2022年より、日本の成年年齢は18歳となりました。「お金」や「投資」についてのリテラシーも、高校生の段階で身につけておくことが大切です。ここでは、高校生に向け、アメリカ人と日本人の資産形成の特徴を比較しながら、資産形成とリスクに対する考えについて、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。
アメリカ人の老後資金「日本人の3倍蓄えている」納得の理由【公認会計士が解説】

アメリカ人の老後資金蓄えは日本人の3倍多いワケ

アメリカ人の資産形成について解説します。資産形成とリスクに対する考え方の違いによって、老後の蓄えには大きな差ができてしまいます。視野を広く投資できるように学びましょう。K先生から、資産形成のためには、株式に分散投資することが必要だと教えられました。5回目の講義です。

 

なぜ投資信託は「多くの株式への分散」ができるの?

高校生:K先生! たくさんの株式へ分散投資するというのは、実際にどうやればよいのでしょうか?

 

K先生:それは「投資信託」へ投資することだね。投資信託というのは、多くの人のお金を専門家がまとめて運用して、その運用の成果を分配する金融商品だよ。

 

高校生:「運用」ってどういう意味ですか?

 

K先生:「運用」というのは、利益を得るために、金融商品を選んで、長期間にわたって投資を続けること。投資信託の場合、株式や債券、不動産など複数の種類の金融商品を組み合わせて運用する。同じ種類の中でも分散させていて、1つの投資信託で、何百社という数多くの企業に投資していることが多いよ。

 

投資先を増やしてリスク/リターンをコントロール!

高校生:えーっ、それはすごいですね! でも、何百社という株式に投資すると、どうしてリスクが低くなるのですか?

 

K先生:リスクというのは、価格の変動の大きさだということは理解できたよね。そして、私たちはみんな価格の変動が大嫌いなんだよね。そこで、投資の世界には、「1つのカゴに卵を盛るな」という格言があるんだ。お金を1つの資産に集中しないで、複数の種類に分散して投資すれば、リスクが分散され、リターンの安定度が増す効果があるんだよ。投資信託は、少ない金額から買うことができるし、専門家に任せて分散投資することができる、素晴らしい金融商品なんだ。

 

高校生:では、どれくらいの金額を投資信託で運用すればいいのでしょう?

 

K先生:それは、将来いくらの金額まで自分のお金を増やしたいかによるね。資産形成のゴールだよ。老後資金には2,000万円が必要だといわれるけれど、銀行預金だけで2,000万円のゴールに到達できないのであれば、ある程度のリスクは覚悟して、投資信託で運用する必要があるね。

 

運用方法によって、資産形成スピードに2倍の差も…

高校生:うちの父は銀行預金が100%だといってました…。

 

K先生:それが一般的な日本人の運用のやり方だね。アメリカ人は、個人資産の5割くらいを株式や投資信託で運用しているけど、日本人は、2割弱しか運用していないんだ。ほとんど銀行預金で持ち続けているね。

 

高校生:えーっ!? そんなに違うんですか!?

 

K先生:その結果、アメリカ人は、金融資産が2.7倍に増えたけど、日本人の金融資産は1.4倍くらいにしか増えていない。アメリカ人の老後の生活はラクになったけど、日本人の老後の生活は、相変わらず苦しいんだよ。

 

高校生:どうしてこんなに大きな違いが出たのですか?

 

K先生:アメリカ人は「株式投資は儲かるもの」という意識が強いけど、日本人は「株式投資は儲からないもの」という意識があるからだと思うね。株式の価格のことを株価っていうんだけど、アメリカ企業の株価は、ここ30年間で約12倍になっている。だけど日本企業の株価は、ほとんど上がっていないんだ。

 

★高校生から知っておきたい資産形成情報はこちらをチェック

【家庭科/資産形成】お金を貯めて増やす方法とは?【第4話】

 

投資で日本が伸び悩んだ、3つの理由

高校生:えーっ!? 日本はどうして負けているんですか?

 

K先生:理由は3つあるね。それぞれ見ていこうか。

 

①人口減少で日本内での需要や働き手が減っている

 

K先生:1つは、国家の成長性だ。アメリカの人口は、ここ30年間で約1.4倍に増えたけど、日本人口は、ほとんど増えていないんだ。働く人や買い物する人がいないとすれば、企業はお金を稼ぐことができないよね。

 

高校生:少子高齢化社会ですものね。

 

②アメリカは株価を上げて利益を稼ぐ意識が日本よりも強い

 

K先生:もう1つは「経営者のやる気」だ。アメリカ企業の経営者は、たくさん利益を稼いで、株価を上げようと努力する。だけど日本企業の経営者は、そういう気持ちがあまりないんだよ。

 

高校生:ええっ、やる気の違いですか!?

 

K先生:そうだね。株主から預かったお金を使ってどれだけ稼ぐことができたか、これを「ROE」という数値で測定することができるんだけどね。ROEで比較すると、アメリカ企業のほうが、日本企業よりも2倍くらいお金を稼いでいるんだよ。

 

高校生:それは残念ですね…。

 

③「失敗」や「新しい技術」に対する考え方の違い

 

K先生:3つ目は、チャレンジ精神だ。アメリカでは、成功を目指して大胆に挑戦する経営者が多い。だからGAFAのように最先端のテクノロジーを活用して、大きくお金を稼ぐ企業が出てくるんだよね。しかし日本では、失敗をおそれて何もしない経営者も多いから、GAFAのように急成長する企業は出てこないんだ。

 

高校生:そうなんですか! もっと頑張って欲しいですね…。

 

K先生:そうだね。今後、日本企業がアメリカ企業のようになることを期待するしかないね。

 

★アメリカと日本の資産形成の考え方の違いはこちらをチェック

【家庭科/資産形成】アメリカ人の老後資金蓄えは日本人の3倍多いワケ【第5話】

 

まずは能力を高めて「自分で稼げる人材」になろう!

高校生:K先生、投資信託が一番いいということはわかりました。でも、私たちにお金がありません。どうすればいいのでしょうか?

 

K先生:それは「しっかりと勉強する」ことだよ。教育も投資だという話をしたのは覚えているよね? 勉強して自分の知識を増やし、能力を高めておくと、社会人になってから、たくさんお金を稼げるようになる。そうやって自分で稼いだお金の一部で、投資をおこなうんだ。

 

投資信託を毎月コツコツと引退するまでずっと買い続けることで、必ず大きな資産を形成することができるよ。その金額は銀行預金したときの2倍から3倍になるだろうね。「長期・積み立て・分散投資」が資産形成の秘訣だと覚えておけばいい。

 

高校生:「長期・積み立て・分散投資」ですね!

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

 

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