青沼爽壱氏の著書『世界の現状と互立主義―貧困と戦禍のない社会』より一部を抜粋・再編集し、「世界の貧困と絶望感」の現実を見ていきます。
「いくら働いても生活が苦しく…」資本主義が生んだ貧困とテロリズム (※写真はイメージです/PIXTA)

「各国の連携と決意」を表明したところで…

また、2014年2月からクリミア半島(クリミア自治共和国)とウクライナ東部ドンパ地方で発生した騒乱は、ウクライナ政府軍と親口派武装勢力やロシア連邦政府・軍との紛争になり、ウクライナ側戦死者約2900名ロシア側戦死者5500~8000名を出している。

 

同年7月から起こったパレスチナのガザ地区の大規模戦闘は一時停戦と戦闘再開を繰り返し、イスラエル軍に破壊された全壊建物は約1万1千戸に及ぶ。5年後になっても住民は再建の資金不足に悩み、小競り合いの戦闘は絶え間なく、空爆の度に人々は逃げ惑い、恐るべき失業率に疲弊し、家族を失って絶望の日々を送っている。

 

2021年2月に起きたミャンマー抗議デモは、4月25日時点で死者が少なくても751名と見られている。これらは領土問題や宗教的軋轢あつれきもあるが、それぞれの国に政治的腐敗・独善や経済的差別があり、大勢の貧困者を出していることにも原因がある(注4)。

 

それ故に、「テロとの戦いが優先課題」と確認したり「各国の連携と決意」を表明しているだけではなく、まず「世界の貧困」を解決していくべきであろう。

 

 

(注1)国際労働機関(ILO)は、コロナ流行の影響で2020年世界全体の労働時間が前年比8.8%減少したとの試算を発表。それは、週48時間勤務の常勤労働者に換算すると2億5400万人が職を失った計算となる。しかし、それぞれの国では状況が異なっており、飢える人々が一律にいるわけではない。

 

(注2)水野和夫著『資本主義の終焉と歴史の危機』集英社新書、2014、ジョセフ・E・スティグリッツ著『世界の99%を貧困にする経済』徳間書店、2012、西川潤著『データブック貧困』岩波ブックレット、2008参照

 

(注3)堤未果著『ルポ貧困大国アメリカ』岩波新書、2008『同書Ⅱ』岩波新書、2010、広瀬隆著『資本主義崩壊の首謀者たち』集英社新書、2009参照

 

(注4)貧困社会は犯罪を多発させテロの温床ともなっている。

 

 

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青沼 爽壱

日本大学法学部勤務