元通産省官僚・株式会社二十一世紀新社会システム研究所代表である、本田幸雄氏の著書『劇症型地球温暖化の危機 太陽光エネルギー革命で日本を再生する』より一部を抜粋・再編集し、「日本の民主政治」について見ていきます。
「政党の公約を全く重視しない国民性」が招く日本政治の恐ろしい末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

「12.5%で政権を握れる」田中角栄が豪語したワケ

中選挙区制時代、田中角栄・元首相は日本では12.5%で実質、政権が握れると豪語していました。

 

当時、自民党は派閥全盛の時代で8個師団の派閥がありました。角さんの理論では、総選挙で2分の1をとれば、自民党政権になれる、その2分の1をとれば、主流派になれる。その主流派の2分の1を握れば、つまり、12.5%を握れば、日本の政治権力を握れると言っていました(彼は政治的勘で本音を言い、それを実行していました。良くも悪くも)。

 

しかし、この時代は結果よしでした。自民党内閣が失敗すると自民党の反主流派が必ず、それを理由に主流派を倒し、政権交代となり、それなりに政治は是正され、結果、オーライでした。

 

また、バブルがはじけるまで日本は欧米の後追いでしたから、中央官庁の官僚が立てる政策も欧米の追いつけ追い越せ政策で一致していましたから、ブレがありませんでした。

 

結果を見ると日本は効率よく高度経済成長を遂げたのです。

 

問題はバブルがはじけてからでした。ちょうど、平成年間に入り、日本は少子高齢化が本格化してきてからです。

 

その時、小選挙区制になって自民党は一選挙区一人の公認となり、小泉、安倍と続きましたが、俄然、自民党は総裁(江戸時代の将軍になったのです)の力が強くなりました。

 

すべての衆参議員(全国300藩の世襲の大名と同じ)は総裁に頭が上がらなくなり、モノも言えなくなりました。総裁選挙に参加する自民党員は113万人(年会費4000円)で日本国の1%にもなりません。同じ一党支配の中国では、人口14億人、共産党員が9000万人で国民の6%です。

 

日本では1%にもならない国民で実質、総理(将軍)を決めていることになります。政党政治、民主政治が形骸化していると言わざるを得ません。

 

安倍首相は2014年に内閣府人事局を作り、中央官庁の主要幹部の人事を一手に握り、官僚組織も総理とその取り巻き連に対して忖度させるようにしました(戦後、長い自民党政権時代にも、時々、時の政権に職を賭して抗議する官僚がいましたが、安倍政権によって完全に忖度官僚にされてしまいました)。

 

日本型権威主義政治(平成幕藩体制)の誕生です。首相公選制などの改革をしないと日本の民主政治は本当に形骸化されてしまいます。

 

しかし、平成30年間、選挙区議員定数削減一つできない現政治に、そのような政治改革ができるはずはありません(政権政党に政治制度改正をゆだねること自体が間違っています)。これも先送りです。

 

 

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本田 幸雄

1942年、島根県生まれ。東京大学工学部機械工学科卒業。通産省入省、重工業局、資源エネルギー庁、工業技術院、(文部省出向)長岡技術科学大学教授、通産省機械情報産業局、中国通産局長。

 

通産省退職後、医療福祉研究所、(財)愛知国際博覧会協会などを経て、現在、(株)二十一世紀新社会システム研究所代表。

 

著書に『21世紀の社会システム』、『水田ハ地球ヲ救ウ』、『ベンチャービジネス成功への決定的条件』、『西暦2000年への選択』(監訳)、『地球白書』(監訳)、『21世紀地球システムの創造』(共著)など。