「若手医師の大量離職」によるメリット・デメリット
人材紹介会社は「流動性向上」で大喜び!
この動きに関しては、外部の医療機関や医師を取扱う人材紹介会社にとって「医師確保」という観点から好機といえるでしょう。
大学病院以外の医療機関では、医師給与平均は1,200~1,500万円であり、1名を紹介すればその紹介手数料は25%(300万円)程度です。こうしてみると、大多数の若手医師の流動性向上は人材紹介会社にとって大きな収益源となります。
また、外部の医療機関についても、良質な医師確保により、診療規模の拡大、患者数の増加による増収を見込むことができます。
勤務時間の減少で「優秀な人材が育ちにくい」という弊害も
一方、働き方改革による懸念事項もあります。臨床経験が従来の働き方の医師と比較して少ないため、経験が豊富な医師育成に年余を要するという点です。
内科・外科・小児科・産婦人科などでは、専門医資格を取り、なんらかの専門分野の見識を深めて独りで任せられる医師となるには10年必要とされています。特に外科系においては、手術経験の減少のため働き方改革と医師育成の両立は難しいでしょう。
「医師の働き方改革」がもたらす日本医療の未来
そのほか、医師の世代によって労働環境の意識が異なりトラブルも多くなります。旧態依然の長時間勤務を行ってきた部長・医長レベルの医師のなかには「長時間労働は至極当然」と考えている人もいます。こうしたドクターが若い時期は「365日24時間オンコール」という、プライベートすらない診療勤務が至極普通でした。
一方、現在の若い世代は、コストパフォーマンスが良い働き方でプライベートも大切にする「ワークライフバランス」を重視している医師も多いため、組織の世代間のギャップが生じています。
上司が遅くまで残っていると、部下はよほどの事情がなければ帰ることは難しいです。このため、意識改革が浸透しない限りは、働き方の制度が変更されても長時間労働が困難となります。聖路加国際病院では、救急外来の対応時間を変更し、院長自ら残っている医師に帰宅を促すという取り組みもしています。
また、主治医制度という「担当の患者は24時間自分の責任で管理する」という風土から、チーム医療制度への変更も必要となります。看護師等のように、シフト制を実施している医療機関・診療科もありますが、役割分担を行っていき、入院患者と家族に対してチーム医療制度の認識を高める必要があるでしょう。
2024年の制度導入により、医療体制のパラダイムシフトは待ったなしです。大学病院を含め、日本の医師の待遇・医療安全が向上することを切に願います。
武井 智昭
高座渋谷つばさクリニック 院長
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