日本の公的年金制度には、夫に先立たれた妻子の生活を守るため「遺族年金」が整備されています。しかし、自営業の妻は会社員の妻と比べると公的保障が少ないと、FP Officeの清水豊氏はいいます。自営業の夫に先立たれたAさん・40歳の悲劇を例に、遺族年金のシミュレーションをみていきましょう。
自営業の夫が40歳で急逝…「遺族年金」が頼りの妻を待ち受ける、あまりに悲惨な現実【お金のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

法人化し、社会保険に加入していた場合

ここで、仮にAさんの夫が開業当初から法人化し、社会保険に加入していた場合のAさんが受け取ることができる遺族年金の受給額を比較してみよう。

 

Aさんのシミュレーション

Aさんに必要な金額-Aさんの見込み収入額=Aさんの老後資金不足額とする。

 

Aさんに必要な金額

・生活費:月15万円×50年=9,000万円

・住居費(家賃+更新料):月8万円×50年+200万円=5,000万円

・その他支出:年間10万円×50年=500万円 

・夫からの相続:1,000万円

 

合計:1億4,500万円

 

Aさんの見込み収入額

・Aさんの給与収入

60歳まで正社員: 月手取り20万円×20=4,800万円

65歳まで嘱託社員: 月手取り15万円×5年=900万円

・遺族厚生年金+中高齢寡婦加算 年額101.9万円×25年=2,547万円

・65歳からの老齢厚生+老齢基礎年金 年額136.8万円×25年=3,420万円

 

合計:1億2,667万円

 

上記の通り、Aさんの夫が独立開業後も社会保険に加入していた場合、Aさんが再婚するなど、遺族厚生年金の受け取る権利が消滅しない限り、遺族厚生年金を受け取ることができた。あくまで仮の計算ではあるが、上記の計算だと不足額は1,833万円まで減少する。

会社員から独立する際は積極的な備えの検討が重要

多様な働き方をする人が増えるなか、自営業として独立する人が増えている。死亡時だけでなく、病気やケガで障害が残った場合などにおいても自営業は会社員に比べて公的保障が少ない。

 

そのため、独立開業したいと考えている人は、自分に万一のことがあった場合に残された家族の生活がどのように変化するのか検討し、公的年金以外の備えを確保してから決断することをおすすめする。

 

 

清水 豊

FP Office

ファイナンシャル・プランナー