老後2,000万円問題が叫ばれて久しい昨今。その言葉通り、70歳の時点で2,000万円もの預貯金があったDさんでしたが、老人ホーム入所後わずか7年で尽きてしまうことに……いったいなにがあったのでしょうか。社会福祉士として実際に有料老人ホームの管理者としての経験もある、株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也氏が解説します。
年金月15万円の70歳女性…2,000万円の預金を7年で喰い尽くした、驚きの老人ホーム請求額 (※写真はイメージです/PIXTA)

2,000万円あった預貯金がゼロに…なぜ?

Dさんが施設へ入所した当時、預貯金は2,000万円ありました。賃貸だった自宅は、施設への入所と同時に契約を解除しています。

 

しかし、年金月15万円の収入に対して、施設の利用料を含めた月々の生活費は35万円ほど……毎月の収支はマイナス20万円にのぼっていました(生活費の内訳:施設の家賃12万円、管理費10万円、共用部家賃相当3,5万円、食費6,5万円、アクティビティ1万円、おむつ代2万円)。

 

さらに、施設に入所してからは専門スタッフ同行の旅行へ行ったり、病院へ通ったりと突発的な費用も発生していたため、2,000万円あった預貯金は7年ほどで尽きてしまいました。

 

それからは、足りない差額20万円を息子さんが負担していましたが、それも長くは続きません。

 

子育てと違い、介護はいつ終わるのか期間がわからないのが現実です。息子さんの預貯金も尽き、とうとうDさんの施設利用料を払えなくなってしまいました。

 

結局、息子さんはDさんを自宅へ引き取り面倒をみることにしましたが、仕事と介護の両立は難しく、介護サービスを利用しながらなんとか生活している状況です。

 

老後に2,000万円の貯えがあれば大丈夫と思っていたDさんと息子さんの生活は、思ってもいなかった現実に直面することになったのです。母親によい生活を送ってもらいたいと考えた息子さんでしたが、介護期間が長くなったことで金銭面で大変な状況となってしまいました。

 

老後破産は避けられる…Dさんたちが選ぶべきだった選択肢

認知症の方であれば、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)という選択肢もあります。こちらのサービスであれば利用料を抑えることが可能です。

 

また、介護サービスには「訪問」「通所」「入所」などさまざまなサービスがあります。事前に専門家と相談しながら、身体面や金銭面など総合的な判断でサービスを選ぶことでDさんの結末は変わったかもしれません。

 

老後も健康で過ごせることが1番ですが、介護サービスについても具体的に調べつつ、豊かな生活と金銭面を両立できるようにしておきたいものです。

 

 

武田 拓也

株式会社FAMORE

代表取締役