富の偏倚
「世界経済にとって最大脅威としての所得格差」を取り上げる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)は、毎年1月に開催される。それに合わせて貧困問題に取り組む非政府組織オックスファムが2020年に出した報告書に「世界の富豪上位8人の資産は、世界の全人口の半分に当たる下位層約36億人の総資産に匹敵する(注1)」と発表している。
また、世界に10億ドル(約1100億円)以上の資産を持つ大富豪は、2010年に1011人であったのが、2018年には2208人と倍増している。
そのトップ級のジェフ・ペゾスは下記のとおりわずか2年間で約5兆8千4百億円もの資産を増やしているが、その反面で私たち中流者は貧困者へ、貧困者は超貧困になるであろうことが予想される。
なお、広瀬隆著『資本主義崩壊の首謀者たち』の中には、2007年に世界で大富豪が最も多い都市はニューヨークではなくモスクワだとアメリカの経済誌『フォーブス』が報じている。
「世界の大富豪のうち74人が住み(中略)その第一位のオレグ・デリバスカは40歳で280億ドル(約3兆円)の資産家で(中略)エリツィン元大統領の孫娘と結婚した男」とも記されている。
そして、フォーブス誌の世界長者番付によれば
2017年 1位 ビル・ゲイツ 860億ドル
2位 ウォーレン・パフェット 756億ドル
3位 ジェフ・ペゾス 726億ドル
2019年 1位 ジェフ・ペゾス 1310億ドル
2位 ビル・ゲイツ 965億ドル
3位 ウォーレン・パフェット 825億ドル
となっており、これらからも最近はごく少数の富豪に恐ろしいほどの勢いで富が偏倚していることが分かる。
理屈では、その分だけ世界の大多数の人々の収入が減少することになるから、所得格差は拡大する一方で、「世界の貧困」は改善されないし、このような状態が続いているならば人間社会は崩壊していくであろうと危惧されるのである。