中高年のフードデリバリー…どれだけ稼ぐことができるのか?
フードデリバリーを行う飲食店は、特にコロナ禍の急増。街中で見かけない日はないというほど、当たり前の存在になりました。主に個人事業主として事業者と契約するパターンが多く、自転車などがあればすぐに始められる点や、就業時間や場所の指定を受けないといった自由度が魅力。そのため職に困った中高年の受け皿にもなりました。
厚生労働省の職業情報提供サイト『jobtag』によると、フードデリバリー(料理配達人)の平均年齢は44.7歳で、平均労働時間は月166時間、平均年収は380.1万円。またハローワーク有効求人倍率は全国で0.84と売り手市場。求人賃金は月22万円です。
たとえば44歳の大卒サラリーマンの場合、月収は44万2,100円、手取りにすると32万円、推定年収は676万円ほど(厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より)。フードデリバリーでは月々の手取りは10万円ほど少なく、年収では半分弱といった水準です。とはいえ、しがらみのない自由なスタイルで、生きていくには困らない程度の給与を得られるというのは意外な話。「羨ましい!」と思う人も多いのではないでしょうか。実際、当事者の満足度も非常に高いようです。
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会『フリーランス白書2022』によると、個人事業主の配達員の1週間の平均稼働時間は、「20~40時間未満」「40~60時間未満」が共に21.7%。平均報酬額は最多が「5万~10万円未満」で30.2%でした。
フードデリバリー業務自体への満足度は、「満足(「非常に満足」「満足」の合計、全雇用形態合計))」が62.5%と過半数を大きく超え、継続意向(「ずっと続けたい」20.8%、「しばらくは続けたい」61.1%の合計)は81.9%。副業としてフードデリバリーをしている人も含むので、数値をあげている可能性はありますが、自由度が高いなどのメリットを最大限に享受している結果だと考えられます。
ただ6割が「しばらくは続けたい」、逆をいうと、フードデリバリーを一時的な職と捉えている傾向にあることも事実です。収入は自分次第とはいうものの、就業する時間や地域、天候などによって稼働が少なくなり、思うように稼ぐことができないケースも。配達中の事故などに対しても制度整備は追いついておらず、いまは自己責任というにも大きな問題になっています。このような状況下、特に体力的にも厳しい中高年の配達員にとって、長く続けるにはハードルが高い職業といえるでしょう。
欧米ではフードデリバリーといったギグワーカーに対し、労働者と同等の権利を与え保護するよう、改革が進められています。そのような流れが日本にも及べば、フードデリバリーは、単なる一時しのぎでの仕事ではなく、一生涯の仕事として定着するかもしれません。