Aさんが受け取ることができる公的保障は?
Aさんには子供がいないため、遺族基礎年金を受け取ることができない。Aさんの夫の厚生年金加入期間は23歳から40歳までの17年間で、その後独立し国民年金に加入したため上記要件に該当せず、遺族厚生年金も受給することができない。さらにAさんの夫婦は婚姻期間が10年未満のため、寡婦年金も支給されない。
死亡した際に受け取ることができるのは国民年金からの死亡一時金と国民健康保険からの葬祭費のみである。
Aさんの今後の収入では「4,380万円」不足する
Aさんは遺族年金を受け取れないが、幸い、取引のあった事務所で再就職することができた。年収は300万円程度を想定しており、65歳まで働くことを考えている。
だが、夫から相続したお金と今後の自分の収入だけで老後暮らしていけるのかが不安なため、Aさんが今後必要となる金額と見込みの収入額をシミュレーションして現状把握をすることにした。
Aさんのシミュレーション
Aさんに必要な金額 - Aさんの見込み収入額=Aさんの老後資金不足額とする。
・生活費:月15万円×50年=9,000万円
・住居費(家賃+更新料):月8万円×50年+200万円=5,000万円
・その他支出:年間10万円×50年=500万円
合計:1億4,500万円
・Aさんの給与収入
60歳まで正社員:月手取り20万円×20=4,800万円
65歳まで嘱託社員:月手取り15万円×5年=900万円
・夫からの相続:1,000万円
・65歳からの老齢厚生+老齢基礎年金 年額136.8万円×25年=3,420万円
合計:1億2,667万円
仮にAさんが90歳まで生きた場合、毎月の生活費を15万円とすると一生涯で9,000万円の生活費が必要となる。
Aさんの夫が住宅ローンを利用し、団体信用生命保険に加入した上で住宅を購入していた場合は、Aさんが負担する住居費は固定資産税と管理費等のみだったが、今後は単身用のマンションに引っ越すため、家賃と更新料の支払いが必要になる。
また一方で、Aさんの再就職後の収入を前提に今後受け取ることができる年金をシミュレーションすると、65歳から90歳までに3,420万円を受け取ることができる。
上記の通り、Aさんが今後必要とする費用から見込み収入を差し引くと、1億4,500万円-1億120万円=4,380万円が不足することになる。この不足額は、令和4年度時点の国民年金の計算を前提としているため、今後算定額の方法に変更があった場合は不足が増減するおそれがある。
加えて、Aさんが病気やケガで働けなくなった場合や要介護状態になってしまうなどの不測の事態の際の費用も含まれていないため、実際はもっと大きな金額が不足することが予想される。