人生に必要なお金、いくらあれば大丈夫なの?
公認会計士のK先生は、若い方々に向け、簡単に儲かるような美味しい話は存在しないこと、そして、騙されることがないように金融トラブルには十分注意しなければいけないと教えてくれました。今回は、これまでの総まとめとして、人生に必要なお金について取り上げます。高校を卒業したあとは、様々な生き方を自由に選ぶことができるわけですが、自分はどんな生き方がいいか考えたことがあるでしょうか。あわせて、お金の面からも考えてみましょう。9回目の講義です。
人生の節目にあるライフイベント、どのくらいお金がかかる?
K先生:さぁ、今日が最後の授業だ。君たちの将来の人生とお金をイメージしてみようか。学校を卒業したあと、どんな将来を思い描いているかな?
高校生:学生生活が楽し過ぎて、将来のことはまだ考えたことがありません!
K先生:人生の節目には、いくつものライフイベントを経験すると思います。自分のライフイベントを具体的に計画することが「ライフプランニング」だよね。それらのイベントには、たくさんの選択肢があるはず。その選択肢から、やりたいことを選ぶことで、君たちの人生が決まるんだ。そのイベントを迎える前に必要なお金を準備しておかなければいけないよね。
高校生:私は女優になりたいです!
K先生:最初のライフイベントは、卒業後の進学だ。就職する場合は、教育費は必要ないし、お金を稼ぐことができる。しかし、第1回の授業で話したように、教育は自分に対する投資だから、その効果は将来の大きなお金となって返ってくる。目先のお金を優先する場合は就職、将来のお金を優先する場合は大学進学ということになるだろうね。
高校生:私はまだ働きたくないので、とりあえず大学に進学します!
①大学進学する場合、授業料はいくらかかる?
K先生:大学の授業料は、親が支払ってくれるだろうから、君たち自身の問題ではないかもしれないけれど、その授業料の大きさだけは理解しておかなければいけない。国公立大学に4年間通うと授業料は240万円くらいだけれど、私立大学だと500万円、理系の学部で大学院まで6年間通うと約1,000万円になるんだ。親に感謝しないといけないよ。
高校生:できれば国公立大学がいいですね!
K先生:次は就職だ。ほとんどの人は、会社に就職するけれど、最近は家業を継いだり、起業して自営業を営んだりする人も増えてきているようだね。働き方によって、収入が大きく変わるから、いまのうちからじっくりと考えておかなければいけないよ。
高校生:私はテレビ局のアナウンサーになって、そこから芸能界に進出したいです!
②結婚~出産~住宅購入まで
K先生:何年か働いたら、次のライフイベントとなるのが「結婚」だろう。一般的に、結婚から挙式、新婚旅行まで約500万円かかるといわれているんだ。
高校生:えーっ、そんなにかかるんですか! でも、相手と半分ずつ負担すればよさそうですね。
K先生:結婚して子どもができたら、出産費用が50万円くらいだね。そして、持ち家を持とうとして住宅やマンションを購入すると、3,000万円から4,000万円くらいかかるんだ。
高校生:そんな大金、準備できるかな…。
K先生:住宅を購入するときは、ほとんどの人が住宅ローンを借りることになるんだ。この借入れは、悪いものではないので、心配する必要はないよ。ちなみに、住宅資金は人生三大資金の1つだね。残りの2つは覚えているかな?
高校生:はい。「教育資金」と「老後資金」です!
生涯年収の1~3割が、子どもの「教育資金」になる
K先生:そうだね。子どもが幼稚園に入ってから大学を卒業するまで、すべて国公立に通った場合は約1,000万円、すべて私立に通った場合は約2,000万円かかるんだ。
高校生:えーっ、けっこう大きなお金がかかりますね!
K先生:仮に、君たちの年収が500万円、手取り額が400万円とすると、子どもが大学を卒業するまで23年間働くとすれば、合計して1億円近く稼ぐことができるだろう。そのうちの1割から3割を教育費に回すということだね。
高校生:1億円ですか! 夫婦でがんばって働かないといけませんね。
会社員としての働き方と、老後の人生について
K先生:では、会社員として働き続けると仮定しようか。その場合、定年の60歳まで働くことができる。人生100年時代となったこの頃は、定年後にも仕事を続けさせてもらい65歳くらいまで働くケースも増えてきているようだね。23歳で就職してから、会社員は40年間働くという人生だ。
高校生:長いですね…。
K先生:ちなみに、退職するときに退職金というまとまったお金をもらい、住宅ローンの残りをすべて返しきってしまうケースが多いんだ。そうすると、退職後の住宅費用は必要なくなるね。
高校生:退職後の生活費は、どれくらいかかりますか?
K先生:老後の生活費は、毎月25万円くらいかかるといわれているよ。医療費や介護費用がかかると、もっとお金が出ていくだろうね。
高校生:その生活費をどうやって稼ぐんですか?
K先生:老後も働くことができればいいけれど、働けない場合は、年金をあてることになるね。会社員だと65歳から厚生年金をもらえるから、定年まで勤めると、月に20万円くらいもらえるんだ。夫婦が定年まで共働きだと2人合わせて30万円くらいになるだろう。ただし、君たちの時代の年金は減らされている可能性が高いけれどね。
「自分がもらえる年金」と「老後に必要な資金」を計算しよう
高校生:年金が20万円で25万円の生活費が必要なら、家計は赤字ですよね。共働きでないと無理ですね…。
K先生:うーん、仮に共働きしても、奥さんがパートやアルバイトだと年金が不足するんだよ。これを日本では「老後資金2,000万円問題」といって、数年前に大騒ぎになったんだ。計算してみようか。日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳だね。毎月5万円赤字の生活が続くと、年間で60万円の赤字、これが30年間続くと1,800万円となる。これに医療費や介護費用がかかることを考えれば、老後に2,000万円くらい資金が不足することがわかるね。
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老後資金の不足はコツコツ投資で補おう
K先生:以前お話したように、毎月2万円はコツコツと投資を続けて、老後資金のための資産運用を行っておかなければいけない。
高校生:私はいつか会社を辞めて、自営業で独立したいと思っているんです。会社員と自営業では、年金額に違いがありますか?
K先生:自営業で独立して働く場合、厚生年金に加入することができないんだ。そうすると、老後に基礎年金しかもらえないことになる。仮に、ずっと自営業で働いたとすれば、65歳からの基礎年金として、月に6万5,000円、夫婦2人分で13万円くらいしかもらえないんだよ。
高校生:えーっ、どうすればいいのでしょう…?
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自営業で働く場合は、毎月6万円程度の投資が必要に
K先生:自営業の場合、毎月2万円だけでは足りないから、毎月6万円くらいの投資が必要になるね。一般的に、会社員よりも自営業者のほうが収入は大きいだろうけれど、決して無駄遣いせずに、資産運用をおこなうことが必要なんだよ。
高校生:わかりました! いまのうちにライフプランニングをおこなっておけば、老後に豊かな生活を送ることができるようになりますね。先生、ありがとうございました!
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士
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