2022年より、日本の成年年齢は18歳となりました。「お金」や「投資」についてのリテラシーも、高校生の段階で身につけておくことが大切です。ここでは、高校生に向けて、お金の「元本」「利息」の概念について、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。
アインシュタインも驚嘆…お金を〈雪だるま式〉に増やせる「複利」のスゴイ効果

お金を貯めて増やす方法とは?

公認会計士のK先生は、クレジットカードを持ってキャッシュレス決済をおこなうようになると、意外とお金を使いすぎてしまう点に注意が必要だと教えてくれました。今回は、資産形成でお金を増やす方法について解説します。株式などリスクのある金融商品で資産形成をおこなうには、それ相応の知識が必要です。都合のいい話に惑わされないように学びましょう! 4回目の講義です。

 

金融商品の「元本」と「利息」を理解しておこう

K先生:さて、今日は、人生の三大費用「教育」「住宅」「老後のお金」に向けて、お金を貯めること、お金を増やすことを学習しようか。これを「資産形成」というんだ。これは、具体的にいうと、増やす手段となる金融商品を選択するということだね。

 

高校生:金融商品ってなんでしょう? うちの父は、お金はすべて銀行預金に預けているといってましたが…。

 

K先生:実は、銀行預金や郵便局の貯金も金融商品なんだよ。給与振込みで使うし、公共料金の支払いやクレジットカードの自動引き落としにも使うだろう。私たちの日常生活に絶対必要となる金融商品だね。だから、元本が保証されているんだよ。

 

高校生:K先生!「元本」ってなんですか?

 

K先生:元本というのは、金融商品を購入するために支払った金額、つまり元手のことだね。そして、預けたお金の元本には利息がつくんだ。逆にお金を借りたときには、利息を支払うことになるね。

 

高校生:すみません、「利息」ってなんですか?

 

K先生:利息というのは、貸し借りしたお金に対して、一定割合で支払われるお金のことだ。元本に対する利息の割合のことを、「金利」とか「利率」というんだ。

 

高校生:お金を預けると、お金が増えるんですね!

 

複利の効果はすごい! 雪だるま式にお金を増やす方法

K先生:ここで受け取った利息を手元に引き出さずに、預け続けることを考えてみよう。利息の分だけ、元本が増えることになるだろう? そうすると、次回の利息は、前回の利息よりも、もっと大きくなるよね。それが続くと、雪だるま式に元本がどんどん増えていくんだ。これを「複利」というんだ。

 

高校生:長く預けると、どんどん増えていきますね!

 

K先生:そうだね、複利の効果はすごいんだ。有名な物理学者のアインシュタインは、この複利のことを「人類最大の発明」だといったんだよ。

 

高校生:えーっ! アインシュタインが認めているんですか? それなら、お金をどんどん銀行に預けていくべきですね!

 

お金を銀行に預けるリスクとは?

K先生:それが現在のような低金利の時代には、銀行預金に預けてもほとんど増えないんだよ。ここ20年ほどの間、日本の金利は0%近くまで下がってしまったから。

 

高校生:それなら、どうやってお金を増やすのですか?

 

K先生:それは、株式や債券に投資することだね。投資とはなんだったか、覚えているかな?

 

高校生:えーっと、…投資というのは、GAFAのような急成長している大企業へお金を出すことですね。

 

K先生:そうだね。投資とは、将来お金を稼ぐために、現時点でお金を支払うことだったよね。

 

高校生:GAFAの株式の価格が上がれば、お金が増えるということですね。

 

K先生:企業が利益を稼いで成長すれば、株式の価格が上昇する。反対に、儲からなくて赤字が続けば、株式の価格は下がることになるね。

 

高校生:価格が下がるのが恐いですね。

 

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【家庭科/資産形成】ライフプランニングと家計管理【第2話】

 

投資をおこなう「リスク」と「リターン」を理解しよう

K先生:金融商品への投資から得られる利益や損失のことを、リターンというんだ。ただし、将来のリターンは予測不可能だ。リターンは不確実だし、振れ幅が大きいんだよ。このことを「リスク」というんだ。株式は、リスクが大きい商品なんだよ。

 

高校生:預金がいいか、株式がいいか、悩みますね…。

 

債権とは?(国債や社債)

K先生:株式以外にも金融商品があるよ、債券だ。これは、国や会社がお金を借りるために発行するもの。国が発行するものは国債、会社が発行するものは社債だね。借りたお金は、返してくれることになっている。倒産しないかぎり元本は返してもらえるから、株式よりも安全なんだ。しかも、銀行預金よりも利息が高いんだ。

 

高校生:それはいいですね!

 

K先生:しかし、債券の価格は、株式ほど大きく変動しないので、大きく儲けることはできないんだよね。

 

高校生:それならば、結局は株式に投資するのがいちばんいいってことでしょうか。

 

金融商品を選ぶ3つのポイント

K先生:金融商品を選ぶときのポイントは3つあるんだ。安全性、収益性、流動性という3つの観点だね。

 

●安全性…お金が減らないかどうか

●収益性…どれくらい利益を稼いでくれるか

●流動性…必要なときにお金を引き出しやすいかどうかということなんだ。

 

高校生:安全性が高くて、収益性も高い金融商品を選ぶべきですね。

 

「安定して、収益もいい」なんて…そんな都合のいい商品はない!

K先生:うーん、残念ながら、そんなに都合のいいものは無いんだよ。一般的に、安全性が高い金融商品は、収益性が低くなるし、収益性が高い金融商品は、安全性が低くなるんだ。「確実に大儲けできる商品」なんて話を人から聞いたら、それは詐欺だと思って間違いないね。

 

高校生:難しいですね…。

 

K先生:それでは君たちに質問! 安全性、収益性、流動性、この3つのうち、どれがいちばん重要だと考えるかな。

 

高校生:私はお金が減ってしまうのは絶対に嫌なので、安全性がいちばん重要だと思います。だから、銀行預金がいいかもしれません。

 

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【家庭科/資産形成】お金を貯めて増やす方法とは?【第4話】

 

分散投資で安全性を高めながら資産を増やそう

K先生:そうか。それは典型的な日本人の考え方だね。しかし、株式投資でも安全に増やす方法があるんだよ。それが「分散投資」という方法だ。1つの株式だけに集中的に投資するのではなく、異なる複数の株式に分けて投資をおこなう。こうすれば、価格の変動が小さくなって、リスクを小さくすることができる。これを「資産の分散」っていうんだ。日本の株式だけで分散させてもいいけど、外国の株式まで分散させると、もっとリスクは小さくなる。これを「地域の分散」というんだ。

 

高校生:えーっ! たくさんの株式を個人で買い集めることはできるのですか?

 

K先生:その方法は、次の講義で教えよう!

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

 

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