り消すことができるけれど、成年になると契約を取り消すことができなくなる。ただし、その場合でも、悪質な金融業者との契約は、取り消したり、クーリングオフ制度で解除できたりする場合もあるんだ。簡単にあきらめてはいけない。
K先生:トラブルにあったときは、すぐに消費者ホットライン188番に電話して相談するようにしよう。疑問に思ったり困ったりしたときは、1人で抱え込まず、すぐに電話するようにしようね。
高校生:はい、金融トラブルには注意します!
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士
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