青沼爽壱氏の著書『世界の現状と互立主義―貧困と戦禍のない社会』より一部を抜粋・再編集し、「世界の貧困と絶望感」の現実を見ていきます。
「いくら働いても生活が苦しく…」資本主義が生んだ貧困とテロリズム (※写真はイメージです/PIXTA)

まだ記憶に新しい「IS」によるテロの数々

さらに過激派組織イスラム国は、同年1月24日に湯川遥菜さんを、2月1日には後藤健二さんを殺し、同10日アメリカ人としては4人目のケーラ・ミュラーさんをも殺害した場面などの映像を公開放映した。

 

このニュースは世界中に衝撃を与え、6月の主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)では、「イスラム国を壊滅させる」との声明を発表。

 

しかし、その道筋もまだ見えないうちに、難民などに紛れ込んだテロリストたちが11月13日パリ中心部の劇場・飲食店や郊外の競技場等を同時に襲い、銃を乱射し爆発を起こして観客など128名を殺し約250名の負傷者を出したので、16日のG20首脳会議では「テロとの戦い」が全ての国にとって主要な優先課題であることを確認し、各国の連携と決意を表明したのである。

 

それにもかかわらず、2016年1月にはインドネシアでテロにより民間人が殺され、3月にはベルギーの首都ブリュッセルの地下鉄駅と郊外の空港で自爆テロが相次ぐ。この事件で32人が死亡し340人が負傷したけれど、逮捕された容疑者には、昨年パリのテロ実行犯として指名手配されたメンバーも含まれていたという。

 

同年7月フランス南部のニースで、12月にはドイツのベルリンで、それぞれにトラックの突っ込みによる死亡者を出したけれど、この件についてはブリュッセルのときと同じ過激派組織「イスラム国」が犯行の声明を出し合っている。

 

2017年1月にはトルコ・イスタンブールで銃乱射事件があり100名以上も殺害され、イラクの首都バグダッドでは前年末から今春にかけて、自爆テロなど連日のようにあって多数の死亡・負傷者を出し、3月から6月までは英国で国会議事堂・コンサート会場およびロンドン橋でテロリストたちによる惨劇が行われ、10月には米ラスベガスの乱射で58名が殺害された。

 

さらに、2018年2月には米フロリダ州の高校生17名が射殺され、5月パリのオペラ座近くで5名の死傷者を出し、10月米ペンシルベニアの教会堂で11名が銃撃されて死亡、11月にはロサンゼルス郊外でも12名が殺され、2019年3月にもニュージーランドの礼拝堂で執拗な銃乱射事件が起こり49名を死亡させている。

 

そして、それらの間にも2011年3月に起きた反政府デモが発端のシリア紛争はロシアやイランが政府側を、欧米諸国やトルコ、アラブ諸国は反対派を支援し、世界中で間接的な戦争を続行していて、7年目には死者が40万人、難民は500万人を超えており、アフリカ各地においても内戦とテロが頻繁に発生しているのである。